ブッシュ父がイラクのサッダームフセイン軍に対する連合軍の大規模な軍事攻撃を主導した1991年の湾岸戦争で、フランスの社会学者ジャン・ボードリヤールは、その著書の中で、この攻撃と、イラクに対する西側の軍事行動の別の側面について記述しています。この書籍は『湾岸戦争は起こらなかった(邦題)』というもので、アメリカ人に伝えられなかった真実に基づくレポートです。
多くの欧米人、さらにイラク人はイラク戦争について、CNNやBBCの衛星放送によって情報を得ていました。実際彼らは選別され、捻じ曲げられた報道しか受け取っていませんでした。この書籍の著者は、こうした問題を指摘しており、「メディアで戦争報道について見たり聞いたりしていることは、完全に戦場で起こっていることとは違う」としています。この書籍では、こうしたメディアの欺瞞の多くの例が挙げられており、ボードリヤールは「メディア軍は多くの場合、先んじて標的の国への軍隊の介入に向けた下地を整えている」という結論に達しています。
現在も、イラクで生じている多くの危機がメディアによって追求されている可能性があります。これらのニュースを見ていくと、おそらくこの国では、「イラクとシャームのイスラム国」というテログループのメンバーが町の通りや広場にはびこっている、という映像が目に浮かぶでしょう。しかし実際、これはメディアが作り出した映像であり、言ってしまえばイラクには「イスラム国」という統一された軍は存在せず、一部のテロリストが心理戦や大規模なプロパガンダを利用することで、恐怖を作り出そうとしているに過ぎないのです。
とはいえ、明らかにイラクは大規模な危機に巻き込まれており、それはこの国の歴史と、革命家が新たな軍を組織し、旧バース党政権の軍事勢力を掃討するのを怠ったことに端を発します。これらのテロリストは自国に忠誠を誓う以上に、サウジアラビア政府の傭兵となり、シオニスト政権イスラエルやアメリカに仕えていることが示されています。こうした中、メディアの恐怖をあおるような報道はイラク全体で目にされているものなのでしょうか?
現在、「イラクとシャームのイスラム国」としてイラク政府に反対するグループは、タクフィーリー派と旧バース党の残党勢力の間の新たな連合です。この連合を、西側やアラブのメディアが支援しており、目的ある動きによって、事実を捻じ曲げて伝えようとしています。実際メディアはイスラム国やその関連の勢力に関して誇張し、彼らを特別視し、支援しているのです。
たとえば、イスラム国やその他のテロ組織のどんな小さな行動でも、メディアの報道や心理戦によって大きな成功かのように示されます。こうして世論は影響され、彼らの間に失望感が広がるのです。それに加えて流血の非人道的な場面を見せることで、イラクの人々に対し心理的な圧力をかけようとしているのです。
シリアのジャアファリ国連大使は、西側のメディアがイスラム国をテロリストと呼ぶことを控えていることを非難し、次のように述べています。「誰がイスラム国を支援しているのか。誰がイスラム国を保護しているのか、誰がイスラム国にシリアの国境を通過させ、イラクやシリアの主権を侵害させる機会を与えているのか。問題は彼らが支持され、この支持が様々な方法で行われているということだ」
ジャアファリ大使は、このように述べています。「CNN、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ルモンド、シュピーゲル、インディペンデント、ウォールストリートジャーナルといった西側のメディアを見れば、それらすべてがこの瞬間までイスラム国をテログループと呼んでいないばかりか、スンニー派の義勇兵、あるいは革命家と呼んでいることがわかる。私はCNNやその他のチャンネルのアメリカ人リポーターがイスラム国をテログループと呼んでいるのをまったく聞いたことがない。イスラム国は国連安保理のテロ支援グループのリストに載っているのみだ。我々はここで恥知らずな偽善を目にしており、それは疑問に呈されるべきだ」
実際、イスラム国による人々の殺害に関する映像の幅広い配信は、彼らを非難するどころか、人々の間に恐怖を作り出し、イスラム国の目的の実現を促しています。一方で、イラクでのイスラム国の犯罪が宗教的なものとして提示されていることは、イスラム恐怖症を西側の世論のもとで拡大し、メディアではイスラム教徒の暴力性に関する非現実的な文書が提示されています。
レバノンのニュースサイトは、記事の中で、イスラム国に対するアラブと西側のメディアの立場を次のように説明しています。「サウジアラビアのメディアにおけるイラク情勢の報道の仕方やシリアやイラクの罪のない人々を殺害しているテロリストに革命家といった肩書を与えていることは、これらのメディアが目的をもって動いており、イスラム国の報道官になっていることを示している」
またこの記事の続きではこのようにあります。「とくにサウジアラビアのメディアの利己的で目的を持った報道の例に、イラク軍がマレキ軍と呼ばれていることがある。彼らはこれによって、軍を政治的な勢力に見せ、その国家の評判を否定しようとしている。これらのメディは実際、この方法によって、宗教と民族性に基づいてイラクを分割するという問題を広めようとしており、この目的の実現に向け、イスラム
国などのテログループを支援している」
現在、人権を主張する西側諸国のメディアは、イスラム国の犯罪に目をつぶることで、彼らを支持し、彼らの行動を認めています。これにより、ドイツのテレビ、ドイチェベレはこれらのテロリストについて、イスラム国という名の聖戦士、過激派と呼んでいます。さらに、アメリカのVOAも、旧バース党の残党勢力タクフィーリー派を報道の中で、スンニー派のグループ、イスラム義勇軍、過激派勢力としています。イスラム諸国の人権の軽視を常に主張しているイギリスのBBCもこのテロ組織の野蛮な行動に目をつむり、彼らを聖戦士やイスラム国に属するスンニー派の戦士としています。
このように、西側のメディアにおけるこのような言葉の使用は、テロ支援国家による隠ぺいであるのは明らかです。これ以前にも西側メディアは、こうした政策により、モナーフェギンやリーギーといったテロリストに正当性を与え、自分たちの利益になるよう彼らを支援していました。
イラクにおけるメディアの危機の拡大に注目することで、この国やその他の国の革命的な独立メディアは、真実を伝えるために措置を講じることができます。ニュース部門の戦略的同調や宣伝部門の政策のためのメディア本部の設置、仮想空間とくにSNSにおける一体化した活動のためのボランティアグループの活動などがこうした措置に含まれます。