3Dデータも「わいせつ」?
女性器アートVS警察の言い分
女性器の3Dデータは芸術なのか、わいせつなのか――。自らの女性器をスキャンした3Dデータをインターネットでダウンロードさせたとして、7月12日、警視庁保安課は、わいせつ電磁的記録頒布容疑で五十嵐恵容疑者(42)、通称“ろくでなし子”氏を逮捕した。わいせつ物の「3Dデータ」摘発は全国初。
警視庁担当記者が語る。
「3Dデータは3Dプリンターで印刷しなければ、“記号の羅列”に過ぎませんが、警視庁保安課は『2次元のわいせつ画像データだってパソコンに映さなければ記号の羅列。3次元にしても同じこと』との論理で立件したのです」
ろくでなし子氏は「女性器アート」を創作する芸術家・漫画家。自分の女性器を忠実に再現した立体石膏型に、装飾を加えた「デコまん」なるアート作品は国内外のメディアでも取り上げられ、最近では複数の週刊誌に登場。個展なども開いている。緑に塗った女性器のひだを草原に見立て、兵隊の人形を連ねてジオラマにしたり、真っ白に塗って「ガンダム」のフィギュアにしたり。劣情はあまりかき立てられない。
「今回は“女性器型ボート”を作る寄付を行った支援者に、3Dデータを提供したことが問われました。本人は『女性器は私の手足も同然。わいせつではない』と主張しており、捜査員も『芸術家というより思想家』と手を焼いているようです」(同前)
今回の逮捕で、ネットでは「表現の自由の侵害」として、釈放を求める署名運動に発展。弁護側も10日間の勾留を請求した検察側にかみつき、東京地裁は18日、弁護側の主張を認め、同日、ろくでなし子氏を釈放した。本人は即日、会見を開き、周囲も「不起訴か」と色めき立った。だが、
「問題なのは、この3Dデータが『アート作品』ではなく、加工前の女性器そのものの生データであること。昨年も、知人女性の性器をかたどって石膏型、通称『マンタク』を通信販売していた男がわいせつ物頒布罪で罰金数十万円の判決を受けるなど、性器そのものをかたどった場合は有罪となる判例が確立されている。芸術家を名乗る以上、生データではなく、アート作品を提供して寄付を募っていれば何の問題もなかった」
起訴に向け、捜査関係者は自信マンマンに語るのだった。