スゴイ現場

東大安田講堂、姿変えず「落ちない天井」に大改修

東京大学安田講堂改修工事

2014/08/06

 東京大学のシンボルである安田講堂を、どうやって大地震でも「落ちない天井」に改修するか。しかも、姿は建設当時のまま――。約23億円をかけて、建物内部を大手術する工事が最盛期を迎えている。

改修直前の東大安田講堂の天井。重さが1m2当たり100kgの吊り天井だった(写真:小川 重雄)
改修直前の東大安田講堂の天井。重さが1m2当たり100kgの吊り天井だった(写真:小川 重雄)

改修中の天井。吊り天井から、構造と一体化した天井につくり変える(写真:日経アーキテクチュア)
改修中の天井。吊り天井から、構造と一体化した天井につくり変える(写真:日経アーキテクチュア)

左は改修前の安田講堂の外観。右は7月28日時点の様子。外観は竣工当時の姿を残す(写真:左は小川 重雄、右は日経アーキテクチュア)

 安田講堂は東大本郷キャンパスに1925年に完成した。鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造の地下1階・地上5階建てで、延べ面積は6988m2。講堂部分は3〜4階に位置する。東京帝国大学建築学科で教鞭を執った内田祥三、岸田日出刀の両氏が設計し、清水組(現在の清水建設)が施工した。「安田」講堂の名前は、安田財閥の創始者・安田善次郎の寄付によって建設されたことによる。

東大安田講堂の立面図。建設当時の図面が保存されていた(資料:東京大学)
東大安田講堂の立面図。建設当時の図面が保存されていた(資料:東京大学)

建設当時の様子。屋根を支える小屋組は鉄骨造(写真:東京大学)
建設当時の様子。屋根を支える小屋組は鉄骨造(写真:東京大学)

上棟式の様子。法被に見える「喜」の字は清水組を表すもの(写真:東京大学)
上棟式の様子。法被に見える「喜」の字は清水組を表すもの(写真:東京大学)

 1968〜69年の東大紛争で占拠・封鎖された安田講堂は、その後、長期間にわたって閉鎖。90年に大規模改修(施工者は大成建設)を実施し、91年から講堂の使用を再開した。その後、96年に登録有形文化財の第1号として登録された。

 今回の改修のきっかけは2011年3月の東日本大震災だ。大きな損傷はなかったが、ガラスやタイルの一部が落下するなどの被害が生じた。完成から約90年が経過し、老朽化も進んでいた。東大内部で改めて検証したところ、耐震性が十分でなく、耐震改修を実施することが決まった。

 設計は東大キャンパス計画室と同施設部、香山壽夫建築研究所が担当した。改修のコンセプトは、竣工当時の意匠を保存・一部復元しながら、躯体や二次部材の耐震性を確保すること。当時の姿を残すことによる難題が、施工者である清水建設の頭を悩ませた。

最大の難関は、特定天井をどうするか

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読者のコメント (2 件)  ※[ログイン]すると全文表示、投稿・投票ができます

大変興味をもって拝読しました。
父が大成なのでそちらに施工してもらいたかったななんて思ってしまいました(笑)・・・というのが冗談で、わが国の建設会社の技術には改めて感服、建築物はやっぱりいいなと思います。
私学の雄がいくらあっても東京大学は日本の誇る世界の大学であってほしい、その「顔」は威風堂々としていてほしいと再認識しております。

( Misa Hayashi 2014/08/06 08:36 )

このコメントが 参考になった: 1  参考にならなかった: 0

『天井の構造計画はゼネコンさんにお任せだった事』が興味深かったです。

( ひこぼー 2014/08/06 05:20 )

このコメントが 参考になった: 2  参考にならなかった: 0

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