パレスチナの死者1800人超。うち、子どもが400人。負傷者1万人。イスラエル側も60人超が命を落とした。

 1カ月弱ですでにこれほどの痛ましい犠牲を出したのだ。パレスチナ自治区ガザをめぐる紛争を収束させねばならない。

 イスラエルとイスラム組織ハマスは、5日から72時間の停戦に入った。イスラエル軍の地上部隊はガザから撤退した。

 だが、この停戦はまだ一時的に過ぎない。恒常的な停戦へつなぎ、さらに長期的な安定への足がかりを築く必要がある。

 イスラエルとパレスチナの交渉団はカイロで、本格的な停戦に向けた交渉をしている。主張の隔たりは大きいが、一歩ずつ環境を整えてゆくべきだ。

 そのためにパレスチナ自治政府のアッバス議長が、もっと積極的な役割を果たせるはずだ。今後の和平交渉を進めるパレスチナ側の代表としても、指導力を発揮してもらいたい。

 近年のパレスチナは身内同士で分断されてきた。議長の率いる主流派組織ファタハと、ハマスとの対立が、和平の機運を遠のかせる一因となってきた。

 紛争が起きる前の6月、両組織は暫定の統一政府づくりにこぎつけていた。停戦で再び力を合わせ、パレスチナ全体の結集を図らなければならない。

 イスラエル側も、「ハマスが支援する政府とは交渉しない」という、かたくなな態度を改めねば何も進展しない。ハマスは170万人が暮らすガザを実効支配している。その現実を見すえ、対話の道を開くべきだ。

 パレスチナ側は、ガザを経済的に窒息させている境界の封鎖を解くよう求めている。イスラエル側は、ハマスの完全な武装解除を要求している。

 その折衷点を見いだし、紛争を繰り返さず、共存の道を探るには何が必要か。パレスチナの人びとの人権と生活基盤をどう改善し、安定的に統治するか。 そうした難題の答えを探るためには、いま仲介役を務めているエジプトや米国にとどまらず、国連や欧州連合(EU)、周辺アラブ諸国も加わった枠組みが求められる。

 内戦が続くシリアや、国家分裂の危機にあるイラクを含め、中東は流動化している。その全体情勢も視野に入れ、国際社会は包括的な中東和平に対する取り組みを強めねばならない。

 ガザでは今や人口の3分の1が避難民となった。イスラエルも国際的な非難を浴び外交的に傷ついた。当事者全員が頭を冷やすときである。これ以上の流血は決して許されない。