ある日の貧乏家族の生活
これは、とある貧乏な家族の話。
―その1・ラーメン―
「とうとう米も無くなったわね…」
とあるオンボロアパートにするとある家族の母親は、とうとうこの時が来たかと溜め息を溢した。
低収入・借金まみれ・それなりに大家族というこの家の台所を預かる1人として、米が尽きたのは真に由々しき事態である。
米さえあれば焼飯だの塩ご飯だのと何とでもなるのだが、それも最早夢のまた夢。
お金の無い我が家としては米を買うことすら大変なのである。
「何か…何か無いものかしら…」
悪あがきをする様に台所にある棚を漁る母親。
しかし小麦粉すらも見当たらないという末期段階である。
いよいよ雑草でも食べなければならないかと諦め始めたその時―――
「こ、これは!?」
母親はそれを見つけ、あまりにもあんまりな夕飯を考え付いたのだった。
時は夕飯時。
狭い居間にはちゃぶ台を囲むようにして、複数の人物が並んでいる。
祖父・祖母・母親・母兄弟4人・娘の8人家族である。
父親は紆余曲折を経て別れており、それもまた貧乏の原因になっている。
そんな大家族が呆然と眺めているちゃぶ台には、大きな大きな鍋が1つ。
「…とうとうお米が無くなったわ」
それを聞いた家族の全員が、成程、と納得してしまった。
最後の補給物資である米が無くなったのなら、この惨状と言っても過言ではない夕飯も致し方ないと考えたのだ。
「そして戸棚を漁ったら奇跡的に出てきたのが…コレ」
ガサゴソとエプロンのポケットから取り出したるは、プラスチック製の袋―――インスタントラーメンの袋。
「姉さん、つまりこれは…」
「ええ」
巨大な鍋。
微妙に色付いている大量の液体…否、スープ。
そしてアホみたいに膨れ上がっている、細長くなる筈だった麺。
「今日の夕飯はこの伸び伸び育ったインスタントラーメンよ」
その瞬間、家族全員は絶望した。
―その2・レンジ―
珍しく多めの収入があり、それでも一般的には少ないのに「これ多すぎじゃね?」と思ってしまった母親。
兄弟達や祖父母と相談した結果、幼い唯一の娘に好きなものを食べさせてあげようという話になった。
「はい、お金。これで貴女の食べたいものを買ってきなさい」
「なんでもいいの?」
「ええ。食べたいなら何でもいいわよ。買えるならだけど」
「うん!わかった!」
そうして少女は満面の笑みを浮かべて元気良く外へ飛び出していった。
「これくらいしか出来ないなんて…もう少し、収入があったなら…」
悔やんでもどうしようもないのが世知辛い現代なのである。
スーパーへとやって来た少女は、早速食べたいもの探しを始めた。
果物・魚・肉…色々と見て回るが少女は悩みながらも手に取らない。
そしてそのままスーパーを1周してしまう直前で、少女はある物を見つけた。
「これなら…うん!」
少女が帰宅し、買ってきた物を母親に見せると母親は愕然としてしまった。
「これだったらのこしてもだいじょーぶだし、みんなでたべれるよね?」
「…っ!」
少女が買ってきたのは冷凍食品だった。
そう、少女は自分の好きなものではなく、みんなで食べられる保存食品を買ってきたのだ。
母親は少女に見えないように涙を溢した。
娘にこんな事を考えさせてしまうなんて、と。
…更に言うと、この家には電子レンジなんて高価なものは無かったのである。
いたいけな少女の優しさが生んだあまりの悲劇に、母親の涙は止まらなかった。
少女が外に遊びに行き、そろそろ夕飯時となる時間。
母親は、隣の家の住人に頭を下げていた。
「お願いします!電子レンジを、電子レンジを貸してください!お願いします!!」
「あ、あぁ…わかりました。わかりましたから頭を上げてください」
涙ながらの懇願に隣の住人は半ば引きながらも快諾し、その日の夕飯には暖かな冷凍食品が並んだ。
それを見た少女はまた、満面の笑みを浮かべたのであった。
―その1・ラーメン―
