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大昔は日本にもこんな動物が生きていたんだ!という感動を覚える特別展『太古の哺乳類展』

2014.08.05 06:00
カテゴリ:特別展・企画展・イベントレポート

国立科学博物館で7月12日(土)~10月5日(日)に渡って開催されている特別展。

日本全国で産出した、国産哺乳類化石だけで構成された「日本の哺乳類の進化と絶滅」を学べる展示。

大昔は日本にもこんな動物が生きていたんだ!という感動を覚える特別展『太古の哺乳類展』
 

国産の哺乳類化石だけで構成された特別展

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国立科学博物館で現在開催中の特別展『太古の哺乳類展』に行ってきました。

日本で発掘された絶滅哺乳類の化石だけで構成された特別展で、まさに国立科学博物館で開催されるのにぴったりな内容となっております。

恐竜が闊歩していた中生代に生きていた小さな小さな哺乳類の化石から、ナウマンゾウやヤベオオツノジカなどのでっかい哺乳類まで、様々な化石が展示されていましたよ。

 

展示の概要は以下のような感じ。

恐竜時代の小さな哺乳類

まず最初の見所は、会場に入ってすぐのところに展示されている、恐竜の生きていた中生代に生きていた哺乳類の化石。中生代の陸生動物の化石が日本で見つかるってこと自体が凄いことなのに、哺乳類化石がしかも複数見つかっているなんてほんと凄いことだなあ、と陳列されている様を見て改めて思ったりしました。

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その中でもつい去年命名記載されたばっかりの、このササヤマロミス Sasayamamylos kawaii の下顎骨は特に見どころではないかなと思います。写真だと大きさがわかりにくいですが、ほんとに小指の先程度の小さくて、薄い化石なんですよね。これがよくこんなに綺麗に残っていたなあ、と。また、こんな小さな化石を綺麗にクリーニングした技術も凄いなあ、と。

このササヤマミロスは兵庫県の篠山市から産出した化石なんですが、個人的につい先日まで兵庫県民だったのでそういう意味でも思い入れがあります。学名の通り、篠山のカワイイ小動物だったんでしょう(※学名の kawaii は兵庫県立人と自然の博物館の名誉館長の河合氏にちなんだものです)。

他にも、石川県白山市や福井県勝山市、熊本県御船町と言った日本における有名な恐竜化石産地から見つかった中生代の哺乳類化石が一度に観られる超貴重な機会だと思います。

始新世の哺乳類化石いろいろ

さて、中生代が終わって恐竜が絶滅し、新生代に入ると哺乳類が多様化、大型化していくわけですが、そんな新生代の始新世~中新世の地層からは様々な哺乳類化石が見つかっています。

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左は始新世の汎歯類というグループのコリフォドン科の下顎骨。汎歯類は新生代に入ってすぐに反映した、哺乳類としては最初の大型植物食動物だったようです。そんな動物の化石も日本で見つかってるですねー。国内の化石産地として有名な、熊本県天草市で産出したそうです。

中央はクシロムカシバクの部分頭骨。名前の通り、北海道の釧路で見つかったそうです。大昔には日本にもバクが住んでたんですね。ちなみにこちらの化石は種の同定の基準となるホロタイプ標本。とても貴重です。

右は長鼻類(ゾウのなかま)ゴンフォテリウムの部分頭骨。こちらもホロタイプ標本。アフリカからユーラシア大陸にやってきた最初の原始的なゾウのなかまだそうです。ちなみに国立科学博物館の常設展示には、ゴンフォテリウムの完全な頭骨も展示されているので、見比べてみるのも面白いんじゃないでしょうか。

束柱類大集合!

国産の哺乳類化石と言えば、束柱類を外すことはできません。

束柱類とは、既に絶滅してしまっていてその子孫が地球上には全く残っていないグループに属する哺乳類。子孫が生き残っていないということは、具体的に参考にできる現生の動物が存在しないということで、束柱類の生態(水棲?半水棲?)や骨格の復元姿勢に関しては、様々な説がある興味深い動物です。

そんな珍しい動物なんですが、日本では多数の化石が産出しているという、ある意味「日本を代表する絶滅哺乳類」とも言えるのがこの束柱類。古生物を展示している全国各地の多数の自然史系博物館で、この束柱類に属するデスモスチルスやパレオパラドキシアの全身骨格を一体は見ることができます。

