数Vの積分計算について
数Vの積分は高校数学の王者ともいうべき存在であり、高校生にとって最後の高い壁として立ちはだかる。微分計算は、積・商・合成関数の微分法をマスターするだけで、ほとんどの関数を微分することができた。しかし、積分計算は、積・商の一般的な方法が存在しないため、それぞれの計算ごとに適切な変形や解法が必要となる。それまでに学習した様々な関数のあらゆる変形の知識を総動員して取りかからなければならない。ゆえに、それまでに基本を着実に積み重ねてきていない人は、大変な思いをすることになる。また、計算量が非常に多く、相当の計算力が要求される。とにかく、繰り返し問題演習をして、できる限り素早く答えにたどり着けるようにしておかなければ実戦では戦えない。
このページでは、積分計算の解法パターンを網羅する。これらのパターンは、基本として常に頭の中にあるようにしておかなければならない。逆に考えると、これだけおさえておけば、高校範囲の積分のほとんどは計算できるようになる。そもそも、高校範囲で積分できる関数は限られている。問題作成者の立場に立ってみても、高校範囲内で、そして試験時間内で解ける適度な計算問題を出題しようと思えば、これらの型にはまった問題にせざるを得ないのである。
このページにあるパターンを一通り認知した後で、実戦用の 数V積分計算ランダム演習 でどれくらい定着しているかを確認し、実戦的な力を養ってほしい。
暗記すべき積分公式:教科書の公式だけでは不十分だ!
公式暗記は絶対要件である。また、教科書・参考書・問題集では公式として扱われていないものの中にも、頻出するために公式として暗記しておくことが強く推奨されるものが存在する。できる限り暗記してほしい。
検索用 x^α 1/x 1/x^2 1/√x sinx cosx 1/cos^2x 1/sin^2x e^x a^x logx
積分計算の基本とポイント
最も基本的な型であるが、手こずる学生が少なくない。こういう問題でおさえるべきポイントをしっかりおさえているか否かが、より複雑な問題になったときに、応用できるか否かの差になるのである。また、教科書では習わない公式の暗記の重要さをわかってほしい。
検索用 (2x+3)^2/x^2 (√x-1)^2/√x (sin^2x+cos^2x)/sin^2xcos^2x
置換積分の基本手順とポイント
積分の2大技巧の1つ、置換積分法の基本手順とポイントを確認する。何を置換するべきかは徐々にわかってくると思うので、まずは手順をしっかり確認してほしい。
検索用 x(2x+3)^4 x^3(x^2-1)^4 2x^3(x^2+1)^2 x(2x+1)^3
置換積分の一種「1次式置換型」:置換せずに瞬殺せよ!
公式を1次式で置換しただけの関数は、瞬殺しなければ実戦では戦えない。必ず置換しないで求めることができるようにしておくこと。
検索用 sin(2x-3) 1/(2x+1)^2
置換積分の一種「微分形接触型」:最重要の置換の目安
全ての積分パターンの中で、トップクラスの重要さを持つ型であるが、教科書などでは扱いが非常に軽く、パターンともされていないため、そもそも型として認識できてない学生が多い。なんとなくで置換している人は、まずこの目安に従って置換することを心掛けよう。100%成功するこの型が認識できているか否かが、決定的な差となりうるのである。
検索用 xe^(x^2) x/√(x^2+1) logx/x sinxcosx/(1+sinx) x^2sin(x^3) e^(2x)/(e^x+1)^2 tanx/cos^2x
微分形接触型の一種「分子が分母の微分型」:置換せずに瞬殺せよ!
微分形接触型であるから、分母を置換して求めることも可能だが、そんな回りくどいことをしていては実戦で戦えない。分数関数を見かけたら、真っ先にこの型でないかを確認する癖をつけておこう。
検索用 x/(x^2+1) (e^x-e^(-x))/(e^x+e^(-x)) sinx/(cosx-1) x^2/(x^3+1) e^x/(e^x+1) 1/xlogx sin2x/(sin^2x+1)
微分形接触型の一種「微分形接触累乗型」:置換せずに瞬殺せよ!
