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2011/08/20

Rewrite 式紙が偽者だった場合 第2話

 ある日の学校にて瑚太朗は机に突っ伏していた。ここ最近よく見られる光景でもある。
 初の心霊っぽい様な透明人間っぽい様なものに襲撃されて数日が経つが、あれから瑚太朗はほぼ毎夜同じ事件に遭遇していた。
 一度だけ何者かに抱きつかれる感触が無かった日があったが、その日はオートセーブがどうこうという変な夢を見た。それはそれ変に精神が疲れた夢だった。

「瑚太朗君眠そうだぁね。最近は少しマシになってきてるみたいだけど」
「流石に毎夜同じ心霊現象に遭遇してると慣れてきたっていうかね…」

 怖い事は怖いが、ただ布団に潜り込んできて抱きついてくるだけなのだ。精神面以外に実害は無いので、慣れればそれほど怖くは無い。
 ただし、今度は恐怖とはまた違う理由で眠れないのだが。

「なにやらふしだらな事を考えておる気配が」
「そそそそそんな訳無いだろ?」
「そんなあからさま過ぎる態度を取られると逆に対応に困るよ。眠れないからいやらしいビデオでも見てたとかかね?」
「いや、そういう訳ではないんだけど…」

 ビデオは見ていない。抱きついてきている透明人間が女性の体つきだからドキドキして眠れないだけだった。
 しかも身体の大きさから察するに、同い年か少し年下くらいなのだ。健全な男子としては得体の知れない相手だとしてもちょっとは興奮せざるを得ない。
 恐怖にはすぐに慣れたものの人肌の柔らかさには全然慣れないせいで、限界になればギリギリ寝れるものの毎夜落ち着かないのだった。

「ともかく、あの幽霊を何とかせにゃ安眠は出来そうに無い…」
「流石に幽霊は私にはどうしようも無いし…魔女さんも無理だったんだよね?」
「式紙っぽいのを貰ったけど効果が無かった」

 それでも気休め程度にはなるかもしれないと、今でも自室の机の上には式紙のとも子が鎮座していたりする。

「せめて幽霊の姿が見えたりしたら色々出来るのにね」
「小鳥頼む。うちに泊まりに来て調査してくれ。霊感あるんだろ?」
「当店はそういったサービスをしておりませぬ」

 微妙に混じった下心を察知されたのかあっさり却下された瑚太朗だった。

 そして本日も夜が来た。

「どうする…いい加減何とかしないと俺の身体がもたんぞ」

 ベッドの中で頭を抱えながら解決策を練る。しかし今まで浮かばなかった名案がそう簡単に浮かぶ訳も無く。
 悩み続けてうとうととしてきた時に、今宵もそれは現れ抱きついてきた。

(慣れてきたとはいえ…怖ぇ…でもやわらかい)

 余裕じゃないかと思われそうだが本人は割と必死なのだ。主に恐怖とオトコノコ心の制御で。あと対処法の考案にも。
 数日前に一度無理矢理引き剥がそうとした時は、なにやら不満そうな雰囲気を感じたと思いきや目に見えない何かに束縛されて苦しい目に会った。
 逆に抱き返した時はちょっともぞもぞしただけでそのまま抱きついたままだった。むしろ抱き返したせいで透明人間の慎ましやかな胸の感触が余計にはっきり感じられ、逆に自爆だった。
 何もせずに感覚を研ぎ澄ませて様子を伺ってみた時は、時折深呼吸をする様に大きく呼吸をしていたのを感じた事もあった。体の位置的に胸元辺りなので、匂いを嗅いでる特殊性癖の持ち主なのかといらぬ推測をしてしまった事もある。

(そうだ、小鳥が「姿が見えたりしたら」って言ってたな…)

 これ以上普通にやってどうしようも無いのなら、普通じゃない方法でなんとかするしかないだろう。
 普通じゃない方法…つまり、超能力。自らが持つ書き換えの能力を使って、何とかこの存在の姿を見れる様にしようという考えだった。
 今までこの能力の使用を自粛していたのにも関わらず、まさかこんな事に使うハメになるとは本人も思わなかった。しかし流石にこれ以上どうしようもないのだ。仕方ない事なのだ。
 『見えないものを見える様に』というイメージを思い描けるかどうか不安ではあるが、今抱きついている誰かが見える様にというイメージなら何とかなるかもしれない。

(集中しろ。輝く液体を両目に注ぐ様に。他人に見えないものが見える様に)

 両目が熱くなり、少しだけ頭がふらつく様な眩暈を感じる。ゆっくりとやり過ぎない様にした為にそれほど大きな変革は起こってない筈だ。それでも瞑ったままの両目には変化が起きている事が何となく理解できる。
 問題は、この目で透明人間の姿を拝む事が出来るかどうかなのだが。

 そっと瞼を開いて布団の中を覗き込む。普段なら目に見えない何かが布団を盛り上げている光景が見えている。
 しかし布団の中の光景はいつもとは違う姿を見せていた。

 そこには、瑚太朗の体に抱きつきながら顔を覗き込んでいる銀髪の髪の少女の姿があった。

「あ、かわいい」
「…」

 ふと漏れた言葉に反応を示さず、表情も変えない。ただ抱きついたままじーっと瑚太朗の顔を見ていた。
 瑚太朗もそんな謎の少女の事を見つめ返す。が、表情を変えない少女とは逆に、瑚太朗の顔色はどんどん赤みを帯びていっている。
 仕方ないだろう。可愛い少女に慎ましやかな胸の感触がわかる程に抱きつかれて、しかもそれが毎夜続いていて、そんな少女が時折自身の匂いを嗅いでいた事を理解したのだ。
 照れやら恥ずかしさやらふしだらな欲望やらで内心が何かもう大変な事になっていた。

「…」

 そして眠気や精神的ダメージやらで限界を迎えた瑚太朗はそのまま気絶する様に眠った。
 勿論、謎の少女は抱きついたままである。

 翌朝目覚めた瑚太朗が奇声を上げながら悶えるのは、既に定められた運命であった。

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