セコム、東京五輪で挑む「第2の飛躍」 IT活用の新技術開発を本格化、テロ対策に期待
警備サービス最大手のセコム新社長に、6月1日付でIT(情報技術)部門出身の伊藤博氏が就任した。伊藤氏が見据えているのは、2020年東京五輪のセキュリティ業務である。セコムが東京五輪における警備向けに小型飛行監視ロボットの開発を進めており、2012年12月末に試作機が報道陣に公開され、15年3月期中の実用化を目指している。セコム本社(「Wikipedia」より/Rs1421)
4つのプロペラを備えた無人機の重さは1.6キログラム。7つのセンサーとカメラを搭載しており、警備するエリアに設置されたセンサーが不審者の侵入を感知すると、無人機が自動飛行を開始。地上3メートル付近の位置から不審者が逃走するのを自動で追尾し、攻撃されそうになると空中に避難する。無人機は不審者の身長や服装、顔の特徴、車の色、種類、ナンバープレートの数字、GPSを用いた位置情報などを収集。それらの情報をリアルタイムにセコムのコントロールセンターに送信し、警備員が駆けつける仕組みになっている。無人機は情報収集を終えると、自動的にドック(駐機する拠点)に帰還する。
同時にセコムが開発しているのがウォークスルー顔認証システム。事前にシステムに登録している人の顔をコンピューターが瞬時に識別し、建物内の入退室を顔認証で管理するというものだ。あらゆる角度からの顔認証が可能になるため、歩いている状態でも識別できる。大勢の人が集まる場所でも顔認証を行える。セコムは小型飛行監視ロボットとウォークスルー顔認証システムを東京五輪に投入することを狙っている。
東京五輪招致委員会が発表した計画書では、五輪期間中のセキュリティ要員の数を約5万人としている。内訳としては、約2万1000人の警察官、約1万4000人の民間警備員、約9000人の警備ボランティアなどが会場周辺に配置される。東京五輪における警備上の最大の課題はテロ対策だ。東京はテロの標的になりやすい都市といわれており、セコムはITを活用した新技術でこれに立ち向かう。
●第1回東京五輪で飛躍
セコム飛躍のきっかけになったのは、1964年の第1回東京五輪だった。セコムの創業者で現・取締役最高顧問の飯田亮氏は61年、浅草の鳥鍋屋で学生時代からの友人、戸田壽一氏(現・取締役最高顧問)と欧州帰りの知人の3人で食事した。その席で知人から「欧州には警備を業務とする会社がある」と教えられ、飯田氏は独立し警備会社を設立することを決意した。
62年7月、国内初の警備会社、日本警備保障(現・セコム)が発足。飯田氏と戸田氏、2人の警備員の合計4人によるスタートだったが、仕事はなく、創業4カ月後に獲得した最初の契約は、東京千代田区麹町にある旅行代理店内の巡回だった。
そんなセコムは64年、第1回東京五輪で代々木の選手村の警備を受注し、一気に会社の知名度を上げた。65年4月から始まった連続テレビドラマ『ザ・ガードマン』(TBS系)のモデルになり、セコムは一躍人気企業に。警備サービス業というニュービジネスが社会に認知された。創業以来、二人三脚で歩んできた飯田氏と戸田氏は97年、取締役最高顧問に退いた。
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