先週の金曜日、東京弁護士会の弁護士先生相手にプレゼンのティーチングを行ってきました。
弁護士先生相手に偉そうに講義するとかどうなんだ?という気がしますが、とにかく…その中でも少し話をしたのが
「日本語って結構ホワっとしてます」
という話。
実は皆さんが日常的に使ってる「伝わる」っていう単語は、大きく分けると2種類の意味がありましてね…なんて話をしながら『伝える』っていうことはどういうことなのか?どういう練習があるのかって話をします。単純に、アナウンサー訓練を実際に皆さんに体験してもらったりするくらいですけどね。理論が分かってるだけで、けっこうコツをつかめる人もいらっしゃるので。
って話は良いとして、その中で例の一つとして出したのが「面白い」って日本語です。
『面白い』って日本語にも、実は大きく分けると2つの意味が存在します。そこを少し突き詰めると、先週も書いた「なんでテレビが面白くなくなったか?」という問いに対する答えの一つが見えてくるように思えるのです。
日本語で単純に「面白い」って言っても、シチュエーションによって2タイプの状況があります。
・一つは「笑える」という状況。もう、コントとか見てゲラゲラ笑っちゃう。こういう状況だと、「面白い」って言います。
・もう一つは「興味深い」ってことです。「注意が惹かれる」「思わず見ちゃう」的な。NHKの「ダイオオイカ特集」とか、一つの笑いもないのに思わず見ちゃうでしょ?「面白かった」なんて言っちゃうでしょ?
英語では、いくつもの単語がちゃんとあります。
笑えるシチュエーションでは多く使うのは『funny』ですね。
興味深いことは『interesting』と表現するのが一般的だと思います。
他にも、日本語では「面白い」って言うシチュエーションでも英語だと、「amusing」「comical」「enjoyable」…状況や年代によって使う単語が違ったりするそうです。僕もそこまで詳しくはないものの、驚くことに、英語の表現は日本語よりもけっこう詳しくニュアンスを伝えるものって意外とありました。
(「敬語」って単語はないものの、敬語的な表現はありますしね。相手によってやシチュエーションによって単語が変わったり)
で、この視点から分析してみると、日本のテレビってどうして「つまらない=面白くない」って言われ始めてるか、分かる気がするのです。
まず
「昔のテレビは良いよね~」
「昔は面白かったよね~」
というご意見って、良く分かるし、そう言うのは簡単なんです。
「今はだめだな!」
的な。ですけど、じゃあそこまで、昔のテレビと今のテレビ、「本当に見てみると」違うかって話です。
いや、これはね、声を大にして言いたいんですけど…
皆さん、見てないでしょ?絶対。
見たら分かりますが…はっきり言って、そこまでのレベルの差って、正直…ないですよ?少なくとも僕はそう思います。時代にはそれぞれ、超ヒット番組って存在します。確かに。
「なるほど」とか、「ドリフ」とか、ええ、面白かったですよね。間違いないです。
じゃあ、「イッテQ」って面白くないですか?面白いですよね?笑えるし。思いっきり今の番組ですよね?
最近ではNHKさんでもコント番組とか始めてますけど、見てます?見てたらわかりますよね?今のコントも、はっきり言って「笑え」ますよね?
「つまらない」
って言ってる人…見てない人、多いでしょ?実はね、「本当に見たら」けっこう笑える番組、今でも多いんです。「見れば」ね?
じゃあなんでここまで「最近のテレビは面白くない」って言われるのか?
はい。答えは簡単です。
2つ目の「面白い」の意味である「興味深い=interesting」が完全に不足してるからなんです。要は「見ようって気が起きない」から「興味ないよね」を一言で「面白くない」って言っちゃってるケースが多いんです。
昔のテレビは面白かった~!
昔の人は偉大なんだ~!
って言うのは簡単ですけど、僕は現場を知ってます。
今の若手達の苦労も才能も良く知ってます。内部にいるときには昔のテレビの過去素材を山のように見てきましたけど…
そこまで、レベルの差なんてないですよ?
むしろ、昔よりも今の方がずっとちゃんと作ってることも多いし、今でも十分昔と同レベル以上のものくらい、作れてますよ?バラエティー番組だけじゃなくて、僕のやってた情報番組ってジャンルなんて…昔の情報番組、めちゃめちゃよ(笑)?とんでもないテキトーな作り、してたりします。ホントに。
でも「つまらなく感じる」のです。興味がわかないから。理由はたった一つと分析します。
恐らく、答えは「慣れちゃった」だと考えます。
日本人、昔はテレビからいろんな刺激をもらったと思います。でも、その刺激に慣れちゃったんです。なので、新しいものを出してもらわないと「面白い(興味深い)」って感覚にならないと思います。ニュース自体はネットでもう内容知ってるしね。もし今、僕の古巣が「面白くない」って言われているのだとしたら、それはきっと、
見たことのあるキャスト、見たことのあるスーパーの入れ方、見たことのある芸人さんの見たことのあるやり取り
だらけなので、「飽きちゃった」んだと思われます。(ガチで面白くない番組も多いけど…)
そしてその理由も、よく言われていることですけど、
「芸能事務所とテレビ局が仲良くなりすぎている」
ことが原因だと思われます。
これって、もっと具体的に言うべきだと思います。はっきり言わないと改善されないんです。ズバッと言いますと、
「『特定のテレビ局の上層部』が、『特定の芸能事務所』と仲良くなりすぎている」
ことが原因と言わざるを得ないんです。
僕は現在、芸能事務所とかに入ってないです。なので誰にも迷惑かけないのではっきり言いますけど、昔、僕がいた古巣ではある人物が、とても「いい役職」についたことがあったんですよね?もうね、はっきり言って時効だし、具体的に言わないと伝わりもしないので全部言っちゃいますけど、その人物は芸能事務所の大手、オスカーさんと大変「仲がいい」と言われている人物だったんですよね?
