笹井氏自殺:2カ月前から研究室メンバーの就職先探し

毎日新聞 2014年08月06日 06時15分(最終更新 08月06日 09時11分)

理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長=東京都千代田区で2014年4月16日、梅村直承撮影
理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長=東京都千代田区で2014年4月16日、梅村直承撮影

 自らの研究室のある建物で自殺した理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の笹井芳樹副センター長(52)。理研関係者によると、自らの研究室の閉鎖を覚悟し、約2カ月前からメンバーの再就職先を探していた。若手の研究環境改善にかねて身を砕いてきた笹井氏だが、心身とも疲れ果てた様子で就職先探しも半ばに自ら命を絶った。

 笹井氏は「器官発生研究グループ」のリーダーも務め、研究員や大学院生ら若手約20人の研究を指導していた。脊椎(せきつい)動物の脳の発生過程などを研究テーマにし、レベルの高さで知られる。だが、笹井氏は今年4月、STAP論文の研究不正を調査した理研調査委に「責任は重大」と指摘され、懲戒処分を受ける見込みとなった。

 複数の関係者によると、笹井氏は約2カ月前から研究室メンバーの就職先を探し、「研究室を閉めるから行き先を探すように」とも指示した。実績があれば他の研究室に移りやすいため、それまでの研究を論文にまとめさせたり、学会発表の準備をさせたりしたという。

 また、再生医療に関する独立行政法人科学技術振興機構などの複数の大型プロジェクトの代表を務めていたが、その交代準備も進めていたという。

 CDBの30代の研究室リーダーは「笹井さんは『STAP細胞問題でCDBの若手育成の芽が絶やされるのでは』と心配していた」と話し、2000年のCDB設立に携わった理由として「若手が実力を発揮できる研究所を作りたかった」と語った笹井氏の姿を振り返った。

 CDB設立の前年、将来を期待された同世代の分子生物学者が、国立大教授に就任した直後に自殺した。40歳だった。自身も36歳で京大教授に就いた笹井氏は「日本の大学では嫉妬されたり雑用が多かったり、若い研究者が自分の研究室を持ちにくい。CDBは、若手が思いっきり活躍できる研究所にしたい」と理想を語ったという。

 この研究室リーダーは、笹井氏の自殺について「CDBに相当の思い入れがあり、問題が起きたことに責任を強く感じたのではないか」と話した。

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