別府温泉:被爆者療養施設の足跡残そう 記録集編さんへ

毎日新聞 2014年08月07日 14時30分

 だが、多い年で2万人を超えた利用者は被爆者の高齢化に伴って年々減少。広島からの船も廃止され、閉鎖の数年前からは1万人を下回るようになった。宿泊料も安く抑え、新聞広告で利用を呼びかけたりもしたが、惜しまれつつ3年前に閉鎖した。埴谷さんは「役目を終えたとは思っていないが、取り巻く環境からやむを得なかった」と言う。

 編さんを始めた記録集には原爆の基礎知識からセンターの設立経緯、利用者たちとの交流まで盛り込むことにしている。「被爆者に寄り添う支援とは何か。そのヒントを次世代に伝えたい」と話している。【平川哲也】

 被爆者向け温泉療養施設 別府の原爆センターを皮切りに、広島、島根、山口、長崎の各県に計5カ所が開設された。診療所を併設するなどして長期の湯治にも利用されたが、建物の老朽化や利用者の減少などが原因で、昨年末までに山口市のゆだ苑(温泉療養施設のみ閉鎖)と島根県江津市の有福温泉荘も閉鎖。現在は一般も利用できる神田山荘(広島市東区)と新大和荘(長崎県雲仙市)を残すのみとなっている。

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