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放射能から身を守るには

250ミリシーベルト以下 人体に影響なし

 東京電力福島第1原子力発電所の放射能漏れが止まらない。放射性物質による被ばくの健康被害について、北海道がんセンターの西尾正道院長(放射線治療科)に聞くとともに、道内での暮らしの注意点をまとめた。


 被ばくの影響は急性か慢性か、全身か局所かで異なる。急性時は放射線量が200〜250ミリシーベルトを超えなければ臨床的な症状は表れず、人体への影響はほとんどない。

 今回、原発付近で測定された1時間あたり400ミリシーベルトというのは異常な値で、作業をする人たちはまさに命懸けだ。ただし放射線の被ばく量は距離の2乗に反比例するので、原発から1キロ離れた地点の放射線量を1とすると、20キロ離れた地点なら400分の1、30キロなら900分の1の量に減る。

 放射線は自然からも受けており、年間2.4ミリシーベルトになる。遠くに避難すれば被ばくはごく低い線量となり、日常的なものとあまり変わらず心配はいらない。

 胸のエックス線撮影は0.06ミリシーベルト、コンピューター断層撮影装置(CT)検査では6ミリシーベルトの局所被ばくを受けるが、今回のような全身被ばくとは区別する必要がある。一般的には局所の方が影響は少ない。また例えば日本酒1升を一晩で飲むのと毎日少しずつ晩酌するのとでは人体への影響が異なるように、被ばくする時間や条件も影響する。

 放射性物質の種類やエネルギー量はさまざまで、人体への影響を正確に判断するのは難しいが、急性の全身被ばくでは200〜250ミリシーベルト以下なら問題はないと考えられる。

 被ばくを防ぐには、屋内に退避する方が放射線が遮蔽(しゃへい)され被ばく量は少ない。被ばくには皮膚などにつく外部被ばくと、放射性物質を体内に取り込む内部被ばくとがあり、肌を露出しない服装や帽子をかぶったり、内部被ばくを避けるためマスクの着用も心掛けたい。

 放射線は怖いという不信感が広がっているのだから、避難場所に空気中の放射線量をモニタリングして常に掲示すれば、住民も安心できる。事故に対応する従業員らの健康被害は深刻になる可能性があるが、住民はあまり心配せずに冷静に対応してほしい。

<対策Q&A>
福島原発から距離遠い道内 通常生活で大丈夫


 Q 福島原発から400キロ以上離れている北海道でも放射能対策は必要なのか。

 A 道内では通常の生活をしていれば問題はない。札幌で測定された放射線量の値は現時点では通常と変わらない。屋内退避指示が出ている半径30キロ以内の住民のように外出や洗濯物を外で干すのをやめるなどの必要はない。

 Q 強い南風が吹いたり、雪や雨が降ったりしても大丈夫か。

 A 原発事故に備えて放射性物質の拡散状況を予測している原子力安全技術センター(東京)によると、強い南風が吹いても現在測定されている数値では、距離が遠い道内に到達するのは極めて微量なので人体への影響はないという。雨や雪も、放射性物質が溶け込んで降ってくるとは考えにくいとされる。気になるのなら直接雪にぬれないなどの対策をとるとよい。

 Q 水や野菜は大丈夫なのか。

 A 放射性物質が付着したものは食べたり飲んだりしてはいけない。30キロ圏外で採れた野菜は普通に水洗いすれば十分といわれている。

シーベルト

 放射線を浴びた時の人体への影響を表す単位。さまざまな種類の放射線の影響を統一の尺度で表す。1シーベルトは千ミリシーベルト、1ミリシーベルトは千マイクロシーベルトとそれぞれ等しい。一般の人が通常の生活で受けている量は世界平均で年間2.4ミリシーベルト(1時間当たり0.274マイクロシーベルト)の放射線を浴びている。医療行為を除く一般の人の上限は年間1.0ミリシーベルト。

(3月18日朝刊掲載)


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