オーナーにとって入居付けの次にシビアになるのが家賃の滞納でしょう。家賃の滞納があると経理上では売上になって税金もかかるのに、そのお金が手元にないのですから深刻です。
しかし、オーナーさんが気にしているのは入居者の家賃滞納ではないですか?
ここでは入居者の家賃滞納よりも大ダメージとなる管理会社の滞納について紹介していきます。
目次
管理会社が家賃滞納なんてことがあるのか?
家賃滞納と聞くと入居者からの家賃滞納ばかりが話に出ていて管理会社からの家賃滞納の話などはほとんどきいたことがないのではないかと思います。しかし、管理会社が家賃を滞納するということは実際にあります。
家賃は一度管理会社のところに集まる
私たち不動産オーナーが管理会社に家賃の5%ほどの管理報酬を支払ってまでも管理契約を結ぶのには賃貸経営の過程で発生する様々な業務を委託して自分の作業負担を減らす目的があります。
そして様々な業務のうちでも家賃の集金代行委託による作業負担の軽減はとても大きな効用があります。
ただ、集金代行を委託するリスクもあるということを忘れてしまってはいけません。集金代行を委託すると入居者が支払った家賃は一度管理会社のところに集まることになります。そうして管理会社に集まったお金を管理会社がオーナーに支払うのです。
つまり、入居者が滞納をしていなくても管理会社のところで滞納するというリスクがあるのです。
オーナーは管理会社の滞納に対して無防備
「保証会社に加入した場合も連帯保証人が必要か?」でも紹介しているように、オーナーは入居者の滞納についてはかなりシビアに考える傾向があります。このため入居者の滞納に対しては連帯保証人を依頼したり、保証会社への加入を義務付けたりして滞納リスクを抑えようと対処しています。
しかし、管理会社の滞納についてはいかがでしょうか?おそらく多くのオーナーさんは管理会社に滞納リスクがあるということに気付いてすらいないというのが現状ではないでしょうか?
管理会社の滞納はどんな場合に起こるのか
管理会社の滞納は、システムトラブルか管理会社の業績悪化により起こります。
システムトラブル
管理会社は、数多くの物件を扱っているため、送金先のオーナーの数もそれなりに多くなります。さらに他の経費項目の支払いなどもあり、毎月の支払いを手作業で行うには相当な労力がかかるため、銀行の一括支払いシステムなどを利用して、毎月の支払いを半ば自動で行っています。
そして、このシステムにトラブルが発生することがまれにあります。こうしたシステムトラブルはその日のうちに解決するのが通常なので、支払いが遅れたとしても1日程度で深刻な滞納につながるものではありません。
管理会社の業績悪化
管理会社の滞納が深刻なものとなるのは管理会社の業績悪化による滞納です。管理会社も営利法人ですので経営の善し悪しがあります。そして業績が相当程度悪化してくると資金繰りの問題に悩まされます。
集金代行で入居者から集めたお金は本来オーナーに支払うべきものですが、管理会社の手元にあるうちは管理会社が自由に扱えます。普通ならオーナーに支払うこのお金も自社の資金繰りが間に合わないのであれば背に腹は代えられません。
オーナーにはシステムトラブルであったり、入居者の支払いが遅れているなど何らかの理由をつけて支払いを先延ばし、即時の支払いが必要なものへの支払いに充て、オーナーへの支払いは別の物件から回収した家賃を充てるなどの自転車操業的な資金繰りが行われます。
管理会社は毎月お金が入ってくる比較的安定したビジネスをしているので急な資金繰りの悪化は起きにくいのですが、それでもこうした事態が起こるのには次のようなパターンが考えられます。
多額のシステム入替などの多額の資金需要が発生
経営が比較的順調に行っていたとしても、何かしら大きな資金が必要となる事象が発生することがあります。その例としては多額のシステム入替などがありますが、こうした一時的な資金繰りの悪化が当初想定していた規模よりも大きくなってしまい、手元にある資金をとりあえず充当するということが考えられます。
空室対策能力の欠如による経営悪化
管理会社の業績は、中長期的には空室対策能力の有無にかかってきているというのが最近の傾向です。空室対策能力が欠如していればそもそものオーナーからの管理契約が減少するのに加えて、管理契約している物件から得られる管理報酬も減っていきます。
さらにそれを補う仲介業務でも売上が上げられないことになるため、空室対策能力の欠如は管理会社の業績にこれまで以上の大きな影響を与える状況になってきています。
他のリスクの大きい事業での損失発生
また、管理会社が通常の管理会社としての業務以外の業務を実施していてそちらで多額の損失が発生している場合も家賃滞納につながると考えられます。管理会社が管理業務以外をしてはいけないという決まりもなく、他にどのような事業を行っているかをオーナーから知ることは困難ですから、オーナーにとっては青天のへきれきという状況でしょう。
管理会社の滞納リスクを低く抑える工夫
ここまで管理会社の滞納リスクについてお伝えしてきましたが、実際にこのようなことが起きる可能性というのはこれまでそれほど大きくはありませんでした。
しかし、「30年後のアパート経営の環境-人口動向と着工件数からみる空室率」でも紹介しているようにこれからさき日本の空室率は増加していく一方で、管理会社の業績にそれに伴い悪化していく傾向が見られるようになると想定され、管理会社の業績悪化による滞納リスクは大きくなっていくと思われます。
こうした中、管理会社の滞納リスクを低く抑えるには下記のような方法が考えられます。
管理会社の質に応じて経営悪化のリスクを想定する
管理会社の滞納リスクの評価となると、結局は管理会社の将来性の評価と同じことで企業アナリストと同じような分析が必要となるためとても難しいのですが、管理会社を特徴ごとに分類して、それぞれのリスクを理解しておくのは有用です。
創業10年を超える管理会社
創業10年を超える管理会社は、これまで生き残ってきた実績があるため、本業で急に業績悪化が起こる可能性はそれほど高くはないと考えられます。しかし空室対策などにそれほど気を使わなくてもいい時代から営業しているので「不動産管理会社の問題点」で紹介したようなオーナーの利益よりも自社の利益を追い求め、オーナーに不利な内容の管理をする会社が比較的多い傾向があります。
創業3年から10年の管理会社
創業3年から10年の管理会社は規模はそれほど大きくはないことが多いでしょうが、事業基盤はそれなりに安定しているでしょう。事業基盤が揺るぐかどうかは創業者のモチベーションに左右されることが多い時期のため、業績数値よりも目に見えないモチベーションなどの部分を注視するといいでしょう。
創業1,2年の若い管理会社
創業1,2年の若い管理会社は、管理物件を増やすことに意欲的でオーナーによくしようとする姿勢が強いのがメリットですが、反面事業基盤はまだまだ弱いです。あまりにもオーナー有利な契約を多くしてしまい事業が立ち行かないなどの状況に陥っていないか、事業面の評価が重要です。何の工夫もなく大手がやっていることを値引きして受注しているような管理会社は中長期的にうまくいく可能性は低いと言えるでしょう。
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