「自分が埋もれてしまうから、アイドルになった」 元AKB48の仲谷明香は“アイドル声優”をどう見ている?
おたぽる 8月6日(水)22時0分配信
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| (写真/幸田昌之) |
今、声優業界に「アイドル声優」が増える一方で、「アイドル出身」の声優も増えている。2012年『ちとせげっちゅ!!』で桜庭ちとせを演じ、現在放送中の『ハピネスチャージプリキュア!』のオープニングテーマ「ハピネスチャージプリキュア!WOW!」を歌う仲谷明香もそのひとり。AKB48を卒業して、声優に転身してから1年。最近では、今秋から配信されるスマートフォンゲーム『アイドル事変』のキャストに決まったりと、声優としてのキャリアを着実に積んでいる。そんな彼女に、アイドル出身の声優として見た、“現在の声優業界”について語ってもらった。
■オーディションに落ちた作品は観ない!?
――アミュレートに所属して1年がたちましたが、声優になったと実感することや、成長したと思えることはありますか?
仲谷明香(以下、仲谷) 単純ですが、実感としては、オーディションを受ける回数が増えたなーと思いました。ちょこちょこ、ゲームなどの声をやらせていただける機会も増えたので、以前よりも声優の仕事をしているのかなと思います。声優として成長できているかわかりませんが、舞台などもやらせていただいているので、経験値は増えていると思います。
――レッスンを指導してくれる先生は、声優としての仲谷さんをどう評価していますか?
仲谷 先生は褒めるタイプではなく、できないところを指摘してくれるタイプなので、成長していたとしても、あまり褒められることはないんですよね。いつも指摘されるのは、キャラクターのイメージを固めちゃって、声があまり出せないことです。イメージすることは大切だけど、もうちょっと柔軟に対応できるようにした方がいいと、レッスンを受けるたびに言われています。最近は洋画の吹き替えもレッスンでやるのですが、見た目がセクシーな女性や大人っぽい先生の役だと、声を落ち着かせてしまうことを指摘されました。
――最近は、スマートフォンゲームの『アイドル事変』のキャストに決まったりしていますが、今は声優としてどんな活動をしているんですか?
仲谷 『アイドル事変』は、オーディションではなく、当て役という感じで、役を割り当てていただきました。忙しい声優の方は、週に1回のアニメ収録がいくつもあるのだと思いますが、ゲームは1回収録したら終わりで、追加があればそのつど収録するという感じだから、私はわりとのんびり活動しているかと思います。あと、アニメのオーディションは、放送が始まる半年くらい前にあるのですが、落ちちゃった作品が、忘れたころに放送されているということがよくあります(笑)。
――オーディションで落ちてしまった作品をテレビで観た時は、どんな心境になりますか?
仲谷 本当に大好きな作品だったり、オーディションを受けたキャラクターを忘れていたりすると観ますが、絶対やりたかった作品だと観ないことが多いですね。やっぱり役に合った人が選ばれているので、「私じゃない」と思うのも悔しいですし。
■自分が埋もれてしまうから、アイドルになった
――近年の声優業界には、「アイドル声優」と呼ばれる声優が増えてきましたが、元アイドルとして、声優がアイドル化することをどう思っていますか?
仲谷 アニオタや声優オタからしてみると、楽しいですよね。作品を盛り上げようとして、声優さんたちがオープニングやエンディングを歌って、そのままユニットになったりするのは面白いので、私は好きです。よく「俳優が声優をやってほしくない」という人たちもいますが、アイドル声優に関しては、今はもう“アイドル声優”というジャンルが確立されているから、ありなのかなと思います。
――アイドル声優がいる一方で、仲谷さんや、また元SKE48の秦佐和子さんのように声優になりたいと思う(元)アイドルも多いですよね。
仲谷 もともとアニメなどが好きで、声優にも興味を持っているという子がアイドルには多いのかな。私はもともと声優になりたくて、その段階のひとつとして「アイドルをやっとけ!」って思ったんです。人よりも秀でたものが見つからなかったので(笑)。私がアイドルになろうと思った時には、すでにアイドル声優さんが出てきていたので、もともと歌も好きだったし、歌をやりつつ、演技などもやっていけたらいいなと。実際にそうなりましたけど(笑)。アイドルの中には、もともと声優になりたくて、私と同じ道を歩む子も多いのかなと思います。
――アイドルの道に進む前に、声優の学校に行くという選択肢は、仲谷さんの中にはなかったのでしょうか?
