超ベストセラーとなった『テルマエ・ロマエ』の後も、スティーブ・ジョブズの評伝や、とり・みき氏との合作『プリニウス』など、次々と新しいテーマに取り組み、作品世界を開拓中の漫画家、ヤマザキマリさん。10代でイタリアに渡り、フィレンツェ、札幌、カイロ、ダマスカス、リスボン、シカゴ、そしてベネツィアと、まさしく地球を縦横に移動しながら生きてきた。女、男を言う前に、そこにあるのは、まず「人間」。特大のスケール感あふれる人生を聞いていきましょう。
―― この4月には、空前のヒット漫画『テルマエ・ロマエ』を原作にした映画「テルマエ・ロマエⅡ」が公開されました。前作に続き、こちらも興行収入が34.6億円と快調です。
ヤマザキ:「Ⅰ」では、主役の阿部寛さんはじめ役者のみなさんが「俺が古代ローマ人って、どういうことよ?」みたいな感じだったのですが、「Ⅱ」になったら、みんな「古代ローマ人なら俺たちに任せろ」と言わんばかりに盛り上がってくださって(笑)。
―― その「Ⅰ」である映画「テルマエ・ロマエ」は、2012年に公開され、興行収入59.8億円で、同年の興収第2位を記録。同時に、原作者のヤマザキさんが原作者の権利について発した「問題提起」が、非常に注目を集めました(→その辺りの事情は「とり・マリ対談」で)。「Ⅱ」では、懸案となっていた権利関係はクリアできたのですか。
「テルマエⅡ」はかなり前進
ヤマザキ:はい、おかげさまで「Ⅰ」の時の経験をもとに、出版社を通してではなく、弁護士を介して、原作者である私と映画の制作サイドとで直接、契約を結ぶことができました。だからといって、すごいお金が私に入ったわけじゃないですよ。原作使用料は「Ⅰ」の2倍ほどになったぐらいですが、「Ⅱ」では自分が契約に直接関わることができましたし、契約の内訳もある程度開示していただけました。それだけでも、前進できてよかったなと思っています。
―― 累計部数が900万部以上に達した漫画『テルマエ・ロマエ』に続いて、今は、スティーブ・ジョブズの評伝『スティーブ・ジョブズ』や、ヴェネツィア貴族の末裔を主人公にした渋い物語『ジャコモ・フォスカリ』の連載と、次々と新しいテーマに挑まれています。「日経ビジネスオンライン」の読者にとっては、とり・みき氏との合作『プリニウス』(「新潮45」に連載中)も、注目度が高いですよね。
編集Y:すみません。もう冒頭から横入りさせていただきます。とり先生と言えば、締め切りが過ぎても原稿が来ない、という編集者泣かせの作家さんとして有名で、私も…いや私の話はどうでもいいんですが、「プリニウス」ではそんなとり先生と合作をされた。一体、どのようにしたらそんなことが可能なのでしょうか。
ヤマザキ:……うん、編集Yさんのそのお気持ちは、大変よく分かることでございますよ(笑)。
まず、話のプロットや構成などは、おおむね私が考えます。それでネーム(漫画における下書き)の段階で、とりさんからも意見を聞いて2人が納得のいくように調整し、原稿作成に取り組みます。