Financial Times

アラブの混乱のために無謀で独善的になるイスラエル

2014.08.06(水)  Financial Times

イスラエルに有利に働いている地政学的な変化

 中東以外の地域でも、地政学的な変化により反イスラエルの動きが鈍っている。ロシア、インド、そして中国の政府は、自国内のイスラム過激派の脅威を強く懸念している。中国の新疆ウイグル自治区では先週、イスラム分離主義者が起こした戦いの後、100人を超える人々が命を落とした。

 ロシアにもイスラム教徒の市民が2000万人おり、ロシア政府はチェチェンで残酷な戦いを2度行って以降、イスラム勢力の好戦性を強く恐れている。インドのナレンドラ・モディ首相はヒンズーナショナリストであり、当人が反イスラムの暴力行為を黙認したとして非難されている。

 こうした政治的な変化は、外交の表舞台には反映されていない。先日開催された国連人権理事会の特別会合で、イスラエルがガザ地区で戦争犯罪を行っている可能性を調査することが提案された際、中国、ロシア、インドの3国は賛成票を投じた(欧州連合=EU=加盟国は棄権し、米国は反対票を投じた)。

 しかし、このイスラエル非難にはお定まりのパターンが見受けられる。イスラエル政府のある高官によれば、イスラエルと中国の指導者たちによるハイレベル協議において、中国側はパレスチナ問題に「ざっと20秒間」触れただけだった。また、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は非常に仲が良い。

 ただ、イスラエルの昔からの敵が敵意を弱めつつある一方で、昔からの仲間は以前ほど友好的ではなくなりつつある。

 ネタニヤフ氏と米国のバラク・オバマ大統領との関係は冷え切っており、イスラエル高官の中には米国のジョン・ケリー国務長官をあからさまに軽蔑している人もいる。また米国で行われた世論調査を見る限り、年配の人々に比べると若い世代はイスラエルに対して同情的ではなく、その落差はかなり大きい。

 もっとも、そうした変化が米国政府の政策に浸透するにはまだ何十年もかかるかもしれない。イスラエルはワシントンで確固たる地位を築いている。連邦議会の上院は先日、ガザ攻撃を全会一致で支持しているし、オバマ政権も、イスラエルの攻撃を非難する一方で支援と武器の売却は続けている。

イスラエル政府の計算

「イスラエル軍は攻撃を中止せよ」、世界各地で反戦デモ

世界各地でイスラエルのガザ攻撃に抗議するデモが行われている(写真はロンドン)〔AFPBB News

 多くの欧州首脳はガザでのイスラエルの行動に露骨に愕然としており、人口の多い欧州のイスラム教徒は反イスラエルデモの先頭に立ってきた。だが、欧州のイスラム教徒は概して、社会に疎外された不人気な集団だ。

 フランスのマニュエル・バルス首相は反ユダヤデモを非難し、反ユダヤデモは「パレスチナの大義とジハード(聖戦)主義、イスラエルに対する嫌悪、フランスへの憎しみ」を混ぜ合わせたと述べた。このような混合はイスラエルの役に立つ。パレスチナ人への同情を減らすことになるからだ。

 イスラエルは長らく、EUの制裁の可能性について懸念…
Premium Information
楽天SocialNewsに投稿!
このエントリーをはてなブックマークに追加

バックナンバー

Comment

アクセスランキング
プライバシーマーク

当社は、2010年1月に日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)より、個人情報について適切な取り扱いがおこなわれている企業に与えられる「プライバシーマーク」を取得いたしました。

Back To Top