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ジブリ、アニメ撤退 映画制作部門を解体 「ポスト宮崎駿」が…
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アニメ映画制作から撤退を決めたスタジオジブリ。鈴木氏(左)にとって宮崎監督(右)の引退はやはり大きかった 「千と千尋の神隠し」(2001年)や、「となりのトトロ」(1988年)などの大ヒット映画を送り出してきた「スタジオジブリ」(東京都小金井市)が、アニメ制作から撤退することが4日、分かった。映画制作部門を解体し、今後は版権管理などの事業だけを継続するとみられる。公開中の「思い出のマーニー」(米林宏昌監督)がジブリ最後の長編作品となりそうだ。宮崎駿監督(73)の引退表明から1年足らず。世界に冠たる日本のアニメ業界にとっても大きな局面を迎えた。
やはり、宮崎駿監督の引退は大きかった。
関係者によると、200人以上とされるスタジオジブリ所属のアニメーターには、今年春の段階で、すでに制作部門の解散を伝えていたという。実質のアニメーター採用である研修生募集についても、昨年秋から見送っており、すでに人員整理に取りかかっていたとみられる。
今後は、東京都三鷹市にある「三鷹の森ジブリ美術館」の運営管理や、「となりのトトロ」や「風立ちぬ」といった長編アニメなどの関連グッズや版権の管理事業を継続していくことになる。
昨年9月、宮崎が長編アニメ映画の制作から引退を表明。「スタジオジブリは実質的に宮崎さんの個人工房」(映画関係者)といわれてきただけに、ジブリにとって、“ポスト宮崎駿”を育てられなかったことが大きかった。
3日放送のTBS系「情熱大陸」でも、スタジオジブリの代表取締役でプロデューサーの鈴木敏夫氏(65)が出演し、株主総会の場で「制作部門を1回解体し、再構築をしようと思う。宮崎監督の引退は大きかった。このまま、つくり続けることは不可能でなかったが、いったん小休止する」と明かしている。
ジブリ広報部は、本紙の取材に「責任者がいないので何もコメントできない」としている。
番組放送中から、インターネット上では「悲報だ」「(新作の)マーニーは良かったのに」「宮崎駿という神がいなくなったからな」など、ショックの声が広がった。
ジブリでは、1本のアニメ映画制作に約8万枚のセル画を使用しており、1作品にかかる費用は約50億円といわれる。
ジブリの映画制作撤退の裏事情について、「宮崎監督は、『風立ちぬ』(2013年)で好きなテーマを思う存分描いた。高畑(勲)監督もずっとやりたいと考えていた『かぐや姫の物語』(同)に、製作費50億円をかけて製作した。高畑監督の製作費は退職金代わりだという話もある」とベテラン邦画プロデューサーは明かす。
先月19日に公開された最新作の「思い出のマーニー」は宮崎、高畑がまったく関与していない初めての作品。繊細な少女の心情を描ききっており、評論家らの評価は高い。しかし興行面では今年前半、ディズニーアニメの「アナと雪の女王」が独走状態。「マーニー」の公開1週目の興行成績は、ポケモン映画、ディズニー映画「マレフィセント」に次いでの3位。42万人を動員し、興行収入は約5億5000万円と出足は鈍い。
「このままでは、宮崎アニメを超えるヒットは期待できそうにないと判断したのではないか。むしろ、大きな損失を与えることも考えられる。会社本体は存続させ、いずれ宮崎駿、高畑勲に匹敵するクリエイターが現れたとき、再び動き出せばいい」(映画制作関係者)と、日本アニメの灯を消さないための撤退とみる向きもある。
スタジオジブリは「風の谷のナウシカ」の制作会社を母体として、1985年、徳間書店が出資して設立。宮崎駿、高畑勲両監督の劇場用映画を中心に制作し、2001年公開の「千と千尋の神隠し」は興行収入304億円を記録、邦画史上最高のヒットとなった。