(英エコノミスト誌 2014年8月2日号)
企業は官僚主義と絶え間なく戦わなくてはならない。
かつてピーター・ドラッカーは「我々がマネジメントと呼ぶものの多くは、人が仕事をするのを難しくするものから成っている」と述べた。経営の第一人者の死後9年が経った今、同氏の見解はかつてないほど正しい。
従業員は往々にして、まず大量の煩雑な社内業務――膨れ上がるインボックス(未決箱)から、いつ終わるとも知れない会議、各項目にチェックマークを記入しなければならない目標が並ぶ長いリストなど――を処理しなければ、自分の本来の仕事に集中することができない。
製造業者は過去50年間、工場の作業を効率化して「リーン」にする戦いを繰り広げ、成功を収めてきた。今度は、あらゆる種類の企業がオフィスで同じことをしなければならない。
複雑な組織、終わらない会議、無数のメール・・・
働く人を最も消耗させる煩雑な業務の1つの形態が、組織の複雑さだ。ボストンコンサルティンググループ(BCG)は1955年から、サンプルとして抽出した欧米企業の組織の複雑さを追跡してきた(1955年はフォーチュン500社のリストが作成された年)。BCGは経営陣の階層から調整機関の数、企業目標の数などを含むよう、複雑性を幅広く定義している。
同社によると、全体的に見ると、企業の組織は1955年当時より6倍複雑になった。その間、「パフォーマンスの必達目標」が爆発的に増えた。1955年には、こうした目標の数は一般的に4~7つだった。ところが今、企業は環境に優しくなり、ダイバーシティー(多様性)を尊重し、サプライヤーに適切な態度を取ろうと必死になっていることから、その数が25~40に増えている。
2つ目の煩雑な業務の形態は会議だ。別のコンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーは大企業のサンプルを対象に調査を行い、管理職が就業時間の15%を会議に充てており、2008年以降はその割合が年々増えていることを突き止めた。
こうした会議の多くは、明確な目的がない。階級が上がるほど状況はひどくなる。上級幹部は1週間のうち丸2日間を、3人もしくはそれ以上の同僚との会議に費やす。こうした会議の22%では、出席者は会議中に、30分に3本以上のメールを送信していたという。
そうしたメールが、煩雑な業務の3つ目の形態だ。ベインは管理職が社外から受け取る連絡件数は1970年の年間1000件から急増して、今日はおよそ3万件に上ると推定する。そしてメッセージはすべて、送り主と受け手の双方にいわば「時間税」を課す。しかも、その負担はしっかり管理しない限り、手に負えなくなる恐れがあるという。
煩雑な作業の中には、避けられないものもある。企業の意義は、個人で達成できないことを集団で成し遂げるところにある。だから、調整のためにいくつかの会議やメモは必要となる。複雑性が成功の代償であることも多い。大企業へと成長を遂げ、多くの市場で事業を展開する企業は、本国で事業を営む比較的小さな企業に比べ、複雑な問題に直面する機会がずっと多い。