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統合失調症をかかえた人ほど、独り言に陥りやすい「オープンダイアローグ」という治療法

2014年8月5日 09時00分

ライター情報:米光一成

『精神看護2014年7月号』特集「オープンダイアローグ」

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「オープンダイアローグ」は、フィンランドで採用されている新しい統合失調の治療法だ。
どういうものか?
「薬を一切使わず、会話だけで治してしまう」というもの。
この方法を導入して、西ラップランド地方全体で統合失調症の発症率が下がったというデータもでたそうだ。
ええええー、会話だけでそんなに治癒するの?
にわかには信じがたい話だが、
『精神看護7月号』の「オープンダイアローグ」特集を読むと、ほんとうに「会話だけ」で進める方法らしい。

2014年3月24日に「オープンダイアローグって何だ?」が開催され、特集では、そのようすが再現されている。
そこで、斎藤環は次のように説明する。
“まず、「うちの子がちょっとおかしいんです」みたいな訴えがあると、24時間以内に必ずチームを組んで駆けつける”
そして、このチームが、“患者と患者にとって重要な人々(家族、友人、親戚、現場当医などその他の専門家)と共に集まって、車座で座り、そこで開かれた対話がなされるわけです”

「開かれた対話」というのはどういうものか。
これが、雑談をしている感じだというのだ。
“妄想的なこととか,変な声が聞こえるんですとか、そういう話も全部含めて何を言ってもいい。むしろ、そういう発言が大事なわけです。それに対して、参加者が必ずレスポンス(応答)をする”
最長で一時間半程度、それを毎日繰り返す。
良くなるまで、毎日会いにくる。

どうして、それで回復するのか?
対話が、「独り言(モノローグ)」を開くというのだ。
“統合失調症やそのほかの病理をかかえた人ほど、モノローグに陥りやすい”。
応えの返ってこない独り言を続ける。勘繰りがはじまってしまう。
この独り言を開くのが、「開かれた対話」なのだ。
“私はとにかく会話をさせます。すると、直接そのテーマを話し合っていないのに、お互いの考えが変わるんです”

「オープンダイアローグ」のコミュニケーションの作法として、3つの原則が紹介される。

・不確実性への耐性
曖昧な状況下では対話こそが迷宮から抜け出る手がかりだという考え方。何が起こるかわからない、どうなるかわからないが、そこに耐えて会話を続けていくことが大切だ。

・対話主義
“コミュニケーションが成立すれば、自ずから人は社会化される”という信頼のもと対話をつづけること。“誰にも通じないような妄想的な言葉を喋り続けていた人が、みんなに通じるような言葉にだんだんと変わっていく”ことを目指しているようだ。

ライター情報

米光一成

ゲームデザイナー/インターフェイスデザイナー/立命館大学映像学部教授/電子書籍部部長。ゲーム「ぷよぷよ」「BAROQUE」「トレジャーハンターG」の脚本監督企画担当。著作『仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本』『男の鳥肌名言集』等。宣伝会議編集ライター講座上級コース専任講師。
ツイッター/@yonemitsu
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