【記者手帳】日本とは対照的な韓国の製造革新委員会

 「特別な話は出なかった。ただ原則論的なことを勝手に語り合うだけだった」

 先月29日、ソウル市中区の大韓商工会議所会館で第1回の「官民合同製造革新委員会」が開催されたが、これに出席したある人物は「会議は各自の所属する団体が希望する内容や、本人の考えを述べるだけで終わった」と明かした。委員会はこの日最初の会合が持たれたわけだが、発足に至る経緯は6月26日、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が全国の商工会議所会長団との昼食会で提案したことがきっかけになった。これは日本の「産業競争力会議」を参考にしたもので、官と民が力を合わせ、危機に追い込まれた韓国の製造業を立ち直らせることが目的とされている。共同委員長に就任した産業通商資源部(省に相当、以下同じ)の尹相直(ユン・サンジク)長官は「委員会は単なる諮問のレベルではなく、議論された内容が実際の政策につながるようなものにしたい」と語っていた。

 ところが会議の初日に行われた議論の内容は、尹長官の意気込みとは完全に懸け離れたものだった。「ソフトウエア開発に取り組む人材の育成が急務だが、予算不足などの理由で困難な状況にあるため政府の関心と支援が求められる」「製造業の新規起業を活性化するために、メンター(優れた助言者)となる優れたビジネスモデルが必要だ」「流通経路を活性化させるためには大々的な改革に取り組むべきだ」など、要するに製造業を革新させる方策というよりも、業界の意見やその求める内容を語り合うというレベルにとどまっていたのだ。

 また委員の顔触れも期待外れだった。政府からは尹長官と企画財政部の周亨煥(チュ・ヒョンファン)第1次官、未来創造科学部の尹宗録(ユン・ジョンロク)第2次官などが出席したが、民間からは共同委員長を務めた大韓商工会議所の朴容晩(パク・ヨンマン)会長と通信大手KTの黄昌圭(ファン・チャンギュ)会長以外は、財界の大物や大規模投資の権限を持つ企業関係者はいなかった。

 これは昨年1月8日に日本で発足した「産業競争力会議」と完全に対照的だった。産業競争力会議の委員長には安倍晋三首相が自ら就任し、さらに麻生太郎・副総理兼財務大臣、甘利明・内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、菅義偉官房長官など政府の大物が委員として毎回顔を出していた。

 さらに財界からは経団連の榊原定征会長(東レ会長)をはじめとして、住友商事、武田薬品工業、みずほフィナンシャルグループなど、日本を代表する大企業のトップが7人も加わり、14人からなる委員全体の半分を占めていた。各委員は毎月独自に綿密な研究を行い、調査報告書を取りまとめた上で会議に出席していたが、その結果、産業競争力強化法改正案、国家戦略特区の設定、法人税の引き下げといった目に見える成果を次々と出した。これに対して韓国における官民合同の「製造革新委員会」は果たして日本の「産業競争力会議」と同じく、何らかの成果を出せるだろうか。月1回、見せるためだけの会議を開くつもりなら、最初からやらない方がましではないだろうか。

産業1部=李恵云(イ・ヘウン)記者
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