ここから本文です

【MLB】運命の日を乗り切った田中将大 早期復帰か入念な治療かで揺れるヤンキースのジレンマ

Full-Count 8月5日(火)16時39分配信

痛みなく練習を終えた田中は、当面手術を回避できる状況に

 ヤンキースの田中将大投手(25)が4日(日本時間5日)、右肘靭帯の部分断裂と診断されて以来、初となるキャッチボールを行った。先月8日のインディアンス戦後に右肘の痛みを訴えてから約1か月。ジョー・ジラルディ監督が見守る中、約20メートルの距離で25球、ウオーミングアップを含めると約50球、右肘の状態を確かめながらボールを投げた。

「一つステップアップができたということで、ホッとしている。これからどんどん投げる距離、投げる強度というのも上がっていくと思いますけど、まずは第一歩、今日、第一歩かなと思います」

 練習後、田中はそう口にした。

 地元メディアがヤンキースのプレーオフ進出に向けて「今季最も重要な1日」と位置づけた運命の日。現地では田中がこのまま順調に回復していくのか、それとも手術に踏み切らなければいけないのか、このキャッチボールの再開である程度、方向性が出るとされていた。

 田中は負傷後、ヤンキースのチームドクターらの診断により、腱を肘に移植するトミー・ジョン手術を行わず、保存療法を選択。7月14日にはPRP皮膚再生療法の一環で自らの血液から抽出した多血小板血漿を患部に注射した。それからちょうど3週間後のキャッチボール再開は、階段を上がる上で大きなポイントだった。

 そして田中は痛みなく練習を終えることができた。これにより当面は手術を回避できる状況となり、今季中の復帰に向けて大きな一歩を踏み出すことになった。

気になる復帰時期と治療方法の判断

 ここで気になるのが今後の復帰時期だ。デリケートな負傷だけに慎重な姿勢が求められており、キャッシュマンGMも順調にリハビリが進んでも早くて9月との見通しを示している。

 この日、田中もじっくり治療したい思いと早期に復帰したい思いの両方が混在することを語りつつ、「繰り返しても仕方ないので、しっかりと治す方を優先したい。中途半端にまた戻ってまたその試合で迷惑をかけて、またさらに離脱っていう形が一番最悪だと思う。1日も早く良くなることが一番ですけど、焦らず、しっかりと治してまたいい状態で上がれるようにはしたい」と話している。

 田中はそこまでナーバスになっていない様子で、焦りも見えない。球団側の判断に身をゆだねようという気持ちなのかもしれない。一方でヤンキースにとっても悩ましい判断となる。2年ぶりのプレーオフ進出に向けて田中の存在が不可欠なことは明白。一方で、7年総額1億5500万ドルで契約した期待の投手を酷使するわけにもいかない。

 右肘の負傷が判明した直後から、地元メディアでは早期に手術に踏み切らないことを疑問視する声も出ていた。手術を受けた場合は復帰まで1年以上を要するため、実施が遅れれば、来季も棒に振りかねないからだ。しかし、ヤンキースはあくまで保存療法で復帰できるとの見方を示してきた。

 もちろん、手術の回避は3人の医師による見解であり、手術せずとも完治する見通しがあるからこその判断なのだろう。ただ、プレーオフ進出を見据えるヤンキースにとってエースの手術をできるだけ避けたい思いもあるに違いない。トレード市場で田中離脱の穴を少しでも埋められるような先発を獲得できなかったことも、田中の復帰に期待せざるを得ない側面を強めている。だからこそ、地元メディアも田中のキャッチボール再開に注目していた。

前へ12
2ページ中1ページ目を表示

最終更新:8月5日(火)20時31分

Full-Count

 

PR

注目の情報


PR

注目の商品・サービス