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全国の空き家率が過去最高。そろそろ今後の住み方を本気で考える時期に

総務省は2014年7月29日、2013年の住宅・土地統計調査結果を発表した。全国の空き家率は13.5%となり、過去最高を記録した。
 

この調査は総務省が5年ごとに実施しているもので、全国の住宅や土地の保有状況について調べるものである。
 2013年10月1日時点における全国の空き家数は820万戸と、前回調査(5年前)に比べ、63万戸増加した(率にすると8.3%)。また空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)は、13.5%と0.4ポイント上昇した。この数字は過去最高である。

 現在の固定資産税の税制では、住宅を撤去して更地にすると軽減措置が受けられなくなるため、相続した住宅をそのままにしているケースが多いと考えられる。空き家は火災などトラブルの原因になる可能性があるほか、治安面でもマイナスの影響がある。空き家にしておくことが有利にならない制度改正が必要だろう。

 だが空き家問題にはもっと大きな背景が存在している。それは人口の減少に伴う都市部への人口集中というマクロ的な動きである。

 日本はこれから急激な人口減少時代を迎えるが、その兆候はすでに顕著になっている。人口の減少スピードは高齢者よりも若年層の方が圧倒的に速く、若年層の労働力人口はここ20年で2割以上減少した。外食産業で深刻な人手不足になっている最大の理由は、若年層人口の急激な減少である。

 人口が減ってくると、広大な範囲に人が点在して生活するのは効率が悪くなってくる。このため、都市部への人口集中が加速し、維持が不可能になるコミュニティが出てくる。空き家増加の背後にはこうした大きな動きがあるため、目先の対応だけでは、この問題に対処することは難しい。

 人口問題に関する政府の有識者委員の報告書では、人口減少によって自治体の4分の1が消滅する可能性があるとしているが、状況はもっと厳しいという指摘もある。元総務大臣の増田寛也氏は、自治体の消滅危機は出生率を2以上に上げたとしても回避できず、地方からの人口流出に歯止めをかける政策が必要だとしている。

 ただ、人口減少社会において、都市部への人口集約は自然な流れであり、助成などを通じてこの流れを逆転させることが、果たして効果があるのか議論が分かれるところである。むしろスムーズな人口移動を支援する政策を実施した方がメリットが大きい可能性もある。
 日本の社会構造は、製造業を中心とした高度成長時代とは根本的に変わってきている。日本人は、これからどのような場所に、どのような住み方をするのか、真剣に考える必要があるだろう。

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