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2011/07/23

Rewrite 少女達のオカ研活動記 発足編 (Rewrite短編)

「部活をしようと思うのよ」

 放課後、空き教室に集まり雑談したり本を読んだり能力の練習をしたりと自由にしていた五人の少女達。
 その中の一人で、この空き教室をまるで私室の様に改装してみせた自称魔女の朱音は、突如そんな宣言をした。

「まーた妙な事を言い出したねぇこの子は」
「あかねだから仕方ない」
「部活ですか?どんなのです?」
「変なのじゃなければいいが…」

 その発言を聞いた残り四人の少女達の反応はそんなものだった。色よい返答が一つしか無いという悲しい現実を突きつけられた朱音だが、それくらいではへこたれない。
 なにせこの程度の逆境は既に何度も経験している。尤も今の時代は全人類が逆境なのだが。

「で、どんな事をするつもりなんですか?」

 唯一まともにノってくれているちはや。普段はアホの子とからかったりしている朱音だが、この時は素直ないい子で良かったとちょっとだけ感謝していたりする。
 勿論他の三人がダメじゃないという訳ではない。小鳥は最初は色々とあったが今は仲が良く、静流とルチアとも勿論仲が良い。まるで五人姉妹の様に育ってきた彼女達は、たとえ血など繋がっていなくとも本物の家族と言っても良いほどの信頼関係を築いている。
 ちなみに、

 母親:神戸小鳥
 長女:中津静流
 次女:此花ルチア
 三女:千里朱音
 四女:鳳ちはや

 という感じで纏まっている。一番年下の静流が長女扱いだったり、小鳥だけ母親枠だったりと多少不思議な点はあるものの家族関係は良好である。
 あとはこの五人の保護者として西九条灯花という教師が存在しているが、彼女を入れても母親枠には変化が無い辺り小鳥のお袋パワーが凄まじい事がわかる。肝っ玉母さんと言われても仕方が無いだろう。

 それはさておき、部活である。一応五人が通っている学校は勉強以外に生命力を使った技術の授業も行っていて生徒数が非常に多く、唯一完全な形で残っていた高校の校舎を全員が利用している為、年齢も最高と最低の差が広い。
 それ故に部活も多岐に渡り、運動系も文科系も様々なものが存在している。趣味的なものから実用向け訓練をしているものなど実に様々なのだ。
 そんな状態でどこかに入部するのではなく新たに部活をするという事は、まだ部が存在していない何かをするという事だ。それ故に、あまりノってきていない他のメンバーも何だかんだで楽しみにしていた。

「しかと聞きなさい。私が新たに始めるのは…オカルト研究会よ!」
「オカルトは能力」
「オカルトは魔物」
「オカルトは魔術」

 ボッコボコだった。しかし、生命力を用いた技術が広まった現在ではそうなっても仕方が無いだろう。

 突如ネット上で明かされた生命力を用いる技術。それは従来までオカルトとされてきた様な事象を引き起こすものだった。

 例えば、生命力を糧に自己の変革を成し、常人よりも高い運動能力と独自の超能力を手に入れた存在は『超人』と呼ばれた。
 例えば、生命力を籠めて仮初の命を与え、様々な姿の魔物として存在させ自分の使い魔として扱う存在は『魔物使い』と呼ばれた。
 例えば、生命力を用いて周囲に働きかけ、認識の攪乱や結界など不可思議な現象を引き起こす存在は『魔術師』と呼ばれた。

 ちなみに魔物使いと魔術師は基本的な部分は同じであり、少し前までは纏めて『魔物使い』と呼ばれていた。しかし魔物の使役よりも結界などの技術に秀でた者も存在しており、その結果二つに分類する事になった経緯がある。
 五人娘に当てはめると、静流とルチアが超人でちはやが魔物使い。朱音は魔物も魔術もそれなりに使える自称魔女だ。
 小鳥はまた少し違うドルイドと呼ばれるもので、古きドルイドの知識を引き継ぎパワースポットから力の供給を受ける事が出来る世界でも稀な存在だ。しかし古き知識と共に引き継いだ役目が既に終えてしまっているので、今はパワースポットからの供給は途絶えている。
 それでも引き継いだ知識は残っているので一般的な魔物使いとは比べ物にならない技術を有している。

「ぐぬぅ…た、確かに殆どはそれらで説明が出来るわ。でもそれじゃあ解明出来ない現象は存在する筈よ! 現に、私達は体験しているでしょう?」
「幻視か」
「そういえばそうですねー」

 この場にいる五人が一斉に体験した幻視。ぼんやりと見える大きな木にオーロラの様な光が宿っているもの。そしてその周りに五人の少女達が立っていた。
 五人の少女達がその木を魔物にしようとした所で途絶えたそれは、数日前に見た今でも全員しっかりと覚えている。

「そうか、オカルト研究と題して色々と探索しながら、ついでにあの木を探し出そうという事か」
「そういう事よ。それに実際にあんな事があったのだから、他にも何か面白そうな事があるかもしれないわ。そしてその最初の発見者になれば…上手くいけば一攫千金…」
「あかねがまたお金儲けの事を考え始めた…」
「まーたこの子はそんな事ばっか考えて。一攫千金じゃなくても小銭がいっぱいあれば幸せになれるのにねぇ」
「いえ、それはたぶん小鳥だけですけど…」

 お金の話になると大体こうなるのがこのメンバーの常である。

「やっぱり木を見つけたら魔物にするんですか?」
「幻視の通りにするならそだねぇ。でもどんな魔物?」
「可愛い動物のがいい」
「静流の言う可愛い動物は時々とんでもないのが飛び出すからな…」

 以前静流が小鳥に魔物を作ってもらいたいと依頼した事があったが、その魔物が巨大で危険そうなカブトガニだったという経緯がある。しかも何故か角突き。
 静流曰く『ヘラクレスオオカブトガニ』らしいが、流石にそんな恐ろしい魔物は作れないと製作は断念された。断念に至った主な理由は『外見が怖い』という小鳥の一言だったりするのだが。

「まあ、どんな魔物にするかはおいおい考えるとして…どう?」
「私はいいですよー」
「…面白そう」
「私も幻視の件は気になるし、断る理由も無いな」
「あたしもおっけーだよ」
「全員賛成ね。なら、オカルト研究会発足よ!」

 こうして五人の少女達による波乱と冒険に満ちたオカルト研究会の日々が始まった。最終目標である、何処にあるのかもわからない一本の木を目指して。

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