すぐに市場へ戻ってセリに出す
網を揚げる作業は5時過ぎには終了し、船はセリが行われる市場へと移動する。
そして魚を船から下ろしながら、素早く魚種やサイズごとに分けていき、すぐにセリへと掛けられるのだ。
海で魚を獲ってから、わずか1時間後には買い手が決まって、次々にトラックで運ばれていくという無駄のないこのシステムも、定置網で獲れた魚が評価される理由なのだろう。
漁場である定置網から、あっという間に市場へと到着。この近さが鮮度のカギ。
獲れた魚を振り分けていく。個人的にはこの作業がとても楽しかった。
この日はサバとフクラギが大漁でした。
マダイ、イシダイ、メバル、マス、ウマヅラなども獲れた。
ホタルイカが1匹だけ混ざっていたので、内臓を抜いてそっといただく。そうだ、私はホタルイカを捕まえたかったのだ。
氷見には定置網がたくさんあるので、セリ人さんはそれぞれの水揚げをチェックした上で、魚を買い付けていく。
こんな感じで、セリが始まる6時にはお仕事終了。
お疲れ様でした、自分。
この日獲れた魚は、サバとフクラギがたくさんと、マダイやクロダイ、ヒラメ、ウマヅラハギなどが少々。定置網は獲れる魚を選べないので、いろいろな 魚が混ざる「混獲」となる。
ちなみにフクラギはブリの子供だけれど、寒ブリに比べると、びっくりするくらい安い。氷見だとスーパーで1匹300円とかで売っていたりする。
まだ仕事がありました
船が番屋に戻ってきて、本日のお仕事は終了かと思ったら、また船に乗って定置網へとやってきた。今度は魚の水揚げではなく、ロープについた貝や海藻を落としたり、時期によって獲れる魚が違うために網の微調整をおこなう、メンテナス作業の時間だ。
当たり前の話だけれど、魚を獲るだけが漁師の仕事ではない。
ロープにびっしりとついた貝やら海藻やらを掃除する。
これからの季節に多く獲れるクロダイが入りやすいように、網の形を少し変えるそうです。
そしてすべての仕事が終わったら、本日獲れた魚の一部を、分け前として乗組員全員に分配。これを「かぶす」というそうで、本日のかぶすはフクラギだ。
そして皆様のお計らいで、私もかぶすをいただくことができた。漁師としての初めての報酬をもらった気分である。ひゃっほー。
まさに一仕事終えた漁師っぽい光景ですね。
旅行中にフクラギ7匹もらってしまった。鮮度が命だから昼までに食べろとの指示をいただく。
友人から場所を借りて、刺身を振る舞わせていただきました。うまい。
ということで、これが私が体験した定置網漁のお話である。天気が良い日だったので、船の上はとても気持ちがよかったけれど、これが雨や雪の日だったら、相当辛いだろうなとは思う。でもまた乗ってみたい。
実際に漁の現場にでることで、感じることはやっぱりある。魚価の安いフクラギを獲らずに、何倍も高いブリになるまで待てないものかとも思うが、一度網に入った魚から、特定の魚種だけ元気な状態で出すというのは、やっぱり無理な話だろう。これはマグロにおけるメジマグロ(マグロの子供)でも同じ話かな。
フクラギやメジマグロが定置網で獲れてしまうのは、混獲という性質上仕方がないものであり、それであれば獲れてしまった魚をすべておいしく食べるべきだと思う。
水産庁幹部による「メジマグロを食べないでください」というお願いが一時期話題になったが、消費者側からの圧力でメジマグロばかりを狙って獲る漁を減らすことでマグロの資源を守ろうという狙いはわかるのだが、すべてのメジマグロが狙って獲られたものでもなはなく、混獲によって獲られて丁寧に処置されたものもある。スーパーなどで魚を買う際に、これがどのように獲られた魚なのか、情報として消費者にはなかなかわからないのが難しいところか。
定置網以外の漁については、私の知識が少ないのでなんとも言えないが、とりあえず私が体験した定置網漁のレポートである。
ちなみにフクラギは叩いてナメロウにするとおいしいと思う。
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関西では「ヨコワ」としてメジマグロがたくさん売られています。スーパーや居酒屋でよく見かけますので、かなりの流通量があると思います。混獲にしては多すぎるので専門の漁があるかもしれないですし、混獲だとしたら対策が必要なぐらいの漁獲量があると思います。