05/08/2014
最近なにかと話題の「ネイティブ広告(ネイティブアド)」。
新しい広告のスタイルとして注目が集まる一方で、
「要は記事広告でしょ?」「これってステマなんじゃないの?」
といった誤解や不安も広がっています。
今回はネイティブ広告に関するよくある疑問や誤解を5つにまとめ、ざっくりと解説しました。
筆者も勉強中の身なので、もし間違っている箇所があれば @kknmsm まで
ご連絡をいただけますと、大変ありがたいです。
【回 答】
ネイティブ広告は、オンライン広告の手法の一つである。
特徴としては、(1) 広告枠を提供するメディアに、ブランド側がコンテンツを提供すること、
(2) メディア側がメインで発信しているコンテンツと同じフォーマットをとること などが挙げられる。
つまり、ニュースメディアであれば記事のフォーマットをとるし、SNSであれば投稿コンテンツと同じように表示するのである。
そのため、ネイティブ広告にはさまざまなフォーマットが存在する。
具体的には以下の6例だ。
フィード型の記事広告。SNSやモバイルサイトに適したフォーマットで、
コンテンツや投稿メッセージの間に表示する。
検索に連動する形式。Googleの検索結果に表示されるPR枠などがこれに該当する。
いわゆる「関連記事」や「おすすめの記事」に表示する形式。
ユーザーにとって価値のあるコンテンツを期待させることが重要となる。
Amazonのスポンサードリンクや食べログのPR枠など、商業系のリスティングサービスに
適したネイティブ広告のフォーマット。
記事や投稿には紛れていないが、広告枠に関連する文脈が表示されているもの。
上記の5つに分類できないもの。広告がメディアのメインコンテンツと同じフォーマットを
とっている点は同じ。音楽配信サイトにおける「プレイリスト」や、
企業とコラボしたLINEスタンプなどもこれに該当する。
フォーマットは違っても、コンテンツの中に広告が「自然に」とけ込んでいるのがネイティブ広告の特徴だ。
ここではあくまでも「ざっくりと」まとめていくので、
もっと詳しく知りたい方には以下のリンク集をおすすめする。
【参考リンク】
・ネイティブ広告とは何か? – loglyブログ
・Native advertising – Wikipedia
・【用語解説】ネイティブアド(Native ads) – ソシエタ
・リスティングもネイティブ広告!ネイティブ広告を識別するためのフレームワーク – loglyブログ
・「ネイティブ広告」の議論は、とっとと終わらせよう!――混乱を招く5つの誤解 – アドタイ
【回 答】
ネイティブアドって、記事のカタチをした広告なのではなくって、ブランド側のコンテンツをそのまま媒体のデザインに合わせて出すもの。なので、究極的には広告素材が存在しないという今までになかった広告。
— 高広伯彦 Nori Takahiro (@mediologic) July 29, 2014
従来の記事広告やディスプレイ広告との一番の違いは、ネイティブ広告は「広告」ではないという点だ。
ネイティブ広告は広告枠を提供するメディアがメインで発信しているコンテンツと
同じフォーマットをとるため(Q.1を参照)、中には記事の体裁をとったネイティブ広告もあるだろう。
しかし、ネイティブ広告は「広告『枠』のあり方」であって、「広告」や「コンテンツ」そのものではない。
また、記事広告がブランドのアピールに力を入れ、短期的かつ即時的な広告効果を求めているのに対し、
ネイティブ広告はブランド側のコンテンツそのものを、メディア側のフォーマットに合わせて提供する
(そのため、究極的には広告素材が必要ない)。
そして、大規模な特集記事や連載企画など、長期的な視点を持ったコンテンツを掲載していく。
このように、記事広告とネイティブ広告は似て非なるものである。
しかし、こと日本の現状においては、ネイティブ広告が記事広告やステマと誤解されやすい状況にある。
それは、「誰が」ネイティブ広告のコンテンツを作るのか、という点において、
それぞれのブランドやメディアの間で解釈が分かれているためだ。
米国などでは概ねブランド側がネイティブ広告のためのコンテンツを用意し、
メディア側は広告枠を提供するだけである。
ところが、日本ではメディア側が制作したコンテンツや、
ブランドとメディアがコラボして制作したコンテンツもネイティブ広告と解釈されている。
そのため、記事広告やステマとの違いが曖昧になっているのである。
その原因はブランド側のコンテンツ制作能力が低いためだと言われているが、
ネットの広告技術によってメディアの収益が下がった昨今、
コンテンツ制作がメディア側の収益確保に繋がるということもあり、この構図は当分変わらないと思われる。
本来、ネイティブ広告は「ステマ」でも「やらせ」でもどっちでもない。なぜなら基本的には企業側が自ら作り上げたコンテンツを広告枠に出すものなので。しかし現状は媒体側の制作チームに作らせるケースが多いため、ネイティブ広告=ステマ、記事広告といった誤解が生まれている。
— 高広伯彦 Nori Takahiro (@mediologic) July 29, 2014
【参考リンク】
・ネイティブ広告最前線 ネイティブ広告とは一体なんなのか? 日経BP Mobile and Socila Media Week 2014 – slideshare
・記事にそっくり「ネイティブ広告」 定まらぬ線引き – 日本経済新聞
・「ネイティブ広告」って何?現状と近未来、課題と注目プレーヤーをまとめる – BLOGOS
【回 答】
ステマ(ステルスマーケティング)とは、
「口コミサイトやブログ記事などで、広告宣伝と気づかれないように
商品やサービスを推し、売り込むこと」である(『現代用語の基礎知識 2014』)。
つまり、通常のコンテンツを装っており、かつ広告であることが