「とうとう米も無くなったわね…」
とあるオンボロアパートにするとある家族の母親は、とうとうこの時が来たかと溜め息を溢した。
低収入・借金まみれ・それなりに大家族というこの家の台所を預かる1人として、米が尽きたのは真に由々しき事態である。
米さえあれば焼飯だの塩ご飯だのと何とでもなるのだが、それも最早夢のまた夢。
お金の無い我が家としては米を買うことすら大変なのである。
「何か…何か無いものかしら…」
悪あがきをする様に台所にある棚を漁る母親。
しかし小麦粉すらも見当たらないという末期段階である。
いよいよ雑草でも食べなければならないかと諦め始めたその時―――
「こ、これは!?」
母親はそれを見つけ、あまりにもあんまりな夕飯を考え付いたのだった。
時は夕飯時。
狭い居間にはちゃぶ台を囲むようにして、複数の人物が並んでいる。
祖父・祖母・母親・母兄弟4人・娘の8人家族である。
父親は紆余曲折を経て別れており、それもまた貧乏の原因になっている。
そんな大家族が呆然と眺めているちゃぶ台には、大きな大きな鍋が1つ。
「…とうとうお米が無くなったわ」
それを聞いた家族の全員が、成程、と納得してしまった。
最後の補給物資である米が無くなったのなら、この惨状と言っても過言ではない夕飯も致し方ないと考えたのだ。
「そして戸棚を漁ったら奇跡的に出てきたのが…コレ」
ガサゴソとエプロンのポケットから取り出したるは、プラスチック製の袋―――インスタントラーメンの袋。
「姉さん、つまりこれは…」
「ええ」
巨大な鍋。
微妙に色付いている大量の液体…否、スープ。
そしてアホみたいに膨れ上がっている、細長くなる筈だった麺。
「今日の夕飯はこの伸び伸び育ったインスタントラーメンよ」
その瞬間、家族全員は絶望した。
―その2・レンジ―
珍しく多めの収入があり、それでも一般的には少ないのに「これ多すぎじゃね?」と思ってしまった母親。
兄弟達や祖父母と相談した結果、幼い唯一の娘に好きなものを食べさせてあげようという話になった。
「はい、お金。これで貴女の食べたいものを買ってきなさい」
「なんでもいいの?」
「ええ。食べたいなら何でもいいわよ。買えるならだけど」
「うん!わかった!」
そうして少女は満面の笑みを浮かべて元気良く外へ飛び出していった。
「これくらいしか出来ないなんて…もう少し、収入があったなら…」
悔やんでもどうしようもないのが世知辛い現代なのである。
スーパーへとやって来た少女は、早速食べたいもの探しを始めた。
果物・魚・肉…色々と見て回るが少女は悩みながらも手に取らない。
そしてそのままスーパーを1周してしまう直前で、少女はある物を見つけた。
「これなら…うん!」
少女が帰宅し、買ってきた物を母親に見せると母親は愕然としてしまった。
「これだったらのこしてもだいじょーぶだし、みんなでたべれるよね?」
「…っ!」
少女が買ってきたのは冷凍食品だった。
そう、少女は自分の好きなものではなく、みんなで食べられる保存食品を買ってきたのだ。
母親は少女に見えないように涙を溢した。
娘にこんな事を考えさせてしまうなんて、と。
…更に言うと、この家には電子レンジなんて高価なものは無かったのである。
いたいけな少女の優しさが生んだあまりの悲劇に、母親の涙は止まらなかった。
少女が外に遊びに行き、そろそろ夕飯時となる時間。
母親は、隣の家の住人に頭を下げていた。
「お願いします!電子レンジを、電子レンジを貸してください!お願いします!!」
「あ、あぁ…わかりました。わかりましたから頭を上げてください」
涙ながらの懇願に隣の住人は半ば引きながらも快諾し、その日の夕飯には暖かな冷凍食品が並んだ。
それを見た少女はまた、満面の笑みを浮かべたのであった。
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