全国の児童相談所が2013年度に虐待として認定した件数(対応件数)が合計7万3765件で、過去最多となった。統計を取り始めた1990年度から23年連続で過去最多を更新している。

 統計を公表した厚生労働省は「虐待件数は高い水準にある。社会的関心が高まって、相談や通報が増えたことが大きな要因」と説明している。

 厚労省の説明通りなら、この数字は、現実をつかむ精度が上がった結果ととらえることができる。虐待の広がりには、暗然たる思いを抱く。まず、子どもを虐待から救うことを考えたい。

 虐待を早い段階で見つけることだ。そのためには、学校や児童相談所、市町村、医療機関など関係機関の緊密な連携が欠かせない。

 東京都西東京市の中学2年生が自殺したケースで、学校は生徒のあざに気づいていたが、児童相談所に伝えなかったという事態が起きている。

 4日に全国の児童相談所長らが集まった会議では、改めて関係機関が連携する重要性が強調された。「子どもの安全」を第一に考え、実質的な連携を深めてほしい。

 虐待に至る前に気づいて、予防することにもっと、力を注いではどうか。

 児童相談所が対応する虐待は親子間が全体の93%を占め、残りは祖父母やおじ・おば(2012年度統計)となっている。孤立した育児が虐待につながりかねない、と多くの専門家が見る。ならば、孤立を防ぐことを考えるべきだ。

 親が気軽に子育ての相談をする、「小さなSOS」を気兼ねなく出せる、そんな身近な集いの場を増やしてほしい。

 現在検討されている小学校就学前教育の無償化は、子育て支援の観点からも意味がある。低所得の世帯が通園しやすくなれば、幼稚園や保育所が相談所、行政からの支援を受ける「つなぎ役」になれるかもしれないからだ。

 乳幼児健診を受けていない子どもがいる、子育てに悩んでいる、などきめ細かく情報をすくいあげることも、虐待の予防につながるはずだ。

 虐待を親子間・家族間の問題に閉じ込めない視点も必要だろう。親の側を追い詰める社会になっていないか。就労を含め、生活が安定するような支援が届いているのだろうか。

 虐待を私たちの社会全体の問題とみて、幅広く対策を考えることが求められている。