北海道電力が申請した電気料金再値上げを審査する経済産業省の委員会が始まった。家庭向け料金で平均17・03%という大幅な値上げ申請だ。国の許可が要らない企業向けは22・61%を予定している。

 北海道電力は昨年9月にも値上げしている。その時点では、今年6月までに泊原発3基全部が動くと見込んでいた。しかし再稼働は実現せず、火力発電の燃料費が膨らんだ。

 福島第一原発の事故後、料金を値上げしたのは、東京電力など7社。各社とも頼みの綱である原発再稼働が見通しにくく、「来年以降に再値上げの動きが広がる」と指摘されている。

 原発依存度を下げていく過程で膨らむコストは、私たちも受け入れる必要があるだろう。しかし、値上げは、家計や企業活動を直撃する。とりわけ、低所得世帯や中小零細企業に与える打撃が心配だ。

 今回の値上げは、燃料費の増加が理由だ。現行の料金を決める仕組み(総括原価方式)上は、料金への転嫁が認められている。

 それでも、利用者の負担を少しでも軽くするよう努めることが値上げの大前提である。

 たとえば、燃料の購入価格を引き下げるよう交渉で努力しているか、発電効率をあげる取り組みを進めているのか、など厳しく見る必要がある。

 前回の値上げの際に約束した関連会社の整理や資材調達の改革などが積み上げられているかなども、しっかり点検してもらいたい。

 北海道電力は原発が動けば値下げするという。しかし、事故を経て、原発は「安くて安定的な電源」とは見なされず、「安全や後始末にお金がかかる電源」へと変質して、再稼働は困難な状況が続いている。原発頼みでは、結局、値上げを繰り返すことにならないか。

 すでに、電力改革が決まり、16年をめどに利用者が電力会社や電源を自由に選べるようになる。総括原価方式も廃止される。電力各社は、競争にさらされるようになる。

 原発が動かないことを前提に、安くて良質な電気を供給するにはどうすれば良いのか、経営の発想を切り替えてほしい。

 企業努力と並行して政府も、脱原発依存に向けた政策をそろえ、効率的な電力の供給態勢の整備に向けて役割を果たすべきだろう。

 多様な電源や料金メニューが用意され、利用者が自由に選べるエネルギー社会の構築こそが日本の急務である。