(2014年8月5日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ガザ地区への攻撃はやっと終わりつつあるが・・・〔AFPBB News〕
米ホワイトハウスの報道官が先週、イスラエルが国連運営の学校を爆撃したことについて「弁解の余地は全くない」と語るのを見た時、筆者は何か新しい状況を目撃したような気がした。米国がイスラエルをここまで強く非難したことはかつてなかったのではないか、と一瞬思ったのだ。
しかし、筆者よりも記憶力に優れた同僚に言われて思い出した。イスラエルが1982年に西ベイルートを包囲した際、ロナルド・レーガン米大統領(そう、あのレーガンだ)はイスラエルのメナヒム・ベニン首相に電話をかけ、イスラエルがやっているのは「ホロコースト(大虐殺)」だと非難した。
イスラエルの軍事行動により何万人もの一般市民が命を落とすのは今回が初めてではなく、世界各地から非難の声が上がるのも今回が初めてではない。
大きく変わる世界、延々と続くイスラエルとパレスチナの紛争
レーガンがベニンに電話をかけてから32年が経過した。その間にベルリンの壁は倒され、ソビエト連邦は崩壊し、中国は大きく変化し、アパルトヘイト(人種隔離政策)は終わり、インターネットは通信の革命をもたらした。
だが、イスラエルとパレスチナの紛争は果てしなく続けられてきた。インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)は2度、ガザへの侵攻は3度行われた。レバノンでも戦闘があり、数え切れないほどの和平交渉の試みが失敗に終わった。
ただ、イスラエルとパレスチナが血の流れる争いを続けている間に、その周囲の様子は急激に変化している。これらの変化のおかげでイスラエルは今のところ、国際的な非難に屈しにくくなっている。しかし長期的には、世界の力関係の変化を考えれば、イスラエルの将来は暗いものになると見られる。パレスチナと和平を結ばない場合は特にそうだ。
イスラエルは今のところ、過去の紛争でパレスチナ側の最大の支持者だったアラブ世界がバラバラになっているという状況から利益を得ている。
シリアとイラクは内戦に巻き込まれており、リビアも混乱した状況にある。エジプト政府は首都カイロで、ムスリム同胞団の支持者を多数殺害したうえに、ハマスを同胞団の分派だと見なしている。アラブ世界のもう一方の大国サウジアラビアも、ハマスには強い敵意を抱いている。