2016年春の北海道新幹線開業と同時に経営分離する第三セクター鉄道の準備会社が1日、設立された。北海道旅客鉄道(JR北海道)の不祥事に不信が残る中、予定より約3カ月遅れた。ただ、6月にも脱線事故が起きるなど安全運行体制に不安が残るほか、沿線自治体の人口減少で三セク移行後の経営も苦戦が見込まれている。
五稜郭―木古内の沿線自治体やJR北海道から出向してきた社員に、社長に就任した荒川裕生副知事が辞令を手渡し「何よりも鉄道輸送の安全が最優先との基本理念を共有し、利用者に愛される鉄道会社をつくりたい」と話した。
準備会社には道庁と沿線自治体が2億2600万円を出資。道庁が80%、北斗市が11.2%、函館市と木古内町が各4.4%を負担している。
事務所は道庁本庁舎1階に置く。専務に道庁の三戸部正行交通政策局長が就き、社員は役員を含め17人。当面は三セク鉄道開業に向け、鉄道事業許可申請などを担う。
10月に三セク鉄道の会社名を公募し、年内に決める。来夏に函館市に本社を移転し、民間から社長を起用する方針だ。
会社設立はJR北海道の不祥事の影響で当初予定の5月から約3カ月ずれ込んだ。さらに6月の木古内町内の貨物列車脱線事故で沿線自治体の不信が高まり、経営分離時期の延期を求める声もあったが、7月28日に道庁とJR北海道が安全運行体制に関する追加合意を締結し収まった。
対象区間の事故は3度目になるだけに、JRの取り組みに地元は今も厳しい視線を注ぐ。
沿線人口の減少が続くなか三セク移行後の経営は厳しい。道庁・沿線自治体の協議会が策定した経営計画では、五稜郭―木古内間の普通列車の利用者数は15年度の1日2148人から25年度には1805人に減ると予測。道庁・沿線市町の実質負担額は開業10年間で23億円に上る見通し。
車両や設備の更新も必要で将来、鉄道を維持できるかは不透明。沿線住民への啓発や観光活用による利用促進策も大きなテーマとなる。
北海道旅客鉄道、荒川裕生