で、その人が下がどう逆らっても逆らえない立場に着いた後…
僕も担当していた朝の情報番組のキャスターがオスカーの菊川怜さんに決まり、ゴールデンのバラエティーの司会(「アンビリバボー」)がオスカーの剛力彩芽ちゃんに決まり、直後の月9のヒロインも同じく剛力ちゃんに決定。
チャンネルを回すと、宣伝のため、バラエティー番組のゲストもオスカーだらけ。もうね、何だってんだ?って状況になったことがあったんですよね。現場、みんなドン引きで。
菊川さん、全然悪くないじゃないですか?剛力ちゃんも、一つも悪くないんです。でも、とくだね!のスタッフ、みんなが押してるアナウンサーは当然いて、中野美奈子が辞める時に、スタッフはその頑張ってるアナウンサーを司会者にしてあげたがってたんです。実際に視聴者人気も高かった。
でも、トップダウンで、菊川さんに決まっちゃった。
なんで?って。スタッフ、みんな「あぁ、あの人が押し込んだんだね」って言ってました。
いや、もちろん証拠も何もないし、そうだって決めつけてる訳じゃないですよ?ただ、それが合ってても、合ってなかったとしても、少なくとも、現場の温度感は完全に無視されたことは確かでした。菊川さんは言うまでもなく何にも悪くないけど、あの時の現場の雰囲気はどっちらけでした。まぁ、昔の話です。もう今はとってもいい感じだし、そうなったから言えてる話でもあるんだけど。
剛力ちゃんもそう。もともとダンスをやりたくて、歌をやりたくて芸能を目指したと聞いています。なのに着いた番組がバラエティー番組の司会と「ビブリア古書堂の事件簿」のヒロイン。
でも、月9のヒロインが出来るような実力なんて、あの当時の剛力ちゃんに「十分ある」とは言えない状況でした。可哀想に。こないだの「極楽がんぼ」で更新されるまで、それまでの月9の最低視聴率をマークしてしまっていました。
剛力ちゃん、現場では絶大に評判のいい女の子なのに。「礼儀正しい」「可愛い!」。会った人、みんな絶賛するくらいなのに、ネット上では
「ごり押しアイドル」
ってあだ名までつけられて…。バッシングを受けまくって。
こんな感じで、現場は何が何だか分からないまま、「顔」になるようなタレントさんを押し付けられちゃったりすることは多々あります。みんな頑張ってるのに、頑張ろうが何しようが、そこまでされちゃうとどうしようもない。
断っておきますと芸能事務所、悪くないと思います。単に営業してるだけだし。
でも、テレビ局のトップクラスの何人かって、絶対に責任取らないでしょ?
ずっと同じ人がもう何年も変わらないんですよね。他の株式会社ではこうはなりません。バラエティーが失敗続きなら、バラエティーのトップの局長と執行役員は飛ばされないとおかしいんです。責任者なんだから。責任取るために高い給料、もらってんのに。でも、何故か飛ばされる人って「ちょっと下」の人たちなんです。トカゲと一緒。
ドラマがこけたんなら、ドラマの担当局長と役員は異動して当然なんです。でも異動しないんです。もう、何年も同じ顔ぶれだったりします。要所要所は。
なので、ずっと同じ人が上に居続ける状況が変わらないので…
ずっと、同じようなタレントさん、同じような芸人さんが使われ続けます。
そら飽きますよね。視聴者は。そもそもテレビ以外にもネットには多種多様な選択肢が広がっているので。そっち見た方が「新しい感」が出るんです。それを日本語で「面白い(興味深い)」って言っちゃうんです。
ただ、それに今のテレビ業界は気付き始めていると僕は思っています。
今年の「27時間テレビ」、言われている通り、はっきり言って大成功でした。視聴率的には、僕はもっと取ってもおかしくないほどの内容だったと思います。多くの方が「もう来年からずっとSMAPでいい」とおっしゃってるのも分かる気がしますが、あの番組には「面白い」と思わせる仕掛けがあったのです。
番組最初に、5人に対し、今まで「タブー」と言われていた質問をぶつけるシーンがありました。
SMAPと言えば、お堅いジャニーズの中でも、ある意味「聖域」。あれもダメ、これもダメの典型タレントさんです。それでこそ守られているものが多いので、僕はそれはそれでいいと思うんですが、今年の27時間テレビは「その聖域を打ち破るんだ」という「演出」をかけた。
いや、実際は守ってんですよ?木村さんの結婚生活の話とか、やってないでしょ?要所要所は守ってんですけど、でも、演出としては「何かをやりそう」感を最初に打ち出した。みんなも忘れてそうな、昔の話とかまで持ち出して、「今までと違う=新しい」感を最初に植え付けた。つまり「興味をそそられる=面白い」感を出すことに成功したのです。
裏を返せば、たったこの程度で、「面白く(見てみたく)」なるんです。飽きさせない工夫。新しいものを取り入れ、見たこともない光景と聞いたことのない言葉を紡ぐ。
今「面白くなくなった」と言われるテレビですが、そんなことないと思う。
詳しく分析すれば、ほんのわずかで全部ひっくりかえせると、少なくとも僕は思っています。
【関連記事】
・テレビがつまらなくなった訳
・一昨日のブログへのご意見
記事
- 2014年08月04日 05:30
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