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 原爆を知らない10歳の東京暮らしの男の子が6日、鎮魂の祈りに包まれた広島の平和記念式典の会場にいた。そばには被爆者の94歳の曽祖父。69年前に原爆が広島の上空約600メートルで炸裂(さくれつ)した午前8時15分、2人はそろって目を閉じた。

 男の子は小学5年生の石松樹(たつき)君。1月、塾で習った世界遺産「原爆ドーム」を見に行ったという友達の話を聞き、ひいおじいちゃんに「広島に連れてって」とせがんだ。

 もう一つ理由があった。夏になると、ひいおじいちゃんはいつも広島へ出かけていく。「ひいおじいちゃんは広島と何か関係あるんだろうな」。漠然とした疑問を解きたい、という思いもあった。

 「じゃあ、一緒に行こうか」。ひいおじいちゃんは少し驚いたあと、引き受けてくれた。

 樹君は5日、ひいおじいちゃんと2人でJR品川駅から新幹線に乗った。ひいおじいちゃんは、ひいおばあちゃん以外の人と広島に行くのは初めてという。約4時間の道のり。広島が近づくにつれて、ひいおじいちゃんの様子がちょっとずつ変わっていくような気がした。到着すると、普段のように笑わなくなった。

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 ひ孫と2人で広島の地を踏むことになるとは――。石松勝(まさる)さんは複雑な思いで車窓から見えてきた広島の街を見ていた。69年前の惨禍の爪痕は薄れつつある。一方で、深く刻まれた壮絶な記憶が消えることは一度もなかった。

 「押しつけたくない」という気持ちが子や孫、ひ孫に語ることを阻んできた。だが69年たっても、無差別に多くの市民を殺傷し、放射線で苦しめる核兵器は世界からなくならない。

 すでに94歳。広島で起きたこと、自分の身にふりかかったこと、そしてこれからの日本のこと。ひ孫に語り、託してみよう。勝さんは樹君の手をとり、JR広島駅に降り立った。