微分形接触型であるから、置換して求めることも可能である。他の型に比べて、「出題頻度が低い」「見抜くことが難しい」といった理由から、この型を認識した上で求めているのは、数学が得意な学生がほとんどだろう。しかし、置換しないで瞬殺するほうが速いのは言うまでもない。できる限り意識し、問題演習もして、この型に慣れておいてほしい。
検索用 sin^4xcosxdx x^2/(x^3+1)^2 tan^3x/cos^2x (logx)^2/x
部分積分@:(整関数)×(指数関数)型と(整関数)×(三角関数)型
部分積分法で求める積分の1パターン目である。ほとんどの場合、部分積分の型を見抜くこと自体は容易である。しかし、変形が紛らわしく、非常に間違えやすい。とにかく理屈よりも、問題演習を繰り返して、計算手法に慣れることが大事である。
検索用 xe^x x^2e^x x2^x xsinx xcosx
部分積分A:(整関数)×(対数関数)型
1パターン目とは、何を微分形と見るかが違うだけであるが、実際に問題を解こうとすると、落とし穴になる点も多く、慎重に計算しなければ正答にたどりつくことが意外に難しい。少しでも楽するために、logxの積分は公式として暗記しておくべきである。また、この型と混同しやすい型があるので、注意してほしい。
検索用 xlogx x^2logx log(x+1) logx/x^2 (logx)^2 (logx)^3 (logx)^2/x 1/xlogx
部分積分B:(指数関数)×(三角関数)型
2回部分積分して同型を出現させるのが基本だが、ペアで考えて微分から逆算するという方法が非常に強力であり、お勧めである。
検索用 e^xsinx e^xcosx
分数関数(有理関数)の積分:分子の次数下げと部分分数分解
分数関数の積分では、2つの変形(分子の次数下げと部分分数分解)ができなければならない。この2つの変形は既に学習済みのはずだが、最初の学習時には扱いが軽く、重要さがわからないまま終わってしまうため、積分で出てきたときには忘れてしまっている学生が多い。忘れた人は、先に 分数式の重要変形A:分子の次数を分母の次数より低くせよ! と 分数式の重要変形B:部分分数分解の基本と瞬殺する裏技 で確認してくること。
検索用 (x^3+x^2-1)/(x^2-1) (x-3)/(x^2-3x+2) (5x^2-x-1)/(x^3+1) 1/x^2(1-x) (2x^2+x)/x^3
無理関数の積分:分母の有理化と根号丸ごと置換
検索用 x/(√(2x+3)-√3) (x+1)√(2x-1)
三角関数の積分@:三角関数の相互関係の利用
まずは、三角関数の相互関係を利用して簡単に積分できる形にできないかを考える。tanxがからむものは、覚えておいたほうがよいだろう。
検索用 1/(1-cos^2x) (tanx+1)cosx tanx 1/tanx tan^2x 1/tan^2x 1/sin^2xcos^2x 1/sinxcosx
三角関数の積分A:2倍角・3倍角・積和の公式による次数下げ
実質2倍角の公式と同じだが、半角の公式の利用もあるだろう。とにかく、公式の暗記が絶対要件である。「導き方さえ覚えていれば大丈夫」という話もあるが、ただでさえ計算量が多いこれらの問題を、本番中に公式を導くところからやるのだろうか。
検索用 sinxcosx sin2xcos2x sin^3x cos^3x sin2xcos3x sin^4x cos^4x sin^6x cos^6x
三角関数の積分B:微分形接触型を目指して変形せよ!(最重要)
三角関数の積分の中で最も重要な考え方である。数Vの積分全体においても、三角関数の積分のこの方法は、トップクラスの重要さである。しかし、教科書や学校の授業における扱いは非常に小さい。そもそも、微分形接触型自体を型として学習していないのだから無理もない。下の解答のような視点で三角関数を見ることができるようになれば、数Vの積分の完成にかなり近づいているといっていいだろう。
検索用 sin^3x cos^3x sin^5x cos^5x cos2xtanx 1/sinx 1/cosx 1/cos^4x 1/(1+sinx) 1/(1-sinx) 1/(1+cosx) 1/(1-cosx) tan^3x
三角関数の積分C:三角関数の有理関数表示
難易度の高い手法であり、問われることも少ない。三角関数の有理関数表示は、できれば結果を暗記しておくことを推奨する。ここでは、変形の手順を簡潔なものにどとめたので、より詳細は 三角関数の媒介変数表示(有理関数表示) を参考にしてほしい。
検索用 tan^3x 1/sin^2xcos^2x 1/sinx 1/(1+cosx) 1/(sinx+cosx+1) (sinx+1)/(cosx+1)
指数関数の積分:ex=tとおけば、有理関数の積分に帰着する!