仲谷 私の場合、声優学校は学費が高かったのであきらめてしまい、最後の手段としてAKB48のオーディションを受けたというのもありますが、進学しなかった一番の理由は、自分が埋もれちゃうと思ったんですよ。学校に行けば本当に基礎から学べるので、確かにうまくなるし、経験としてもいいと思うんです。……っていうか、(今の)私もそうしたいくらいなんですけど(笑)。でも、なんか自分が“なくなっちゃう”気がして。学校に通っている人はみんな、元気よく「おはようございますっ!」ってあいさつしているみたいな、かっちりとした感じがあったんですよ(笑)。
――テンプレート通りになるのが嫌だったんですね。
仲谷 うまくなりたいという気持ちはあったけど、みんなと同じになっちゃう気がしたんですよね。それに、声優志望者は多いから、何かほかのこともやらなきゃって思って、それが歌とダンスだったんです。だからアイドルになりました。
■アイドル声優はあっていいと思うし、むしろ憧れの存在
――昔の声優は、声を吹き込むだけの裏方のイメージで、表に出ることはほとんどありませんでしたが、最近の声優はアニメのキャラクターソングはもちろん、自身の名義でCDをリリースしたりと、よく歌を歌いますよね。私は声優の昔のイメージが強く残っているので、今の声優の形に違和感を覚えることもあるのですが、仲谷さんくらいの世代の声優ファンは受け入れてしまうものなのでしょうか。
仲谷 私はそんなに嫌な感じはしないです。いいなという憧れもあると思います。でも、ほかの畑にも入っていくのはよくないというのもわかります。やっぱり、演技だけで比べると、演技に専念している方の演技は、聴いていても苦にならないので。私は、時代は変わっていくものだと思うし、それ(今の声優の形)はそれでいいんじゃないかと思いますよ。
――では、アイドル声優が増えると、アイドル業界で生きるアイドルたちの危機になってきたりするんですかね?
仲谷 (「アイドル声優」と「アイドル」の)ファン層はだいぶ違っている気がします。かぶっているけど、ちょっと違うみたいな。受け入れられない人もいるし、(どっちも)かじっている人もいるし。そういう感じで、持ちつ持たれつ、このままの状態が続いていくのかなって思います(笑)。
――仲谷さんが考える、 「アイドル声優」と「アイドル」の違いとは何でしょうか。
仲谷 昔は、単純に見た目がかわいいのがアイドルという見方もありましたが、今は声優さんもかわいい人たちが増えているから、“演技ができるできない”じゃないですか?(笑) アイドル声優さんは演技も歌もダンスもできて、アイドルはキラキラとして歌って踊っている感じかな。アイドルをやりたければ、キラキラオーラを出す方がいいし、声優をやりたいなら演技もできた方がいいし……って、難しいですね(笑)。
――それでは、アイドルを経た仲谷さんは、ほかの声優にはない強みがあるのでしょうか?
仲谷 人前に立つ時は、臨機応変に対応できると思います。でも、今の若い子たちも積極的だから、負けないように頑張らないとって思うんですけど(笑)。あと、しゃべるだけなら大丈夫なんですが、歌を歌うイベントはすごく緊張します。自分の「ハピネスチャージプリキュア!WOW!」だけなら、歌もダンスも覚えて不安要素はないんですが(笑)。ほかの人が歌っていた歌を歌うとなると、やっぱり自分の歌じゃないので、うまく歌わなきゃと意識して、すごく緊張するんです。
――アフレコの時は緊張しますか?
仲谷 現場によりますね。本当に全員がはじめましての状態だと、すごく縮こまっちゃって、「この声で大丈夫かな〜」っていう思いが最初のうちはあります。だけど、だんだん慣れてくると、声優さんは楽しい方が多いので、仲良くできるんですけど……。私が人見知りだから、緊張しちゃうんだと思います。
――これまでにアフレコをして、うれしかったことはありますか?
仲谷 印象に残っているのは、初めてレギュラーとして毎週出演させてもらえるようになったアニメ『もしドラ』(もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら)です。有名な声優の方々と共演できてうれしかったのというのもありますが、『もしドラ』は特に母が喜んでくれたので。母は、舞台などは「緊張するから観に行かない」というタイプなのですが、『もしドラ』は唯一「あら〜、どの役かしら」って観てくれました(笑)。(母が)アニメを観てくれていた姿を見て、出演できてよかったと思いました。
――人気声優の方々と共演する時はどのような心境になったりするのでしょうか。また、今後共演してみたい声優はいますか?
仲谷 私はそこまでミーハーな方ではないので、(有名な方に会っても)「あ、聴いたことあるな」「雑誌で観たことあるな。ふむふむ……」みたいな感じですね(笑)。今後共演できたらいいなと思うのは、神谷浩史さんです。(神谷浩史が声を務める)『夏目友人帳』の夏目貴志くんが好きなので。でも、会っても多分「あー、神谷さんだー」ってかみしめるだけで、「わ〜! 好きなんです〜!」とはならないと思います(笑)。
■今の声優は“見た目”も大事?
