ストーカー対策:被害者の意向、反映評価 提言実践に期待
毎日新聞 2014年08月05日 12時13分(最終更新 08月05日 12時34分)
2012年11月、神奈川県逗子市で女性が元交際相手の男に刺殺された事件では、男は脅迫容疑でいったん逮捕されながら、執行猶予付きの判決で社会に戻った後に事件に及んだ。この事件に象徴されるように、確信的な殺意を抱いたストーカー加害者に対しては、刑罰による抑止効果がみられないケースが多数ある。警察は外部機関と連携しながら一刻も早く加害者の治療に踏み出すべきだ。
昨年4〜6月に警察が認知したストーカー事案のうち、警察による警告で加害行為が止まったケースは約9割。裏返せば約1割は重大事件に至る兆しを抱えている。
そもそも、国内のストーカー対策は早期の事件化や被害者の避難などに重点が置かれ、加害者の更生はほとんど議論されてこなかったが、逗子事件の被害者の遺族は検討会のヒアリングで「最終的に加害者は自殺を遂げており死刑をもってしても防ぐことはできなかったと思う」と述べ、厳罰化よりも加害者の更生に向けた取り組みの必要性を訴えた。
加害者のカウンセリングに取り組む精神科医も「ストーカーの2割は警察の介入でも止まらない。刑罰的な措置だけでは無理だ」とし、「ストーカー病」という病気だと説明。委員からも「警告時に医療関係者につなげるという流れを作るべきではないか」という指摘があった。
しかし結論は、警察庁による調査研究の結果を見てからとし、加害者治療にまでは踏み込まなかった。背景には、(1)強制はできない(2)警察だけでは決められない−−などの懸念があるとみられる。ただ、ストーカー犯罪同様、再犯の可能性が高い性犯罪事件では矯正プログラムが既にある。今後、規制法改正が話し合われる国会では、被害者支援とともに加害者対策についても議論を深めてもらいたい。【長谷川豊】