どこにも明示されていないことがステマの条件だ。
一方、ネイティブ広告は広告であることの明示がルールになっている。
米国に拠点を置くインターネット広告の業界団体
IAB(Interactive Advertising Bureau)が発行するガイドライン
「ネイティブアド・プレイブック」には、ネイティブ広告を評価する
6つのフレームワークが規定されている。
その中の一つ「DISCLOSURE:広告であることの明示」は、
ネイティブ広告の倫理規定のようなものだ。
ユーザーが広告だと気づくように「AD」「Promoted」「Sponserd」などの表記を義務づけ、
ステマや「釣り」にならないよう広告主に注意を呼びかけている。
2014年8月現在、日本にはプレイブックのような基準が存在しないことから、
「DISCLOSURE」はブランドとメディアの倫理観に委ねられている。
広告であることを隠してユーザーを騙すような行為は、そのブランドのイメージだけではなく、
広告枠を提供するメディア側のイメージも悪くなる。
基準が登場するまでは、日本のマーケティング界の良心を信じるしかない。
【参考リンク】
・THE NATIVE ADVERTISING PLAYBOOK – IAB(日本語版はこちら)
・ネイティブアドと記事広告って何が違うの? - インフォバーン総研
【回 答】
背景には、HTML5の登場やスマホの普及といったメディア環境の変化や、
宣伝色が強い広告を忌避するようなユーザー意識の台頭によって、従来型の広告では
うまくいかなくなってきたという事情がある。
そのため、ユーザーの邪魔にならず、かつユーザーにとって有益な情報を提供するような
広告コンテンツが求められたのだ。
ネイティブ広告は、ユーザーが信頼しているメディアのメインコンテンツと
同じようなフォーマットをとって提供されるため、メディアに対する信頼が
そのまま広告への信頼に繋がり、高い広告効果が期待される。
しかし、これは悪く言えばユーザーの信頼を「利用」しているということであり、
この点からも「DISCLOSURE:広告であることの明示」は徹底すべきである(詳しくはQ.3へ)。
こうしてマーケティング界から熱い視線が送られる一方で、
一般ユーザー間のネイティブ広告の認知度はかなり低いようだ。
株式会社ジャストシステムが1,297人を対象に行なった調査によると、
65.5%のユーザーがネイティブ広告を「知らない」と答えている。
さらに、ネイティブ広告を「知っている」と答えた448人(約34.5%)のユーザーも、
ネイティブ広告に対してネガティブな印象を持っているようだ。
上のグラフによると、実に約8割のユーザーがネイティブ広告は「騙された気分になる」と回答し、
「ストレスを感じる」「嫌悪感・不信感を持つ」と答えたユーザーも、
それぞれ6割近く存在することがわかる。
しかし、ネイティブ広告を記事広告やステマと誤解している人も少なからずいる現状を踏まえると、
この数字の妥当性は少々怪しく思える。
まずはネイティブ広告に関する正しい知識の普及が急務であろう。
【参考リンク】
・【予告】明日 8/27 から、東洋経済オンラインとサイボウズ式の新たな取り組みを始めます – サイボウズ式
・ネイティブアドがオーディエンスの心を動かす理由 – インフォバーン
・今、話題のネイティブ広告は、「騙された気分になる」 – Fastask
・日本の「ネイティブ広告」は、もっと真剣にネイティブにならないと読者にステマ広告扱いされてしまうんではなかろうか – 徳力
【回 答】
今月(2014年8月)から、日本でもネイティブ広告の基準の策定と普及活動がはじまる。
一般社団法人インターネット広告推進協議会(JIAA)は「ネイティブアド研究会」を発足し、
年間5〜6回の研究会を通じて、ネイティブ広告の普及・啓発活動と、
日本におけるネイティブ広告のガイドラインを策定することを発表した。
研究会発足の背景について、JIAAは以下のように述べている。
昨今、「ネイティブアド」というキーワードに注目が集まっている一方、
ネイティブアドの概念や定義は曖昧なままで、広告主および媒体社においても
混乱を来たしているのが現状で、広告主、媒体社・プラットフォーム事業者および
ユーザー(消費者)の三者にとって好ましいものだとは考えがたい事態となっております。
本研究会では、研究会の開催やガイドラインの策定を通じて、会員社とともに
インターネット広告市場におけるネイティブアドの正しい理解促進と
市場の健全な育成を目指します。
なお、開催予定の研究会のテーマは以下の通りである。
来春には公開セミナーが開催されるようなので、ぜひ聴講したい。
8月「ネイティブアド概論」
ネイティブアドの類型・事例・関係者・技術などを紹介
9月「ネイティブアドの価値」
ネイティブアドの効果測定・広告料金体系・メディア価値評価などを紹介
10月「ネイティブアドの信頼性構築」
表記区分のあり方・掲載責任・考査・リンク先内容確認など倫理面に関する要点を紹介
11月「ネイティブアドの事例紹介」
ジャンル別媒体社による成功事例と失敗事例の紹介
来春「ネイティブアドは広告枠の概念を超えるか」
公開セミナー型で多様な関係者を交えたパネルディスカッション形式で開催
【参考リンク】
・ネイティブアド研究会を発足・8月から活動開始へ - JIAA
ネイティブ広告を取り巻く環境は、決して良い状態とは言えない。
共通のルールを策定して解釈の食い違いを是正することも必要だが、
低すぎる認知度の向上も重要な課題だ。
今回のネイティブアド研究会の発足を契機に(Q.5を参照)、
ネイティブ広告にかかわるブランド・メディア・ユーザーの三者間の関係が
良好なものとなることを願っている。
(アイキャッチ・本文:カクノ)
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