中国恒例・統計の「怪」・・・省別GDPの合計値、全国値を1割以上超過
2014-08-04 14:29
中国では4日までに、黒龍江を除く全国30の省級行政区画(省・中央直轄市・少数民族自治区)がそれぞれ、2014年上半期(1-6月)域内総生産(GDP)を発表した。合計は29兆7114億4900万元で、国家統計局の発表した同期の全国GDPの26兆9044億元をすでに10.43%上回った。中国では省級行政区画のGDP合計が全国値を上回る状態が続いている。経済参考報などが報じた。記事中の専門家の話を総合すれば、中国では信頼するに足りる経済統計をまとめる基盤が整備されていない上に、地方政府指導者らにより、数字が改竄(かいざん)されていることになる。 第1四半期(1-3月)の全国31カ所の省級行政区画別のGDPの合計は13兆2945億1800万元で、国家統計局発表の全国値は12兆8213億元だった。同四半期の行政区画別GDPの合計は全国値を3.7%上回るにとどまった。 第2四半期になり再び、行政区画別のGDPの合計が、全国値を大きく上回ることになった。黒龍江省の上半期GDPは5811億元程度になるとみられており、31省のGDPが出そろえば、全国値を12%上回ることになることが確実だ。 中国改革基金会国民経済研究所の王魯副所長は、省別に発表されたGDPの合計が国家統計局発表のGDPを上回る現象について、「ひどい場合には、省別に発表した伸び率がすべて、全国の伸び率よりも高い場合がある」と指摘。 原因は「一部の地方政府が、業績を維持しているように見せかけるために、統計に干渉すること」と断言。地方政府による統計への干渉はGDPにとどまらず、投資額、都市化率、失業率など多くの分野にわたっているという。 中国中央政府は「経済成長率だけを重視する考え方からの脱却」を繰り返し説いているが、さまざまな統計操作がGDPの「水増し」に結びついている。王副所長によると、国家統計局は水増し部分の「絞り出し」を行っており、さまざまな分析を通じて「事実に合致しない虚偽部分」と判断すれば削除しているが、省がまとめた「根本の数字」を直接いじれない場合も多く、「地方の数字」と「国の数字」に格差がある状況が依然として続いている。 北京大学中国国民経済核算与経済増長研究中心(国民経済計算と経済成長研究センター)の蔡志洲副主任は上半期の各省別行政区画のGDP成長率がいずれも、年初に立てた目標値に未達であることに注目。蔡副主任によると、地方の指導者が「統計数字」に干渉する例は少なくなってきているが「省が干渉しないのと、その下の行政区画である市や県が干渉しないことは別の話」という。実際には、市や県の発表したGDPの合計が省発表のGDPを上回る現象が、しばしば発生しているという。 蔡副主任は、中国における統計作成方法の未熟さについても言及。例えば、複数の省にまたがり活動を展開している企業について、それぞれの省が「生産値」を自らの省に繰り入れてしまう現象が見られるという。 蔡副主任によると、統計調査の精度の問題も大きい。第一次産業、第二次産業の場合は比較的信頼性が高いが、第三次産業については外食産業や宿泊業など数種類を除けば、サービス業や小売業できちんとした統計指標が作成されていない。 零細な小売業者に対しては、「請負制」の課税をしている場合もある。店舗の設置場所や規模で、売上高に関係なく「定額の徴税」をする方法だ。中国ではなじみのある方法だが、税収から売上高の合計を算出することは困難だ。 王副所長と蔡副主任の話を総合すると、中国では信頼するに足りる経済統計をまとめる基盤が整備されていない上に、地方政府指導者らにより、数字が改竄(かいざん)されていることになる。 国家統計局の馬建堂局は3月、「中国の一部地方(政府)には多かれ少なかれ、GDPを崇拝する傾向が存在している」と指摘。「GDPを増やすためなら、エネルギーの浪費や環境に対する損害もかえりみない。虚偽の数字を作る地方すらある」と述べた。(編集担当:如月隼人)