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こちらは束柱類の中でも最も古い時代に生きていたと思われるアショロア。日本でしか見つかっていない貴重な動物です。先述のデスモスチルスやパレオパラドキシアとは違ってそうどこにでも展示されているものではないです。しかも右の写真の頭骨や顎の骨は実物のホロタイプ標本。これは凄い。

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続いてはベヘモトプス。パレオパラドキシアの系統の原始的な種とのこと。このベヘモトプスも、見られる機会は非常に限られています。右の写真の頭骨等はベヘモトプスの日本固有の種 Behemotops katsuiei のホロタイプ標本。

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続いては定番の束柱類デスモスチルス。全身骨格の方を先ほどのアショロアやベヘモトプスと比べてみると、このデスモスチルスは四肢が真下に伸びていて、背が高い印象があると思います。これは古い説に基づく復元で、現在ではもっと四肢を横に張り出した姿勢だったと考えられているそうです。その辺も他の束柱類の全身骨格と見比べてみると面白いかも。

デスモスチルスは色んな博物館で見ることができますが、右の写真のブツはそうはいかない。世界で最初に発見されたデスモスチルスの頭骨で、日本特有の新種とされた Desmostylus japonicus のホロタイプ標本。これだけ束柱類のタイプ標本を勢揃いさせるなんてことは世界中でも日本でしかできないと言っても過言ではないんじゃないでしょうか? 凄い。

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続いて、デスモスチルスと並ぶ定番の束柱類パレオパラドキシア。左の写真は奥から「歩く」「泳ぐ」「食べる」という三種の姿勢で復元された全身骨格。後ろの壁には、埼玉で発掘されたパレオパラドキシアの産状(化石が発掘された状態)のレプリカも展示されています。この展示は埼玉県立自然の博物館の目玉展示がそのままの状態で再現されています。パレオパラドキシア単体では色んな博物館で観られるけど、この豪華な展示はやはりどこでも観られるというわけにはいかない。

右の写真は同じく埼玉県立自然の博物館で展示されている、般若標本と呼ばれるパレオパラドキシアの実物化石で組んだ骨格。こちらも超貴重なものだと思います。

ゾウもたくさんいるよ

国産の大型哺乳類化石といえば、ナウマンゾウをはじめとしたゾウのなかまも外せません。

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これはナウマンゾウの生体のオス・メスと幼体の全身骨格がずらりと並んだ展示。ナウマンゾウも色んな博物館で見る機会はありますが、オスとメスを見比べる機会なんてなかなかないですね。さらに幼体の全身骨格なんて超レアなんじゃないでしょうか。まあ幼体の化石は頭骨しか見つかっていなくて、頭部以外はアフリカゾウの幼体の骨格を参考に復元されたものだそうですが。

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他にもナウマンゾウの歯が生え変わる様子をわかりやすく解説した展示(左)や、ケナガマンモスと現生のアフリカゾウの全身骨格の比較展示のような派手なもの(右)などなど、ゾウの展示は非常に充実していました。

他にも大型絶滅哺乳類の全身骨格が沢山

束柱類やゾウのなかま以外にも、色んな大型絶滅哺乳類の全身骨格が展示されていて、展示の後半はなかなか派手な感じ。

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左はバイソンのなかまのハナイズミモリウシ。中央はニッポンサイ。日本にもサイがいたんだ!という見学者の声が各所で上がっていたのが印象的でした。右は沖縄の宮古島で発見されたミヤコノロジカ。角のイボイボがユニーク。

その他、多数のホロタイプ標本をはじめとする貴重な国産哺乳類化石が展示されている非常に面白い特別展でした。国産化石のみという親近感を覚える縛りの上に、哺乳類という身近な動物が題材なだけあって「日本にも昔はこんな動物がいたんだ!」という感慨のようなものを覚えやすい気がしますね。

あと、国産以外の絶滅哺乳類の化石等は国立科学博物館の常設展に凄まじい数が展示されていますので、そちらも併せて見学することを超お勧めします。

アクセス

JR上野駅を公園口から出て、徒歩5分程度。
公園口以外の出口から出ると、かなり遠回りをしないといけなくなるので注意。

上野駅へは東京駅から10分程度。

その他

コインロッカーあり。

食事は、地球館中二階のレストラン「ムーセイオン」(結構メニュー豊富)や、日本館地下一階のラウンジ内のカフェ(軽食)など。
上野公園近辺や上野駅近辺にも食事のできる場所はいくらでもあるので、困ることはない。

公式情報

公式サイト
http://www.honyu-rui.com/
住所
〒110-8718
東京都台東区上野公園7-20
TEL
03-5777-8600