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元幹部が語るサムスン 日本負かしたワクワク感創出力
サムスンの競争力、日本の競争力(1)

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2014/8/5 7:00
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日経テクノロジーオンライン

 日本のものづくりが韓国や中国に押されているのは、グローバル化の時代に必要な「何か」が決定的に欠けているためである。しかし同時に、日本企業は韓国や中国の企業が逆立ちしてもかなわないような強さを持っているのも事実である。1994年に韓国サムスングループ会長の李健熙(イ・ゴンヒ)氏に請われてサムスン電子(Samsung Electronics)に入社し、同社のその後の成長に大きく貢献した東京大学大学院経済学研究科ものづくり経営研究センター特任研究員の吉川良三氏に、日本のものづくりが再び繁栄するために必要なもの、もっと大事にすべきものなどについて、連載形式で解説してもらう。

 韓国サムスン電子は、1997年に韓国がアジア通貨危機により国際通貨基金(IMF)の救済を受けた際に、倒産の危機に瀕していた。そのわずか15年後の2012年には売上高17兆円、営業利益2兆5000億円(利益率14.7%)と非常に大きな変身を遂げた。

 最近でこそ高成長がやや一服しているとはいえ、半導体、携帯電話機/スマートフォン(スマホ)、テレビといった製品分野の世界市場で、日本メーカーを大きく凌駕する存在である。

図1 韓国サムスングループ会長の李健熙(イ・ゴンヒ)氏
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図1 韓国サムスングループ会長の李健熙(イ・ゴンヒ)氏

 こうした華麗な変身ができた最大の理由は、同社が2000年以来のグローバリゼーションの動きに的確に対応し、世界各地のニーズを満たす製品を造り続けてきたことにある。

 筆者は1994年から約10年間、サムスン電子に在籍し、同社が成功を収めるまでの過程を内部で直に見てきた(図1)。日本ではしばしば、ウォン安誘導や各種の優遇策など、韓国政府の国を挙げての支援にその要因を求める声が上がる。だが、それだけではこれほどの成功と、同時に生じた電機分野を中心とする日本メーカーの地盤沈下を説明することはできない。

 一方で、サムスン電子もまた多くの弱点を抱えている。今回の連載では、同社の事例を基に、日本メーカーが再び成長軌道を歩むために、どのような方向に進むべきかを考えていきたい。

■競争力は「安いこと」だけにあらず

 まずは、「競争力とは何か」を改めて考えるところから始めたい。というのも、多くの日本メーカーが今認識している競争力の定義では、今後の議論にずれが生じてしまうからだ。

 読者の皆さんは、競争力と聞いて何を思い浮かべるだろうか。ある企業で部課長クラスを対象に講義した際にこう問いかけると、ざっと9割の人が「コスト競争力」と答えた。恐らく、日本企業の技術者も経営者も、そのほとんどが「競争力=コスト競争力」という認識だろう。この認識では、サムスン電子の競争力もまたコスト競争力だという理解になってしまう。しかし、事実はそうではない。

 競争力とは、「選ばれる力」のことだ。製造業でいうと、自分の製品をユーザーに選んでもらえる魅力のことである。特に2000年以降、製品に対するユーザーの価値観は多様化している。そのため、例えばある人は機能で製品を選ぶかもしれないが、ある人は機能よりもデザインで製品を選ぶ。実際、こうした傾向は欧州で強く見られる。

 あるフランスメーカー製のブランド物のハンドバッグは、材料は軟質プラスチック製。恐らく原価4000~5000円と安価なものに20万円もの価格をつけて売っている。デザインが秀逸だというブランドが確立しているからだ。それが欲しいという客に、「うちが造ったハンドバッグは2万円とリーズナブルで品質も優れています」と持っていっても売れるわけがない。この事例は、必ずしもコストが競争力を決定しているわけではないことを端的に示している。

■ワクワク感があるか

 今日では、ユーザーが製品を選ぶ基準は多様である。機能で製品を選ぶユーザーももちろんいる。例えば、液晶テレビのバックライトにLED(発光ダイオード)を採用し、率先して大々的に売り出したのはサムスン電子だ。開発で先駆けたのは日本メーカーだが、価格が高くなるからと製品化では後手に回った。

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ものづくり、iPhone、サムスン電子、アップル、Samsung Electronics

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