総務省は5日、NTTドコモにかけてきた独占規制を2015年度に緩める方針を示した。自動車メーカーなど通信以外の業種との業務提携を原則自由にする。自動運転車や身につけて使うウエアラブル端末の開発などに貢献しそうだ。総務省は市場占有率の低下からドコモの支配力は落ちたと判断。NTTグループを縛ってきた独占規制の大きな転換になる。
総務省の有識者検討会が同日まとめた通信大手に対する規制の見直し案で示した。ドコモの独占規制を完全になくすのではなく、NTTグループ以外の会社と提携するときは規制の対象から外すという内容。同業のKDDIやソフトバンクと提携する可能性は低く、今回の規制緩和で進むのは自動車など異業種との提携になる見込み。
総務省は見直し案を盛り込んだ電気通信事業法の改正案を15年の通常国会に出す方針。15年度の施行を目指しており、ドコモはこれまで難しかった自動車メーカーや小売業者などとの提携に乗りだしそうだ。
国内外の自動車各社が20年ごろの実用化をめざす自動運転車は高度な通信機を搭載した車が自分の位置を自動で測定しながら走るしくみ。携帯電話で培ったドコモの通信技術をうまく組み込めば、開発が加速する可能性もある。インターネットと接続して地図を更新したり、観光情報を取得したりするカーナビゲーションの開発にも役立つ。
電子書籍の端末メーカーと提携してネットで単語の意味を調べるサービスを提供したり、格安スマートフォン(スマホ)会社と組んでドコモショップで格安スマホ向けの端末を販売したりすることも可能になる。
ドコモによると、独占規制が足かせとなり、提携を模索していた自動車メーカーをほかの通信会社に奪われたこともあるという。
総務省は自動車や家電製品、腕時計や眼鏡などあらゆるものに通信機能が付く時代が到来すると想定。ドコモを自由にして技術開発の可能性を広げるべきと判断した。
今回の見直し案はドコモがNTT東西から光回線を借りることを認める方針も示した。これにより、ドコモが回線を借り受けて、自社のスマホと一括契約した人の料金を割り引く「セット販売」が可能になる見通しだ。
ドコモによる独占の懸念は低くなったが、代わりにKDDIとソフトバンクを含めた3社の寡占が強まっている。総務省はこれ以上寡占が進まないように携帯会社間のM&A(合併・買収)に事前審査制を取り入れるが、現状の寡占を崩すことにはつながらない。格安スマホ会社など大手以外を育てる必要がある。
▼ドコモの独占規制 KDDIやソフトバンクなどほかの携帯電話大手にはないドコモだけに対する特別な規制。かつて市場占有率が50%を超えていたドコモの支配力をそぐため2001年度に入れた。特定の会社と排他的に業務提携したり、端末メーカーの経営戦略に口出ししたりすることを禁じている。培った通信技術を他分野で生かしにくいとしてドコモが緩和を求めていた。
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