比較レビュー
マイクロフォーサーズ高倍率ズームレンズ3本(実写編)
タムロン、オリンパス、パナソニックを撮り比べ
北村智史(2014/8/5 08:00)
もともと、高倍率ズームは、ライトユーザー向けのお手軽レンズであり、写りへのこだわりが強い層にはおすすめできかねる製品だった。便利な分だけ欠点も多く、いろんな意味で、我慢しながら使わないといけないレンズだったのだ。
それが技術の進歩とともに、高倍率化しながら高画質化を果たし、さらに小型軽量化まで実現するという、普通では考えられないような進化を遂げてきた。もちろん、高級タイプの大口径ズームや、画質自慢の単焦点レンズと比べれば、多少の見劣りは避けられないものの、その差はずっと縮まっている。
ここでは、新しく登場したタムロンの14-150mm F3.5-5.8 Di III(Model C001)と、既存のマイクロフォーサーズ用高倍率ズームからオリンパスのM.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6、パナソニックのLUMIX G VARIO 14-140mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.の3本の実写性能をチェックしてみよう。
遠景
広角端(14mm)、中間域(46mmないし47mm)、望遠端(140mmないし150mm)のそれぞれ絞り開放と絞りF8で撮影したものをチェックした。カメラはオリンパスE-P5を使用した。
広角端の画角の差が思いのほか大きいのが驚きだった(望遠端にも差はあるが、気になるほど大きくはない)。
タムロン14-150mm F/3.5-5.8 Di III(Model C001)
広角端の画角が少し狭め。画面中央部は絞り開放でも良好な画質で、F8に絞ると、逆に回折現象の影響でわずかにアマくなる。
ズームの中間域ではF8に絞ったほうがよく、遠くのマンションのベランダの柵などもよく解像している。また、四隅の落ち込みも少ない。
望遠端は絞り開放から良好で、四隅も悪くない。周辺光量は、特に望遠端でほかの2本より多めに感じられたが、F8に絞ればあまり気にならなくなる。
オリンパスM.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6
他の2本に比べて広角端の画角が少し広い。タムロン14-150mmと同じく、広角端の中央部は絞り開放のほうが若干いい。画面四隅の画質の落ちは少なく、安心して使える印象。その分、倍率色収差が目に付く。
ズームの中間域は、絞り開放でもまずまずで、F8に絞ると四隅まできっちりシャープな描写になる。
望遠端も中間域と似た印象で、画面全体のシャープさを重視するなら少し絞ったほうがいい。周辺光量の低下はそれほど多くない。
ボケ
望遠端でのボケの違いをチェックしてみた。オリンパスE-P5を使用し、カメラ位置は変えずに、レンズだけ交換して撮影した。
スペックが近いこともあって、ざっと見たところでは違いはないといっていい。ピクセル等倍で、ピントが合った前後のボートにかかっているロープのボケを見比べると、オリンパス14-150mmだけややざわついたようなボケ方になっているのが分かる。
が、それ以外の部分では、大きな違いは見当たらないし、特に気になるところもなかった。
近接能力
望遠端の最短撮影距離で撮り比べたもの。カメラ位置を前後させて距離を合わせている関係で、背景の入り具合が違っている。カメラはパナソニックDMC-GX7を使用した。
スペックは3本とも0.5m(パナソニック14-140mmのみ、広角端は0.3m)だが、最大撮影倍率はタムロン、パナソニック、オリンパスの順で大きい。立体的な被写体では分かりづらいが、3本のあいだで解像力の違いはあまりないといってよさそうだ。
少しボケた部分を見比べると、タムロン14-150mmとオリンパス14-150mmは、エッジがにじんだようなハロが多めに見える部分があり、パナソニック14-140mmのほうがすっきりして見える。が、全体的な印象としてはどれも悪いボケ方ではないと思う。
耐逆光
フレアやゴーストの出具合やヌケの良し悪しをチェックしてみた。カメラはパナソニックDMC-GX7を使用した。
タムロン14-150mmは、太陽を画面に入れてフレーミングしたカットでもフレアはほとんどなく、ゴーストも見当たらないが、太陽を入れずにフレーミングしたカットでは、わりとはっきりした形のゴーストが発生している。
オリンパス14-150mmは、どちらの条件でもフレアが多く発生しており、ヌケの悪い仕上がりとなった。ゴーストも出ているが、フレアが多vいせいもあってあまり目立たない。
パナソニック14-140mmは、ゴースト、フレアともに少なく、非常にすっきりした画面に仕上がっている。太陽を入れずにフレーミングしたカットで、2か所ほど白点状のゴーストが見られるが、サイズも小さいので気になりにくい。必要なら簡単に消去できるだろう。
作品集
倍率を欲張っていないズームや単焦点レンズの画質と比べると、少しばかり見劣りはするものの、常用レンズとして十分に楽しめるシャープさだ。
望遠端で羽を休めているチョウに迫ってみた。初期の高倍率ズームの寄れなさ(最短撮影距離が2.1mとかだったような)を記憶しているだけに、隔世の感がある。
オリンパス14-150mmとE-P5の組み合わせでの重さは、バッテリーとSDカードを含めて680g。長時間の持ち歩きも苦にならないから、自然の中を散策しながらぱちぱちやるのにぴったりなのだ。
ピクセル等倍で見ると、後ボケに二線ボケ的傾向があるように思える。少々小うるさくもあるが、大きなサイズにプリントするのでなければそんなに気にならないだろう。
ほかの2本と同様、ピクセル等倍で見ると、もうちょっとキレが欲しいと思えるが、A4サイズ以下のプリントで見るなら十分な画質といっていい。
広角好きとしては、28mm相当の画角はかなり物足りないのだが、これで十分満足できる人も多いらしい。あとは明るい単焦点レンズや中望遠マクロレンズを組み合わせれば、ミニマムなシステムが組める。
まとめ
非常におおざっぱに断じてしまうと、3本の実写性能に大きな違いはない、というのが結論である。画面四隅の解像力や周辺光量の落ち方、わずかなボケ味の違いなどはあるにせよ、それが決定的なものとは思えない。
解像力は、オリンパス、パナソニック、タムロンの順となるが、強いて順位をつければ、という話であって、その差はとても小さい。周辺光量低下は、タムロンの望遠端だけがやや多めに感じられたものの(前玉径を抑えたのが影響しているのかもしれない)、F8に絞れば気にならなくなるレベル。ボケの差も、正直、良し悪しをいえるほどの違いはなさそうに思う。
ぶっちゃけ、「××な人には△△がおすすめ」みたいな結論が出せないのである。となれば、あとは使い勝手や好みで選べばいい、という話になる。ズームリングの回転方向だったり、回したときのトルク感、手に持ったときのバランス、見た目なども含めて検討していただくのがいいだろう。もちろん、お値段も重要なポイント。2本の純正に対して、劣るところがほとんどないにもかかわらず、実売価格で1万円以上安いのは魅力だ。
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