インターネットを介して不特定多数から小口の資金を募る、クラウドファンディング。
既存の金融機関ではカバーできない資金供給スキームとして関心を集め、クラウドファンディング事業に参入する企業も年々増えている。そんな中、投資家保護の観点で長らく調整を重ねていた改正金商法が成立した。
施行自体は来年になる予定だが、この法改正は事実上、「株式(エクイティ)型」クラウドファンディングの解禁を意味する。未上場でも1億円を上限にネット上で公募増資ができるようになるため、資金調達の新たな選択肢として中小企業から大いに期待を寄せられている。
ただ、サービス事業者としての参入要件が緩和され、投資者保護のための行為規制が導入される一方で、企業側の情報開示のルールが不明瞭、気軽に個人投資家になれても株式を売買できる場がないといった課題も山積しており、日本で普及するのかと疑問視する声もある。
このように、期待が大きい分一筋ではいかないクラウドファンディングだが、そもそも「投資型クラウドファンディング」とは何を指しているのだろうか。まずは、他の型と何が違うのか、どのように分類されるのか、その定義からみてみよう。
非投資タイプと投資タイプ
クラウドファンディングは、支援金に対し物品やサービスでリターンされる“非投資タイプ”と、金銭でリターンされる“投資タイプ”に別れる。そして、さらにそれを細かく分類していくと、「非投資タイプ=寄付型、購入(報酬)型」、「投資タイプ=融資(貸付)型、ファンド型、株式(エクイティ)型」と、5つに分けることができる。
本稿では、投資タイプにあたる「融資型」「ファンド型」「株式型」の中でも、特に「融資型」と「株式型」にフォーカスしたいと思う。理由はシンプルで、この2つこそが、市場活性の鍵を握っているからである。
参考までに国内外の「ファンド型」クラウドファンディングサイトを紹介し、次章以降で本題に入ろうと思う。
国内外の「融資型クラウドファンディング」の動向とポテンシャル
世界のクラウドファンディング市場で最も高いシェアを獲得しているのが、「融資型クラウドファンディング」であることはご存知だろうか。日本においてはまだ浸透していない感が否めないが、実に約5,000億円と言われる世界のクラウドファンディング市場の41%を占める(寄付型:28%、購入型:26%、株式型:3% ※1)。
融資型クラウドファンディングは、「ソーシャルレンディング」とも呼ばれ、個人間での金銭の貸し借りをネット上で仲介するサービスを指す。また、ソーシャルレンディングには、サービスの運営元が審査をし、借り手個人の格付けを行い、貸し手個人がいくらで、どのくらいの金利で貸付を行うか決定する「マーケットタイプ」と、融資希望者が借り入れの目的や信用度の高さをアピールし、貸し手側がそれらを判断材料として融資先を決定する「オークションタイプ」がある。
国内の代表的なサービスとしては、ソーシャルレンディング業界の草分けであり最大手の「maneo(マネオ)」、日本で唯一証券会社が運営する「クラウドバンク」、「SBIソーシャルレンディング」、「AQUSH(アクシュ)」などがある。
READYFOR?やCAMPFIREなどで、夢のあるプロジェクトや社会貢献性の高いプロジェクトに慣れ親しんでいる方にとって、上記のサービスは「共感」ありきのクラウドファンディングというよりは、資産運用や消費者金融に近いという印象を受けるかもしれない。
確かに、利回りの良いローンファンドという商品ではある。ただ、いわゆるマイクロファイナンス系の新興国支援、自然エネルギー、中小企業支援など、自分の共感できるテーマに投資する、という言い方をすれば違和感もなくなるのではないだろうか。
融資型クラウドファンディング市場の成長性が折り紙つきであることは、たとえば2013年12月にローンチした「クラウドバンク」がわずか半年間で累計調達額5億円を突破し、7月末時点では8億円を突破していることからも明らかであるが、加えて日本ならではの特筆すべきポテンシャルについても注目したい。
まず第一に、日本は「世界一現預金の多い国」である。日本銀行によれば日本の現預金総額は839兆円ほどで、アメリカでさえ544兆円だという。つまり、運用されず眠ってしまっているお金が一番多い国なのだ。
このことをふまえると、低い預金金利が慢性化している中、新たな資産運用の方法として可能性がある、という見通しには説得力があるし、銀行預金残高は上がるけれども貸し出し残高が下がっている、株式相場は個人資産まで手を伸ばせていない、といった課題は、融資型クラウドファンディングを後押しするにはもってこいの条件を備えているとも言い換えられる。当然、金融商品としてのリスクはあるが、次世代の資産運用インフラとなりえるポテンシャルを持っていることは間違いないだろう。