森田実の言わねばならぬ 2014.8.5(その2)

平和・自立・調和の日本をつくるために【871】

《今日の論点(2)》「慰安婦問題」の世界中への拡大は大変に憂慮すべき事態になりました/安倍首相の歴史修正主義の暴走は裏目に出て、日本人のイメージを傷つけ、日本を窮地に陥れています/安倍首相らは、過去の過ちに対する反省を取り消そうとしたために、より大きな穴を掘ってしまいました/安倍首相はひどい過ちを犯していることを早く気づくべきです

「他人を落とそうとして穴を掘る者は自分がそこに落ちる」(ドイツの諺)

 安倍首相らは、取り返しのつかない過ちを犯しています。
 昨夜、友人のKさんからの電話がありました。話は次のようなやりとりでした。
《『グアムと日本人 戦争を埋立てた楽園』という岩波新書を読みました。著者の山口誠さんは関西大学社会学部準教授です。「知っていますか?(「いや知りません」)この本のなかに戦時中、日本軍が朝鮮半島出身者を強制連行してきた歴史が記されています。この本の中でグアム大学の元教授ロバート・ロジャースさんの著書『運命の上陸』(1999年)を引用して、「日本人は軍隊とともに42人の娼婦を連れてきた。彼女たちのほとんどは朝鮮半島出身の『慰安婦』であり、さらに五つの慰安所のために住民から15人」の現地女性を「雇った」と記されています。》
 Kさんの話は続きます。
《グアム島は一時、日本が支配していたとき、日本はこの島を「大宮島」と呼びました。この大宮島における強制売春の罪で、 1945(昭和20)年に死刑判決を受けた日本人がいます。朝鮮半島から大勢の人が強制連行され「大宮島」の道路建設や軍事施設の建設に使役されたのです。この強制連行された朝鮮半島出身者の中に慰安婦にされた女性がいたのです。》
《安倍内閣は、河野談話を事実上見直しましたが、しかし韓国側は引き下がりません。それどころか、激しく反発しています。徹底的に調査を始めました。グアム島の裁判記録も調査することになるようです。韓国側は、全力で日本軍の慰安婦強制連行の事実を掘り起こして、全世界に公表しようとしています。これによって日本のイメージは傷つきます。河野談話を事実上否定した安倍内閣の歴史見直しは、全世界がから軽蔑されるような結果になるかもしれません。安倍首相らは大失敗しましたね。恥の上塗りをしてしまいました。》
 8月4日朝、Kさんの使いの方が山口誠著『グアムと日本人 戦争を埋立てた楽園』(岩波新書)を届けてくれました。これを読み終えたとき、ちょうど韓国の『聯合ニュース」の[「慰安婦白書」来年末に発行へ=韓国女性]と題するニュースを見ました。こう書いてあります。
《【ソウル聯合ニュース】韓国女性家族部は3日、旧日本軍による慰安婦問題の被害の実態を国内外に知ってもらうため、「慰安婦白書」を来年末に発刊する予定であると発表した。国民大日本学研究所、成均館大東アジア歴史研究所とともに作成する。
 同部は慰安婦問題解決に向けた基礎資料として活用するため発刊すると説明している。韓国政府は、旧日本軍の関与と強制性を認めた河野洋平官房長官談話の検証結果を日本政府が公表したことに強く反発しており、対応策の一環とみられる。
 白書では1992年の「挺身隊問題実務対策班」による報告書の発表以降に新たに見つかった資料や研究成果、国際機関や市民団体、各国議会の活動を基に、被害の実態を総合的に整理、分析する。来年末に報告書としての発刊を目指す。
 同部は韓日関係や外交、国際法の専門家ら10人による執筆陣と、同部次官を団長とする外交部、東北アジア歴史財団などの関係者19人による諮問団を構成する。
 白書は日本語、英語、中国語など外国語版も作成し、国際社会に広く知ってもらう計画。
 金姫廷(キム・ヒジョン)女性家族部長官は「白書は慰安婦問題の積極的な対応と解決策を模索するための基礎資料となる。同問題の真実と実態を国際社会に広めていく」と強調した。》
 「無理が通れば道理引っ込む」です。安倍首相らの「河野談話を見直し」は大きな間違いです。謝罪しなければならないときに、反対に開き直って「非」を相手に転嫁するようなことはしてはならないのです。人道に反する罪を犯したことについては、真面目に謝罪する以外に道はないのです。いま問われているのは日本人の誠実さ、真面目さなのです。安倍首相、菅内閣官房長官の心得違いの結果、日本人の誠実さ、真面目さが疑われ始めているのです。この罪浅からず、です。
 安倍首相が暴走を続ければ、日本は取り返しがつかないほどのイメージダウンを受けることになるでしょう。安倍首相や菅内閣官房長官は、こんなひどいことをした責任をどうとるのでしょうか。