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「首都東京」の意地

この日はとにかく暑かった。データだけみれば気温は31.3℃、湿度58%だから、とりたてて暑い環境ではなかったのかもしれないが、飛び跳ねる全身に、振り上げる拳に、じっとりとした空気が絡み付く。私はそれを振り払うように自分自身を鼓舞し、チャントを歌う声を張り上げた。

 「この気持ち 止まらない 俺たちは 止まれない 
さあみんな 立ち上がれ 荒れ狂え 飛び跳ねろ
東京 東京 東京 東京 東京 東京 東京 東京」

このチャントが幾度となく飛び出す。「東京」のくだりでは皆が一斉に飛び跳ねる。7月の連戦を無敗で終えた勢いのまま戦えるように。そしてこの暑さの中激戦を繰り広げる選手達への、ファンのサポートが止まらないように。私は勝手にそんな思いを込め、喉を振り絞るように精一杯チャントを響かせた。
誰かがチャントを歌いだす。多くのファンがそれに続く。歌詞はみな一緒であっても、そこに込める思いはみな違う。一人ひとりの声は言霊となり、止まらない選手達の背中をさらに後押しする。
この日の東京の勢いも、止まらなかった。エドゥー、武藤、太田、そしてまた武藤。得点が欲しい時間帯に点を取る。一方、無理に攻めない時間もつくってペース配分も怠らない。そして点を取らせたくない時間帯には瀬戸際で凌ぎきる。正直、これが東京のゲームなのかと戸惑うほどに見事な試合運びだった。

降格間際のチームに勝てない。監督が交代したばかりのチームに勝ち点をプレゼント。退場者を出したチームに競り負ける…そんな、私が知っている「いい人東京」はそこにいなかった。しかも中断期間が明けてから、いつもは苦手な夏場にもかかわらずいまだ無敗。いい意味でいまの東京には「異変」が起きている。フィッカデンティ監督のもと試行錯誤を繰り返し、少しずつチームの完成度を高めてきた成果が、ここで結果に表れてきたのか。
もちろん今後リーグ戦の戦いがどちらに転ぶか分からないし、「東京はいままでと違う」といま断言することはできない。しかし清水戦で幕を開けた8月の6試合は、間違いなく今シーズンの最重要ポイントになる。C大阪、鳥栖、天皇杯で松本山雅、そして浦和、鹿島。楽な試合など何ひとつない。しかしこの勢いのまま残り5試合を駆け抜けることができれば、現在の5位という順位よりさらに上が見えてくる。何より東京の進化を満天下に示すことができる。

そういえばこの日、「首都東京!」のコールも飛び出した。相手ファンがチャントをひとしきり歌い終わり、一瞬スタンドが静まり返ったところで、絶妙なタイミングで差し込まれた勝ち名乗り。この試合のハイライトのひとつだ。
「首都のチームなのに地味」「FC西東京」…こんな冷やかしは嫌いではないが、そろそろ意地を見せてもいい頃だろう。そのためにはこの8月、首都東京らしく派手に順位表を駆け上りたい。

文/FC東京サポレポ 海江田保雄
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【お詫び】
このたび「FC東京サポレポ vol.4」において、編集担当の手違いにより修正前の間違った内容の原稿を掲載してしまいました。そこではファン・サポーターにとって重要なチャントの歌詞などの記述に誤りがございました。誤りがあった部分はすでに訂正されています。
今回のミスで読者の皆様、FC東京のスタッフ・選手およびファン・サポーターの皆様、Jリーグのファンおよび関係者の皆様に大変不快な思いをさせてしまったことを謹んでお詫び申し上げます。
サポレポでは今後このようなことがないよう細心の注意を払うとともに、読者の皆様により質の高いコラムをお届けできるよう善処してまいります。
今後ともサポレポのご愛読をよろしくお願い申し上げます。(編集担当:舩木渉)

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