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« 怠惰な操り少女 第61話 完結 | メイン | 101人プレシア(リリなの単発) »

2010/09/18

NHK少女なのは(リリなの単発)

 少女は寂しがっていた。

 父親は仕事で大怪我を負ってしまい入院していて、未だに意識を取り戻さない。そしてその事は少女の家族に多くの影響を与えた。
 少女の母親は悲しみを心の奥底へ押し込めて必死に働いた。その頃に喫茶店を始めたばかりでまだ経営が軌道に乗っていなかった為、楽をする余裕など無かったのだ。
 それ故に、少女の悲しみに気付けない。

 兄は店の手伝いをしつつも、鬼気迫る表情で剣の鍛錬に励む事が多くなった。相当無理な事もしている。
 その雰囲気に幼い少女が怯えているのにも気付かず、また少女の泣きそうな顔にも気付かず、ただひたすらに何かと戦っていた。

 姉は悲しみにくれつつも母親の手伝いをし続けた。しかしその頃の彼女もまだ悲しみを抑えきれるほどの年齢には達しておらず、それだけで精一杯だった。
 他を気に書ける事が出来ない。だから、自分の妹が寂しそうな顔をしていても気付けない。

 家族は殆ど家に居なかった。夕食を食べる為に一度家族が帰って来るが、すぐにまだ慣れていない仕事や翌日の仕込みの為に店へと向かう。
 そんな生活だから少女は常に一人も同然だった。まだ小学生ですらない少女が一人自宅で孤独に過ごすなど、本来なら耐えられるものではない。
 しかし少女は我慢し続けた。良い子にしなきゃ家族に迷惑をかけてしまう、家族に嫌われてしまうかもしれないと、これ以上の孤独に怯えて我慢し続けた。
 それでも寂しさはどんどん募ってゆく。

 ここで、正史とは違う展開をみせる。

 少女は静かで孤独な家に音を与える為、テレビを見る様になった。しかし、朝や昼のニュースなど幼い少女には良くわからない。
 必然的に少女は自分が見て何となくわかる番組を見る様になる。そして、一人でも大丈夫な様にテレビで色々な事を勉強をする様になる。

 そこで選ばれたのがNHK教育である。

 NHK教育は少女にとって偉大なチャンネルだった。
 算数の番組で計算を覚え、人形劇で日本の古典を楽しみ、このまちだいすき等で社会を知り、理科も勿論学ぶ。英語だって英語であそぼうがある。
 時にはむしむしQで虫の事を知ったり、料理番組で料理の作り方を見たり、何となくで将棋の番組を見て勉強してみたり、アニメやドラマを見ては楽しんだ。
 少女はいつしか、NHK教育のおかげで孤独に悩まされない様になった。そう、NHK教育は彼女の育ての親、もう一つの家族となったのだ。
 両親はおかあさんといっしょの歌のお兄さんとお姉さん、兄はにゃんちゅう、姉はひとりでできるもんの主人公の少女。
 祖父だっている。シゴック先生だ。

 そうして少女はNHK教育を愛する者となった。その愛は、やもすると本来の家族に対してのものよりも強固はものかもしれない。

 少女・・・高町なのはは、夕飯が終わった後に自室でパソコンの電源をつけた。理由は勿論NHKを見る為だ。テレビチューナーは基本である。
 自室で海外ドラマを見ながらなのはは今日拾ったフェレットの事を思い出していた。

「なんかあの子が喋ってた様な感じがしたんだけど・・・」

 小動物が喋る。なんと素晴らしい展開だろうかとなのはは内心ワクワクする。
 ああいうマスコットキャラが出てくる作品は色々見た事があるが、なのははその中でもカードキャプターさくらが好きだった。
 故に、もしかすると魔法的な事が起きたりして・・・とちょっとだけ考えたりしている。勿論、本気ではない。そんな事はありえないという事などす既に理解できる年齢である。

