毎月払う家賃。安くても3~4万円、高い場合には20万円近くにもなるこの費用を、クレジットカード払いできたらどれだけポイントが貯まるかわかりませんよね。なのに出来ないことのほうが圧倒的に多い(どこも銀行振替のみ)。
これってなんでなんでしょうか?今回はそんな家賃のクレジットカード払いについて、書いてみたいと思います。
家賃がクレジットカード払い出来ない理由:
家賃がクレジットカード払い出来ない理由、それは家主さんがクレジットカード会社に対して手数料を払うと損なためです。
通常、家賃に限らずすべてのクレジットカードが使えるお店では、みなさんがクレジットカード払いをすると、加盟店手数料と呼ばれる費用をクレジットカード会社に対して払います。この費用は利用金額に応じて◯%といった形で定まっているため、少額だから高いとか、高額だから安いということはありません。
この比率はお店の規模や売上高によって変わっていて、だいたい一般的な店舗では3~7%だと言われています。何%になるかの基準はやや複雑なので、また今度記事にしますが、家賃を仮にクレジットカード払いOKにするためには、5%以上の手数料が必要になることでしょう。
これを簡単に計算してみます。
例:家賃10万円の物件で、カード払いされた場合(5%)
10万円の家賃-5000円をカード会社に払う=9万5000円
上記例を大家さんの立場で考えると、現金振込であれば10万円の家賃が貰えるところをクレジットカード払いを導入すると、手元に9万5000円しか残らなくなってしまうことになります。言うまでもなく実質的な収入減です。
この費用を家賃に上乗せ出来るかどうか:
そのため、アパートやマンションなどの賃料を、クレジットカード払いOKにするためには、いかにこの5%を家賃に含めるかを考えないといけません。そうではないと大家さんとしては、わざわざクレジットカード払いを導入するメリットがないためです。
しかし、単純に家賃に5%を上乗せして、5%高い家賃設定にしてしまえば、同じ価格帯で借り主を募集している他の物件に負けてしまいます。当たり前ですよね、いくらクレジットカード払いが出来たとしても5%家賃が高いのであれば、5%安い物件のほうを選ぶのが人間というもの。わざわざ高いところを選ぶ人は稀です。
- 負け:クレジットカード払い出来るけれども5%高い家賃
- 勝ち:現金振替のみだが相場と同じくらいの家賃
結果、クレジットカード払いを導入すると家賃が高くなってしまうため、クレジットカード払いを導入したくても出来ない状況なのです。
クレジットカード払いが出来る物件にも注意を!
また、最近、若干ではありますが増えている、クレジットカード払いが出来る物件にも注意してください。下記のようなケースのほうが多いためです。
- クレジットカード払いは出来るけれども、指定クレジットカードでしか払うことが出来ない(オリコカードなど)。
- クレジットカード払いは出来るけれども、家賃の支払いについてはポイントが貯まらない。
- クレジットカード払いが出来るけれども、カード決済手数料を取られる(1000~3000円程度)
と、正直なところどのケースも、クレジットカード払いをすることで得られるポイントよりも、支出のほうが高くなってしまう場合のほうが多いかもしれません。更にそれらの物件は、最初から家賃が高めに設定されている可能性も否定できません。
結果、家賃をクレジットカード払いするくらいであれば、現金振替で今までどおり対応したほうがお得になってしまうのです(カード払いできない物件を選んだほうがお得)。
家主にもカード払い導入のメリットはあり:
ここまで、家賃をクレジットカード払いしてもメリットはない…ということを解説してきましたが、家主、つまり大家さんにとってもメリットがないことはありません。
それはクレジットカード払いを導入すると、家賃の回収作業がスムーズになるという点。クレジットカード払いをされた場合、大家さんは家賃を借り手からではなく、クレジットカード会社から貰うことが出来るようになるため、家賃の回収で苦労することがなくなるのです。これで、家賃をなかなか払ってくれない借り主に困ることがなくなります。
ただこれも、今やアパートやマンションの仲介業者にお願いすることがあれば苦労することも少ないので、それほど大きなメリットとも言えないのが実情です。
それでも家賃のカード払いは普及していく:
今後、クレジットカード払いが今よりももっと浸透し、現金払いよりも一般的になっていけば、家賃のクレジットカード払いもより一般的になっていくことでしょう。
そんな時、みなさんはカード払いが出来る物件に飛びつくのではなく、是非、『家賃に手数料が上乗せされていないか?』と冷静な判断が出来るようになってくださいね。常にカード払いがお得なわけではありませんよ。
コメントを頂いたので追記:
はてなブックマークで、id:nakex1さんより下記のコメントを頂いたので追記です。
カードに手数料がかかるのはすべての業種について言えること(価格に転嫁すると競争で不利になるのも同じ)なので,「手数料がかかるから」では他で使えて家賃では使えない理由の説明になっていないのでは。
確かにそのとおりですね、説明不十分。
個人的な見解では、下記の理由で不動産賃貸業では、クレジットカード払いが出来ないのだと思います。
- 加盟店手数料が高い…カード会社は貸し倒れを恐れて、不動産業の場合には手数料がどうしても高くなる
- 不動産賃貸は5~15%前後の薄利商売だから…5%の手数料を引かれてしまうと、残るものがほとんどない
アパマンなど、大口契約を結べているところでも、こればかりは手数料が高めに設定されていると思います(だからカード会社は独自カードを無理矢理作らせることで、家賃払い以外の他の利益を狙っている)。
このコメントはわかりやすい:
すごくわかりやすいコメントを頂いたので、こちらも掲載させていただきます(id:richest21さん、有難うございます)。
同じ1万円だとしても、家賃は食品や衣料品と違うんだよね。その1万円が払えないやつは「この先もきちんと払うことが見込めない貧困層(=ホームレス予備軍)」だから。貸し倒れリスクは比じゃない。
まさにおっしゃる通り。だからこそクレジットカード会社が設定する、家賃払い向けの加盟店手数料は、どうしても高めになってしまうんですよね。支払いが滞った瞬間に、貸し倒れになる可能性がダントツ高い。
今後、このあたりの新しい仕組みが出ない限りは、家賃払いのクレジットカード払いが、一気に普及していくことは考えにくいかもしれません(徐々には普及していきますけどね)。