ストーカー対策:被害者の意向、反映評価 提言実践に期待
毎日新聞 2014年08月05日 12時13分(最終更新 08月05日 12時34分)
ストーカー被害に対する対策の在り方を検討してきた警察庁の有識者検討会が5日、規制対象の拡大などを提言した。今後、悲惨な事件を止めることはできるのか。ストーカー事件で家族を奪われた遺族らからは、どう実効性を確保していくかが課題だとの声も出ている。
1999年の埼玉・桶川ストーカー殺人事件で、長女(当時21歳)を失った猪野憲一さん(64)は、有識者検討会の一員として意見を述べてきた。毎日新聞の取材に対し「思った以上の提言はできたかなという評価と、議論が出尽くしたとはいえないという両方の気持ちがある」と語る。
猪野さんはプラス評価の要因として、被害者遺族である自身が検討会に入ったことを挙げ、「被害者の意向をくみながら改革する方向へ進んでいる」。長女の事件の際には当初、警察が対応しなかった経験があり、禁止命令など現場の制度運用を巡る見直しが盛り込まれたことなども評価したが、「次のステップは法律を変え、警察や各省庁、関係機関が連携して提言内容を実践してもらうこと。世の中が変わらなければ提言は意味がない」と期待を語った。
一方、東京都三鷹市で昨年10月、元交際相手の池永チャールストーマス被告(22)に高校3年だった女子生徒(当時18歳)を刺殺された両親は、代理人の弁護士を通じ、毎日新聞に回答を寄せた。
それによると、提言が新たに規制対象に含めるべきだとしたSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)による連続送信については、「当然のこと」と強調。三鷹の事件で池永被告は事件前に2度、生徒の最寄り駅付近で待ち伏せしていたことが既に判明していることから、「徘徊(はいかい)は危険のサイン。警告と同時の早い段階で身柄拘束やストーカーの所在確認が必要ではないか」とした。
また、厳罰化の方針については「当然必要だが、(想定されている)2倍程度では全く手ぬるい」とし、「人の命を奪えば、死者が1人であっても加害者は人生の全てをかけて償うべきだ。終身刑を設けるべき」と主張した。【藤沢美由紀、松本惇】
◇解説 厳罰化より治療が必要
警察庁の有識者検討会の報告書は、最大の焦点ともいうべき加害者対策について、更生プログラムの検討を盛り込んだが、具体策への言及はなかった。