(2014年8月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
米企業2社が米商務省から「コンデンセート」――最低限の加工処理を行った超軽質原油の一種――を輸出する許可を得たことを明らかにしたことで、米国のエネルギー政策は今月初めにちょっとした節目を迎えた。
残念なことに、1970年代のアラブ諸国による原油禁輸措置を受けて導入された広範な原油輸出禁止措置はまだ有効だ。ホワイトハウスは直ちに、今回の輸出許可は例外的であることを明確にした。多少制約が少ないとはいえ、これと似た規制が米国のフラッキング(水圧破砕)ブームの産物である液化天然ガス(LNG)の輸出にも適用されている。
バラク・オバマ大統領率いる米政権は、環大西洋貿易投資協定(TTIP)にエネルギー条項を盛り込むことを求める欧州連合(EU)の要求を拒んでいる。
オバマ氏は考え直すべきだ。TTIPがその野心に近い目的を達成しようとするなら、エネルギー問題に取り組まなければならない。
ここへロシアのウラジーミル・プーチン大統領が欧州のエネルギー安全保障にもたらしている脅威を加味すれば、この主張に反論の余地はないように見える。米国のエネルギー保護主義に終止符を打つ時がやって来たのだ。
原油とLNGの輸出を解禁すべき経済的根拠
終止符を打つべきだとする最強の論拠は経済的なものだ。米国の石油精製業者は1975年の輸出禁止措置によって巨額の利益を得てきたが、残るほぼすべての人が犠牲になってきた。損をする人の中には、米国の石油生産業者、消費者、そして欧州の石油精製業者が含まれる。
前者の生産業者の場合、自社が産出した原油の市場が限られることになった。米国内の石油精製業者へ販売することを強いられたからだ。一方、米国の消費者は、米国産の石油が現在、国際価格に比べ1バレル当たり7ドル安いにもかかわらず、ガソリンスタンドで国際価格を支払っている。
米国では供給と需要のミスマッチも拡大している。米国の精製業者の多くは、中東その他地域の重質原油を精製するように設計されており、米国のシェールオイルブームから得られる、より軽質で硫黄分の少ない原油を処理するのには適していない。
米国はまだ石油の約3分の1を輸入しているが、そのシェアは急速に落ち込んでいる。原油輸出を解禁しなければ、米国は日量数百万バレルもの重質原油の輸入を続けながら、メキシコ湾岸地域で軽質な国産原油が過剰供給に陥るというパラドックスに直面する恐れがある。