eax、e-axでできている関数の積分では、とにかくex=tとおけば、有理関数の積分に帰着させることができる。
検索用 1/(e^x+1) 1/(e^x-e^(-x))
対数関数の積分
対数がからむ積分は、置換積分か部分積分を用いることが多いが、対数の性質を使うと簡単な積分にできる可能性がある。積分ばかりに気をとられ、忘れがちになりやすい。常に注意を払っておこう。また、対数単独の積分は、部分積分する。
検索用 logx^3 log(x+√(x^2+1))
偶関数と奇関数の定積分
積分区間が対称な定積分は、被積分関数が偶関数・奇関数である場合、大幅に計算を簡略化できる。数Uの範囲の整関数ならば、仮に気付けなくてもそこまでの差はつかなかったが、計算量が多い数Vにおいては、気付けるか否かの差はとてつもなく大きい。偶関数・奇関数の判別がしっかりできなければならない。偶関数・奇関数の詳細については、偶関数と奇関数の概念:関数の対称性を常に意識せよ! で確認しておくこと。また、ここでの説明は簡潔なものにとどめたので、より詳細に説明した数Uの範囲の 積分区間が対称な定積分は、偶関数・奇関数の性質を利用して簡略化せよ! も確認しておいてほしい。
特殊な置換をする定積分@:√(a^2-x^2)を含む定積分は、x=asinθとおけ!
不定積分は(高校範囲では)できないが、定積分はできるという特殊なパターンである。暗記しておかなければならない。また、関数が円を表す場合、円の面積の一部と考えると、積分計算なしで値を求めることができる。必ず、見抜けるようにしておかなければならない。
検索用 √(1-x^2) √(9-x^2) √(16-x^2) 1/√(a^2-x^2) 1/√(1-x^2) 1/√(4-x^2) √(2x-x^2) √(ax-x^2) √x(a-x)
特殊な置換をする定積分A:1/(x^2+a^2)を含む定積分は、x=atanθとおけ!
不定積分は(高校範囲では)できないが、定積分はできるという特殊なパターンである。暗記しておかなければならない。分母が2次式のパターンも確認しておいてほしい。
検索用 1/(x^2+1) 1/(x^2+4) 1/(x^2-2x+4) 1/(1+x^2)^2
特殊な置換をする定積分B:√(x^2+a)を含む定積分(高難度)と特殊な置換の根拠
基本的な積分パターンの中で最高難度に位置づけされる。基本的には置換の誘導があるが、難関大学では誘導なしで出題されることもありえる。また、特に弧長の問題で、この型の積分が登場しやすい。いざという場合を考慮すると、公式として暗記しておくのも一法である。さらに、なぜこのような置換が思い浮かぶのかという理由に関しても、特殊な置換の発想が媒介変数表示にあることを知っておくとよい。
検索用 √(x^2+1) 1/√(x^2+1)