佐世保市内の進学校に通う高校1年生・A子(16)が同級生を殺害するというおぞましい事件が起きた。A子はなぜ大切な親友を殺(あや)め、切り刻むという尋常ならざる凶行に走ったのか。
週刊誌を中心に多くのメディアは、「母親が亡くなって約半年で父親が再婚したのがきっかけ」と、彼女の家庭環境にその動機を求めるが、それは短絡的、非論理的だ。
もちろんA子の人生に少なからぬ影響があったことは間違いないだろうが、同じような事情を抱える家庭はいくらでもある。母の死や父の再婚が犯行の理由というなら、日本に何人もの猟奇的少年犯罪者が生まれることになってしまう。
精神科医や犯罪心理学者たちはメディアで「発達障害」や「性同一性障害」などの病名を挙げてA子の心の闇に迫ろうとするが、どの解説も過去に殺人を犯した少年のいずれにも当てはまりそうなもので、この事件の最大の特徴である「猟奇性」について説明するものではない。
「ある評論家は被害者への恨みが動機だと推測していましたが、全く違います」
こう断言するのは、作家の佐川一政氏(65)。フランスで起きた猟奇的殺人事件「パリ人肉事件」の犯人として日本中を騒がせた人物である。
佐川氏は1981年に留学中のパリで留学生のオランダ人女性を射殺。屍姦のうえ遺体を解体し、一部を食べた。その後、遺体遺棄中に逮捕されるが、心神喪失が認められて不起訴処分になり帰国。これまで刑事責任を問われることはなかった。現在は作家として活動している。
同じ「解体」の経験者として、A子の犯行をどう分析するのか。