【リニア新幹線】誘致に焦る京都 市長汗かき、意見広告 橋下大阪市長「早く諦めて」

2014/08/07 16:00


 新たな国土の大動脈として期待されるリニア中央新幹線の名古屋―大阪間のルートをめぐり、京都駅経由への変更を求める京都が焦りを募らせている。奈良は「国は奈良ルートに決定済み」と余裕の構え。東京・品川―大阪間の同時開業を求める大阪と関西経済界も変更すると時間がかかるとして奈良支持を鮮明にしている。京都は巻き返しに必死だが、妙案はなく孤立感が深まる一方だ。

 
 ▽うちわ配り

 「リニアを、京都へ」。祇園祭の山鉾が並び立った宵山の7月16日。京都市中心部の路上で、トレードマークの着物姿の門川大作市長が、行き交う市民や観光客に京都誘致のPRうちわを笑顔で配る。うだるような暑さの中、額に玉のような汗が流れ、眼鏡は白く曇った。

リニア中央新幹線の京都誘致をPRするうちわを配る、門川大作京都市長=7月16日、京都市

 京都市は1月、国会議員や経済団体と決起会を開催。3月には京都駅ルートを採用した場合の経済波及効果が年間810億円とする試算を発表、奈良市付近を通るルートの約2倍とうたった。7月には週刊誌に異例の意見広告も出した。

 しかし状況は変わらない。JR東海の柘植康英社長は7月の記者会見で「当初から奈良市付近と決まっている」と重ねて表明。奈良県の荒井正吾知事は「奈良市付近と言ってくれる人が圧倒的だ」と余裕の表情だ。

 ▽地盤沈下

 京都市が誘致に躍起なのは、観光や経済での地盤沈下を恐れるからだ。

 京都市を昨年訪れた観光客数は、調査が始まった1958年以降、最高の5162万人を記録。世界で最も影響力があるとされる米の旅行雑誌「トラベル+レジャー」が発表した2014年人気観光都市ランキングで京都は1位を獲得した。

 しかし、京都を通らず開業した場合、東京・名古屋・大阪の三大都市圏の人々はリニアに流れ、京都駅に停車する新幹線の本数は大幅に減少するとみられている。

 京都市幹部は「のぞみの本数がゼロになるという話もある。観光客やビジネスマンの足は遠のき、京都経済にかなりのダメージを与えるだろう」とため息をついた。

 ▽「早く諦めて」

 京都市の懸念を尻目に、関西経済界は奈良支持で結束しつつある。関西経済界にとって最重要なのは東京―大阪全線同時開業。今秋にもリニア着工が迫る中、ルート問題に時間を費やす余裕はないからだ。

 7月18日、大阪市内のホテルで設立された同時開業推進協議会。大阪府の松井一郎知事や関西経済連合会の森詳介会長らが出席、会場は熱気に包まれたが、京都市への招待はなかった。

 会の終了後、橋下徹大阪市長は門川市長の名を挙げ、迷いなく言い切った。「申し訳ないが、早く諦めてもらいたい」

(共同通信)

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