『フェレットが喋るとか典型的な魔法少女よね』
『でも、本当だったらちょっといいかも』

 パソコンからはなのはの親友であるアリサ・バニングスと月村すずかの声が聞こえてくる。そう、スカイプである。
 実はこの三人、幼少時代をそれぞれの事情で過ごした経験があり、なおかつ同じ様な流れでNHKを愛しているのだ。まさに思いを共有する親友、いや心友だ。

『うん、やっぱりフルハウスはいいわね』
「こういう幸せな家庭って、いいよねぇ・・・」
『憧れちゃうよね』

 フルハウス。その海外ドラマは少女達の理想である幸せな家庭を描いたドラマであり、また幼い頃に欲していた暖かい家庭を描いたものでもあった。

 深夜の夜道をなのはは駆けていた。
 寝ようとしている時に突如聞こえた声。それは以前も聞こえたあの声で、しかも現在進行形で助けを求めているではないか!
 すぐさまなのはは着替えて家を飛び出し、声が強くなる方向へとひた走る。
 なのはの脳内には『この声の主を助けなければ』という思いはあるものの、それ以上に『本当に魔法少女ものの展開!』というものの方が大きかった。
 カードキャプターかコレクターか、まさかアッケラカンとか言って何処かに飛ばされたりしないだろうかと考えていると半壊した動物病院が目に入った。
 流石のなのはも一瞬躊躇してしまった。が、そのなのはの元に駆け寄ってきたフェレットを見てすぐに気を取りなおす。

「助けに来てくれたんですか!?」
「わっ!喋った!?」

 来たぞ来たぞ魔法少女モノの様な展開が来たぞ、となのはの内心は大フィーバーだった。しかもパートナーが小動物という辺り、方向性はカードキャプターの様な正統派の魔法少女ものだ。素敵。
 そして視界に入った化け物を見て少し怖気づくも、すぐに背後へと逃走を開始する。そしてその間に伝えられる内容。それは魔法の力を貸して欲しいというものだ。キタコレ。
 最早なのはのテンションを止められるものは存在しない。そう、化け物すらも!

「我、使命を受けし者也」
「我、使命を受けし者也」
「契約の元、その力を解き放て」
「契約の元・・・その力を解き放て」

 一瞬『契約の元、なのはが命じる!レリ(ry』と良いそうになったが何とかギリギリで踏みとどまる事が出来た。
 そのまま呪文の詠唱を続け、とうとう魔法の力を解き放つ時が来た。

「レイジングハート!セットアップ!」
『All light』

 英語?と思いつつもキラキラと輝く光の柱に包まれる自分の体を見てそれはもう大いに感動するなのは。
 しかもフェレットが言うには、魔法少女に変身する時の服を自分で決められるというではないか!これはもう憧れの桜ちゃんが着ている様なものにするしかないと心に決める。少し恥ずかしいが。

 可愛らしい服に包まれたなのはが割とあっさり化け物を倒し、青い宝石を封印してから、なのははフェレットを連れて自宅へと帰宅した。物凄いご機嫌である。
 まだ詳しい話は聞いていないものの、あの青い宝石には番号が刻まれていた。つまり、あの宝石は複数存在しているという事だ。ますますアニメの様になってきた。さしずめジュエルキャプターなのはと言ったところか。
 こういうのは魔法を隠さなければいけないかもしれないが、なのはは心友にはあっさり話すつもりでした。大事な心友にこんな事を黙ったままで居られる訳が無い。
 そしてあわよくば戦闘時の衣装デザイン等で協力してもらおうと考えていたりしていた。いっそ宝石集めを一緒に手伝ってもラテもいいかも知れないん。
 その場合ジュエルキャプターなのはからズレてしまうが、飛べ!ナノハなら問題は無い。
 そんな事を考えながら、こっそり外出したなのはを心配して玄関で待機している両親が待つ自宅へとなのはは帰っていった。

 そしてこの事件こそが、近い未来のミッド国営放送『MHK』で教育テレビを発足させる立役者となる三人の少女の長き道のりの始まりであった。

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