日経は規模では毎日と同じくらいですが、収益率はかなり高く、経常利益の額は朝日新聞と並びます。財務体質も良好でしたが、2008年には340億円をかけて大手町に新社屋を建設しました。これが吉と出るか凶と出るかは今のところ分かりません。また売上高に比して従業員数が多く、広告依存度も高いため、今後の部数低下による影響は大きいと考えられます。読売新聞は詳細な決算を公開していないので、実態はつかみにくい状態です。
今後、紙の新聞が衰退することは確実であり、新聞社の売上や利益は減少が見込まれます。ただ新聞社の給料はかなり高く、朝日新聞や日経新聞の社員は40歳代前半で1300万円近い年収があります(毎日や産経は700万円から850万円程度です)。潤沢な資産を持つ朝日新聞や日経新聞は、当面の利益減少に対しては給与の引き下げで対応し、売上げの減少に合わせて社員数を減らしていけば、すぐに経営が傾くということはないでしょう。
一方、目立った資産がなく、給与の引き下げもすでに実施している毎日や産経は、今後、新聞離れが加速すると、かなり経営が苦しくなるかもしれません。
また朝日新聞や読売新聞など、有力なテレビ局をグループに持つ新聞社については、テレビ局との合併というウルトラCも理屈的には可能です。社会の移り変わりが早く、多くの新聞社が消滅した米国とは異なり、日本の新聞社はしぶとく生き残る可能性が高いといえるでしょう。
(大和田 崇/The Capital Tribune Japan編集長)