機械の魔法と神秘の魔法(リリなの×ネギま短編)
とある世界のとある事件。
世界樹と呼ばれる、地脈とつながり膨大な魔力を持った樹によって世界中に魔法が強制認識された事件は、とある子供教師と生徒達が過去にタイムスリップしたことで解決された。
子供教師は、世界の中枢とも言うべき存在・・・主人公だった。主人公が居なくなったその未来の世界は崩壊を始め、主人公が戻った過去へと、今まで辿った未来を崩壊しながら戻っていく。
そして世界樹による魔法の強制認識が行われる時まで遡り、それすらも崩壊して、主人公達が戻った決戦の時間へと辿り着いた。
しかし、世界樹の力を用いた魔法は酷く強力なものだった。
世界が崩壊した後も解き放たれた強制認識魔法は消えずに世界の狭間に残り・・・そして、一つの遠い平行世界へと降り注いだ。
その世界には魔法文明は存在していなかった。
そんな世界で魔法を認識させる為には魔法の存在以外にも認識させる事が必要だと判断され、強制認識魔法は魔法の使い方までも全世界の人間に認識させた。
・・・この時が、第97管理外世界『地球』に、ミッドチルダ式でも近代・古代ベルカ式でもない完全な幻想による魔法、精霊魔法が誕生したのだった。
世界中に魔法が認識されて最初に起こった事は、魔法を使える人間と使えない人間の調査だった。
魔法という括りの中には細分化すると『魔力』と『気』の二種類の力が存在しており、それを持つ人間と持たない人間が確認されたのだ。
魔法の力を持つ存在は各所で優遇される事となり、また、それぞれの霊地・霊脈等のパワースポットの管理なども任されるようになる様になった。
また、魔法発動体を作る為の材料もそのパワースポットに存在する魔力を帯びた鉱石や植物で作られる為、管理人はその守護も任される様になった。
調査が進むに連れてすぐ『気』に関しては魔法発動体を必要とせずに済む事が判明し、『気』の持ち主は優先的に優遇される事になった。
その力は主に警察や護衛等の守護に使われるようになり、莫大な給料も得られる為、魔法が認識されるまで裏の世界で活躍していた者達も足を洗って表に出る事があった。
同時にその者達の情報により非合法組織の壊滅も進むようになり・・・何の因果か、強制認識魔法が本来使われる筈だった世界が目指していた『魔法で世界を平和に』という目標に大きく前進したのだった。
更に研究が進み、ごく一部の者であるが、魔法発動体を必要とせずに魔法を使える存在がいる事が判明した。
その存在達は特異な体質の持ち主だったり、体内・・・胸の部分に霊的機関が存在する事が判明する。
・・・この事実が判明して暫くして、『夜の一族』と呼ばれる血脈が裏から表舞台へと現れたのだった。
栗色のツインテールをパタパタと揺らしながら、少女は父が入院している病院へと走っていた。
少女の名前は高町なのは。何の変哲も無い、あえて特筆するならば元気で可愛らしい、普通の少女だった。・・・つい、先ほどまでは。
父の入院によって家族が大変な事になり、それが原因で一人寂しく家で、しかし家族に迷惑をかけない様にいい子にしていたなのはは悲しんでいた。
自分も家族の助けになりたい。お手伝いがしたい・・・しかし、家族はまだ幼いなのはにそんな事をさせる訳にもいかず、その想いは叶う事は無かった。
自分は何も出来ないのか、迷惑をかけない様に大人しくしているしか無いのか・・・そう泣いていた時に、突然起きた、世界中で起こった強制魔法認識現象。
その瞬間、彼女は自分の魔力と、それを魔法発動体無しに行使する為の霊的機関・・・リンカーコアを持っている事を理解し、すぐさま玄関から家を飛び出し走り始めた。
「まほう、まほうでなのはがおとーさんをたすけるの!」
強制認識で得た魔法知識から身体強化を拙いながらも感覚で行使し、ひたすら病院へと走る。
何時もより軽い体、自分が怖くなる程の凄まじい魔力、魔法の凄さ・・・それを心の何処かで感じながらも、なのはは父親を助ける為にs病院へとひたすらに走り続けた。
息を切らしながらも病院に到着すると、そこでも魔法認識によって大きな騒ぎが起こっていた。
魔法を使えるものはいないか、魔法発動体になる様なものは存在していないか、魔法を使えば病気も治せるのではないか。
そんな騒ぎを視界に移しながらなのはは父親の病室へと走る。
・・・途中、魔法を使っていたショートヘアの車椅子に乗った少女が居た気がするが、それになのはは気付かなかった。
病室に着いたなのはは、寝たきりの父親の横に立った。
成功するか分からない、身体強化は成功したが、治療魔法には詠唱が必要だ。まだ幼いなのはの下では発音が上手くいかない可能性もある。
それでも、父親を助ける為に集中し・・・心の中に浮かんだ呪文を始動キーに、魔法を唱えた。
「リリカル・マジカル・・・治療(クーラ)!!」
季節は春。なのはは夜中に、海鳴に降り注ぐ不思議な魔力を感知した。
数は20個か、21個か。ともかく結構な数の何か。まだ幼いながらも海鳴の魔法使い筆頭であるなのはは、これをそのまま放っておくわけにはいかない。
「お父さん!」
「ああ、分かってる。恭也、なのはと一緒に行ってくれ。月村の方には俺が連絡しておく」
「わかった」
「私は?」
「美由紀は留守番だ」
「了解」
急いで準備を済ませて家を出る。途中で念話を用いて同じ魔法使いであり友人の八神はやてに連絡を取り合流する。
おそらく連絡を受けた月村は夜の一族の力を駆使して調査をしている筈なので、手早く現地調査をして報告するべきだろう。
・・・そして一番近い魔力の元へと急行すると、突如その魔力が爆発的に増加。同時に、突如現れた魔力を持つ何者かを感知した。
急いでその場へと向かうと、そこには黒い化物と、それを相手に苦戦している異国風の少年が一人。
「魔法の射手!光の5矢!」
「魔法の射手!闇の5矢!」
なのはの光の矢とはやての闇の矢、合計10本の魔法の射手を受けた黒い化物は大きくその体を欠損させ、その場でもがき苦しみながら再生していく。
三人は苦い表情を浮かべた。この化物は、ただ倒すだけではどうしようもない事を理解したからだ。
おそらく封印系統の魔法が必要なのだろうが、強制認識で得た魔法知識はあれど試した事が無いので効果に不安が残る。何より、自分たちが使っている精霊魔法の魔力とは違う神秘を感じないこの化物に、普通の封印魔法が通用するのか。
そう頭を悩ませていると、先ほど助けた少年が絶句しているのを発見する。
「デバイスも無しに魔法を・・・いや、あんな魔法は見たことも無い。そもそもここは管理外・・・魔法が存在しない筈じゃ!?」
「えっと、何だかよくわからないのですが・・・」
「とりあえず、アレの封印はどうしたらええか教えてくれへん?」
「封印が破壊に徹するしかないんだろうが・・・」
こうして、未来に向かうプログラムの魔法と、過去へと向かう神秘の魔法が初めて接触を果たした。
この先の少女達に待ち受ける戦いは一体どの様なものになるのか・・・それは、元ある歴史が変わってしまった今では、誰にもわからない。
今更ですが続き期待
投稿 美潮 | 2011/02/15 22:00