The Economist

汚職と経済:汚職撲滅運動は成長を阻害するか?

2014.08.06(水)  The Economist

(英エコノミスト誌 2014年8月2日号)

汚職撲滅キャンペーンの経済的影響を測定する。

中国の基準をもってしてさえ、万慶良氏が率いていた頃の中国南部・掲陽市の成長は目を見張るものがあった。フワフワした髪型の掲陽市のトップは私生活では倹約家の雰囲気を醸し出していた。2004年に万氏がその職に就いた時、同市経済の年間成長は4%だった。2007年には成長率は18%まで跳ね上がった。砂利道は舗装され、バナナの木々は伐採されて、跡地に高層ビルが建てられた。

 こうした業績のおかげで、万氏は急速に中国の政治階級を駆け上った。万氏は中国で最も裕福な省である広東省の副省長になり、その後、広東省の省都で中国第3位の大都市である広州市のトップとなった。

 しかし万氏の転落は、出世以上に急激だった。今年6月、捜査当局は広範囲に渡る汚職の容疑で万氏を訴え、万氏は姿を消した。住宅は一切保有していないと言っていた万氏は、少なくとも6億元(9700万ドル)に及ぶ利益誘導を不動産開発業の創鴻集団に対して行ったとされており、容疑はさらに広がっている。

 だが、地方経済の活力を高める方法を知っていた万氏の失脚は、習近平国家主席の汚職撲滅運動に対する疑問を浮上させた。汚職撲滅運動は成長の足を引っ張るのではないのか、という疑問である。

放置される建設プロジェクト、閑古鳥の鳴く高級レストラン・・・

 習主席の運動が残した傷跡は掲陽で見ることができる。創鴻集団が請け負っていた川沿いの複合ビル建設現場では、30階建ての高層ビルが建つはずだった場所の基礎部分に、竹製の足場が山積みになっている。建設作業は11階までで断念されたのだ。

 中国全土で高級品の小売業や高級レストランが、政府支出の無駄遣いに対する通達の影響を受けている。寒風はカラオケバーや売春宿にも忍び寄っている。愛人も辛い時代を迎えている。ある避妊具メーカーは、ここ数カ月で、中国のコンドーム需要が1日当たり100万個減ったと見ている。6月には、数年ぶりに、共産党幹部に人気の旅行先であるマカオのカジノ収入が減少した。政府がカジノ特区への現金の送金を難しくしたからだ。

 中国経済が今年初めにぐらついた時、1つの一般的な説明として、官僚が収賄容疑で訴えられないように、投資プロジェクトの承認を渋ったとされた。国営企業の幹部を務める一部高官は、政敵から物見遊山の視察旅行と言われることを恐れ、海外に出張したがらない。10年間にわたって力強い成長を遂げた後、中国企業による今年1~6月期の対外直接投資は前年同期比で5%減少した。

 企業は、より禁欲的な時代に適応している。現在、事実上政府関係者の利用が禁じられている5つ星のホテルは、自ら4つ星に格を落とした。会員制のダイニングクラブは、一般客に門戸を開いた。

 それでも汚職撲滅運動が中国経済に打撃を与えていると…
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