――アイドル声優が増えて、今の声優は“容姿”も重視される要素になりつつありますが、実際に現場に集まる声優のビジュアルをどう見ていますか?
仲谷 私は人のいいところ探しというか、この人は「ここがいいからきっと売れている」と意味付けをするのが好きなので、人をかわいくないと思うことがあまりないんですよね。でも実際、オーディションに受かってから現場に行くことがありますが、スタジオにいる声優はみんなかわいいです。
――仲谷さんは、今の声優にとって“見た目”は大事な要素のひとつだと思いますか?
仲谷 それは思いますね。だから、この流れが終わらないかなと思うんですけど(笑)。
――元アイドルとして、仲谷さんは有利だと思いますが(笑)。声優になった今でも、容姿を磨くことは常に心がけているのでしょうか?
仲谷 もともとケアをあまりしていないんですよ。よく食べるから、すぐに丸くなるし(笑)。気を使っていない方ですが、何もしないということはないので、必要最低限のことはしています。今は、(容姿が)大事な部分なのかな。早く、この風潮が廃れてほしいですね(笑)。
■“アンチAKB”の批判が心配だったけど…
――元AKB48の仲谷さんがこの業界に入って、声優の方々からアイドル出身であることについて何か言われたりするのでしょうか?
仲谷 ないですね。まだ場数を踏んでいないというのもあるかもしれませんが、今まで私が録らせていただいた現場の方々はみんな優しくて、先輩から「どうして声優になろうとしたの? アイドルの方が給料とかもよかったと思うし」って、すごく現実的な話もされたりしました(笑)。でも、もともと声優をやりたかったことを話したら、一緒に頑張っていこうねっていう話になる方が何人もいらっしゃいました。だから、「こいつ〜」みたいな空気は感じなかったです。でも、今後はそういうこともあるかと思いますが、そういうのを感じても、頑張っていかなきゃって思えたらいいなと思います。
――AKB48に対する世間の反応は厳しかったりしますが、『ハピネスチャージプリキュア!』の主題歌を歌うことが決まった時、“大きなお友だち”の反応はどうでしたか?
仲谷 批判は、Twitterに1〜2つ来たくらいです。本当に少なくて、「あ、優しいんだな」って思いました。ニュースのまとめサイトなどを見ても、「ちゃんと歌えて踊れればいいんじゃない?」みたいな意見が意外と多かったので、これは頑張らなきゃって思いましたね。
――やはり、最初は批判を受けるのではないかと不安を感じていたりしましたか?
仲谷 そうですね。なぜか風当たりが強いので(笑)。でも、どの世界もそうだと思いますが、「ちゃんとやるんだったらいいよ」っていう感じなんですよ。『もしドラ』に出た時も、まとめサイトを見たら、「あれ? どれがAKBなのかわからない」みたいな感じで言われていたので、「大丈夫じゃん、意外と平気じゃん」って思うことが多かったです。
――今の仲谷さんのファンは、AKB48時代を知らない人も多いですか?
仲谷 ブログを見ると、「この前のプリキュアのイベントで知りました」とか、「プリキュアの主題歌で存在を知りました。これから応援します」とかいう方々もいるので、たぶんそうだと思います。小さい子は、声優さんというのを理解していなかったりするので、“プリキュアのおねえちゃん”という感じで、「お歌、いつも歌っているよ」って言ってくれたりしています。“プリキュアのおねえちゃん”として応援してもらっているのかな。
――では、声優業界における自分の立ち位置は、どの辺りだと思いますか?
仲谷 そうですね、どのポジションかというと“元アイドル”ポジションですかね(笑)。だから、そこから進化できたらいいなと思います。
――仲谷さんは、「声優」と「アイドル声優」、どちらのポジションに立ちたいと考えていますか?
仲谷 歌は歌いたいんですよ、ダンスも踊りたいんですよ。でも、アイドル声優みたいに、あんなにキャピキャピできない気がして……(笑)。
――元アイドルなのに(笑)。けど、アイドル声優さんはテンションが高いイメージがありますよね。
仲谷 そう、ついていけなくて(笑)。今、若い人たちがすごく増えているので、「すごいなー、若さなのかなー」って思いながら見ています。それに、今までさんざんアイドルをやってきたから、もういいかなっていう思いが、どこかにありますね(笑)。キラキラしなきゃっていう部分と、もういいかなっていう部分が、戦っている感じがします(笑)。
(取材・文/桜井飛鳥)
■仲谷明香 公式ブログ
http://blog.excite.co.jp/nakaya1015/
■仲谷明香 公式Twitter
https://twitter.com/nkysyk_a
■『アイドル事変』公式サイト
http://5pb.jp/games/idol_jihen/
最終更新:8月6日(水)22時0分
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