防衛白書:集団的自衛権の行使容認「歴史的に重要」
毎日新聞 2014年08月05日 10時55分(最終更新 08月05日 12時37分)
政府は5日午前の閣議で、2014年版「防衛白書」を了承した。安全保障政策では、集団的自衛権の行使を容認した7月1日の閣議決定を「わが国の平和と安全を一層確かなものにしていくうえで、歴史的な重要性を持つ」と評価した。また、海洋進出を強める中国が昨年11月、東シナ海上空に防空識別圏を設定したことに対し、「不測の事態を招きかねず非常に危険」と強い懸念を表明した。
集団的自衛権を巡っては、憲法9条のもとで行使は許されないという従来の政府見解に関する記述を削除し、行使容認の閣議決定を引用して今回の政策転換の正当性を説明した。わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃でも、わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由などが根底から覆される明白な危険がある場合には、必要最小限度の実力行使を認めるという「武力行使の新3要件」も明記した。
ただ、自衛権を行使できる地理的範囲は、今後の法制化作業に配慮し「必ずしもわが国の領土、領海、領空に限られないが、具体的にどこまで及ぶかは個々の状況に応じて異なる」と解説するにとどめた。
また、武器輸出三原則に代えて4月に策定した防衛装備移転三原則について、「防衛装備品の活用などによる平和貢献・国際協力に一層積極的に貢献する」と強調。「具体的な基準や手続き、歯止めを今まで以上に明確化し、内外に透明性を持った形で明らかにする」と理解を求めた。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設問題では、昨年12月に知事が公有水面埋め立てを承認したことを踏まえ、速やかに事業に着手する方針を示すとともに、政府が沖縄の負担軽減に「一丸となって取り組んでいる」と記述した。
一方、北朝鮮が「核兵器の小型化・弾頭化の実現に至っている可能性を排除できない」と初めて言及し、弾道ミサイルに搭載可能な段階に達したとの見解を示した。そのうえで「北朝鮮は体制を維持する不可欠な抑止力として核兵器開発を推進している」と非核化の難しさを指摘。北朝鮮による核・ミサイル開発を「より現実的で差し迫った問題」と分析した。
防衛白書の発行は、1970年に中曽根康弘防衛庁長官(当時)が創刊して以来、40回目。14年版は原則として6月下旬までの事象を収録した。【飼手勇介】