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【社説】

回らない核のサイクル(6) 村に吹け、新生の風よ

 あるのは原野だけだった。海からヤマセ(東風)が吹きすさぶ。農業には向いていない。戦後、中国東北部から再入植した開拓民の労苦はしのぶよしもない。

 そんな本州の最果てに一九六〇年代末、巨大開発計画が持ち上がる。高度経済成長の真っ最中、むつ小川原開発は国策だった。

 太平洋ベルト地帯に集中し過ぎた重化学工業を分散させるため、青森県六ケ所村を中心に、日本最大のコンビナートを造るという。開発か、農業・漁業か。地域は割れた。

 政府と県の強い働き掛けを受けて、村は結局、計画を受け入れた。

 ところが、七一年のニクソンショック、続く石油ショックが高度成長の流れを止めた。企業は来ない。代わりに持ち上がったのが、核燃料サイクル施設の建設だった。

 政府と県は、過疎地に再び国策を押しつけるようにして、頓挫した巨大開発計画のツケを回してきた。推進と反対に二分され、前にも増して六ケ所村は傷ついた。

 莫大(ばくだい)な核燃マネーが流れ込み、見た目には豊かになった。しかし「進むも地獄、戻るも地獄」と元村議は目を伏せる。

 新たなその国策が、またも激しく揺れている。

 福井県敦賀市の高速増殖原型炉「もんじゅ」は、使用済み核燃料から抽出したプルトニウムを燃やして増やす、核燃料サイクルの要である。それが長年トラブル続きで、実用化にはほど遠い。

 政府は半減期の短い、別の核物質に転換するための高速炉に改造するという。そうなれば、プルトニウムを取り出す再処理工場の役目は終わり、核のごみだけが残される。個々の施設はしばらく残る。だが核燃料サイクルの輪は既に寸断されている。

 強いヤマセが吹く青森県は、風力による発電能力が日本一、原発〇・三基分になる。

 例えば、大間原発の電力を全国に送り出すために建設中の送電網(大間幹線)などを拡充し、再生可能エネルギーの一大拠点に再び生まれ変われないか。雇用の維持も可能だろう。

 六ケ所村は政治次第で生まれ変わることもできる。ただし、原発に頼らない国ならば。

 (論説委員・飯尾歩)=おわり

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